Ⅰ反乱の始まり
陛下!まだですか?~金ぴかの靴~
「陛下! まだですか! 陛下!
陛下……?」
「まだだ」
「陛下! もう先ほど私がお尋ね申し上げてから2時間が過ぎております。
どうかもう決めなさってくださいませんでしょうか?」
「これはこれからの大事な式典のための準備なのだぞ。決めるのに時間がかかるのは当然ではないか?」
「確かにそうではございます。本日は陛下の大事な日。陛下がこの誇り高き大帝国、キメルノの栄えある第3代皇帝の地位である、ジャーに即位される日でした」
「そうだ。今日は私の治世が始まる始まりの日。でした……?」
「はい」
「はい?」
皇帝は、いや皇帝になるはずの皇太子が幕の中から顔をだした。クルクルしたオレンジ色の髪は頭を駆け巡っており、博士の実験失敗後を彷彿とさせ、手には金ぴかの靴と金ぴかの靴(臣下には同じに見えた)が握りしめられていた。
顔はまあまあのハンサムであったが、博士髪のせいで、5歳ぐらい老けて見えた。
臣下は笑いそうになるのをこらえてポカンとしている哀れな皇帝、いや皇太子にヒントを差し上げる。
「外の様子をご覧になってください」
クルクル頭をいじり倒しながら素直に皇太子は窓の外をみようとした。ただ、窓は大変立て付けが悪く、開くにはこれまた時間を要しそうであったので、ただ空を眺めた。
「昼にしては少し薄暗いが、よく晴れてるのう。まだ朝じゃのう?」
「夕方です」
「え?」クルクル皇太子はあっけにとられた様子で臣下を見つめた。
「靴を選んでいるだけじゃったぞ」
「靴を選んでいるだけでです」臣下は真顔であった。だがあきれ返った顔を見せないようにするためにはもう限界だった。
「皆6時間程の時を待っております。とりあえず靴を両方持って玉座に向かいましょう!」
「いや、やっぱりこの靴も気にな――」
「陛下!」
「わかった。わかった。向かうぞ。向かうぞよ」
皇太子はあたふたあたふたとクルクル髪を揺らしながら廊下に向かっていった。
皇太子、いや新米皇帝半日遅れでご登場です。
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