ラム肉が届いたけど

テーマ:ラム肉



 いやね、うん。確かに言ったかもしんない。


「ラム肉ですかー。食べたことないですねー」

「あれ、君料理は出来るんだよね? なら今度送ってあげるよ」

「え、いいんですか? ありがとうございます!」


 みたいなやり取りは確かにありましたよ、えぇ。

 でもさー。


「……まさか、まるっと送ってくるなんて思わないでしょ」


 子羊の肉、一頭分である。

 宅配のお兄さんもよく運んできたな、こんなもん。


 しかしまぁ、どうすっかなー、これ。

 明らかに一人で食べ切れる量じゃないんだけど。


 ラム肉はマトン肉より若く、臭みが少なくて柔らかい。

 なので調理自体は簡単で、下拵えが無くても簡単に美味しく頂ける。

 ステーキや煮込み料理がメジャーで、色んな野菜に合う独特な風味だ。


 以上。クックパット先生より引用。


 なんにせよ、作ったとしても置き場所ないんだよなー。


 うーん。ちょっと友達に相談してみっかなー。


「ごめん、ちょっと用事が入ってるから」

「ダイエット中だから……ごめんねー」

「悪い、ラム肉苦手なんだわ」


 軒並み断られた。薄情な奴らめ。


 どうしよ。お裾分けしようにも、周りの人達とあんまり交流無いし。

 いきなりラム肉持ってっても引かれるよね。


 ……あ。つーか、分かったわ。

 これ、アレだ。アイツの陰謀だ。

 一人で食べきれないことを見越して大量の肉を送り付けて、その後自分を誘えって事か。


 なんつー遠回しな奴だろう。馬鹿だろうか。

 馬鹿なんだろうなー……わざわざラム肉一頭分、自腹切る奴だし。

 こんな事するくらいなら普通にデート誘えよ。

 こっちはちゃんと好きだって言ってんでしょうが。ヘタレめ。


 まったくもー。とりあえず、電話すっか。


「あ、もしもし。お疲れ様です。今大丈夫ですか?」

「おう、どしたの? あ、ラム肉届いた?」

「さっき受け取りましたけど。何か私に言いたいこと、無いですか?」

「えっと……何がだい?」

「今しか聞きませんからね。勇気を出すなら今ですよ。あと10秒、きゅー、はーち、なーな」

「あ、ちょ、今日家に言っていいかな!?」

「はーい。お腹すかせて来てくださいねー」


 通話を切り、腕まくり。

 さぁ、気合いを入れて作りますかね。

 その後すぐに、シャワー浴びなきゃ行けないし。


 今日こそは逃がさん。手を出させてみせる!

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