二十一歳三日目

@SasakiRirika

二十一歳三日目、初めて昼間から酒を飲んだ。昼間といっても時計はもう午後二時半をさしている。透明な液体は口の中ではほのかに甘いくせに喉元をすぎればひどく苦い。大学の友人から二十歳の誕生日にもらったその日本酒は一年間、我が家のクローゼットの中で眠っていた。罪悪という感情が欲しくてまだ太陽が空にあるうちに酒をグラスに注いだが、一ミリも感じられることがない。ただ苦い、私にとっておいしくもなんともない液体を口に運ぶ作業だ。やっぱりまずい。大人になったらねと父はいったが、私は一生これをおいしく感じることはないだろう。まず、いつからが大人なんだ。ある人は子供に戻りたいと思ったときやら、常識的に考えて二十歳からだとか。今朝、干した洗濯物がゆらゆら風に吹かれるのを目の端で追いながらグラスの中を空にした。一向に答えは出ない。就職活動が本格的に始まろうとしている二月。私は自分が何者になろうかも考えず、まじめであることを恥じまじめでいたいと駄々をこねている。昼間から酒なんて飲むもんじゃない。

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