暗殺者と勇者対峙する

 賢者達と別れてから村へ向かった私は何やら村の方が騒がしいことに気がついた。

「ついさっきまでなんともありませんでしたが......」

 胸がざわつく。何か大変なことが村で起こっているそれだけは理解できる。



 村に着いた私は唖然とする。

 勇者ゲイランが肌着と最低限の武器だけを持って村に火を放っていたからだ。

「ゲイランさん何をしているんですか......?」

「あっラナさんじゃん!一緒に火つけます!?」

 こちらを向いた勇者の目に光が灯っていなかった。

「もしかして貴方は初めから......」

 初めからアルデバランに殺され傀儡だったではないか?そう言いかけ、途中で押し留める。

「どちらにせよ国民に手をかけた時点で私は貴方を殺さねばなりません。覚悟はいいですか?」

「あはは...ラナさん怖い顔してるなぁ。女の子がそんな顔してたらモテないよ?」

「そうかもしれません、ね!」

 私は勇者に斬りかかった。

 その瞬間、ゲイランは身を捻り剣尖を避ける。

(擦り傷だけとは流石に一筋縄ではいきませんね)

 一旦距離を取ろうと後ろに飛んだ時にはもう遅かった。

 私の真後ろにゲイランが移動していたからだ。

「しまっ......」

 声を出す間もなく背中を斬られる。



 バタンと音がして倒れたのはゲイランだった。

「な...んで......」

「簡単なことですよ。貴方に最初斬りかかった時の武器に毒が塗られていただけです。暗殺者としては当然でしょう?」

「そう...だったな......。最後に一つだけいいか?」

「なんでしょうか?もしかして最後に洗いざらい全部吐いてくれたりするんですか?」

「そんなんじゃねぇよ...。そもそも俺は操られていたことにすら今気がついたんだ。最後の願いっていうのはミラの墓参りに今度行ってやってくれ......」

「最低な行為をしたとはいえ元仲間です。そのぐらいはお引き受けしましょう......」

 そう私が返事を返した時にはもうゲイランの息はなかった。


「全く何が何やらよくわかりませんがどうやら私の役目もここまでの様ですね。私は少し休みますので賢者とお姫様そちらは任せました...よ......」

 勇者の命を狙った暗殺者は勇者と相討ちに倒れた。

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