賢者とお姫様、聖女と対峙する

 タール村に着いた俺達は案内役の人を探すことにした。なんでも聖女を案内してから行方がわからなくなってるのだとか。

 聖女という言葉で呼ばれているのはこの世界には今1人しかいない。間違いなくティーナが何かをしたことだけはわかる。 

「間違いなくティーナが絡んでいますね」

「俺もそう思います。ここは手分けしてティーナの居場所を探るのがいいかと」

「それがいいでしょうね。マギ、近接戦闘はなるだけ控えてください」

「わかりました!」

 ラナさんは村の中を俺は森の中をノアさんは村郊外の遺跡をそれぞれ調べることにした。


 森の中を走っていた時突然鑑定眼が作動し、体が真っ二つになっている未来が見えた。

 咄嗟に体に捻り右方向へと進行方向を変更する。

「マギさん避けないでくださいよ。当たらないじゃないですか」

「ティーナはしばらく会わない間に随分性格が過激になりましたね」

「私は選ばれましたから」

「選ばれた?」

「ええ。アルデバラン様に私は選ばれたのです!」

 全く意味がわからない。神に選ばれるというのはどういうことなのだろう。俺にはさっぱりだ。

「そうですか。でも俺を襲うのはやめておいた方が良かったと思いますよ」

 それまでこちらを斬る気満々だったティーナの動きが少し止まる。

「それはどうしてでしょう?貴方はアルデバラン様の教えに反き尚且つアルカイドの側についているというではありませんか!」

 アルカイドとは誰なのか皆目検討もつかない。誰のことなのだろうか。ティーナがまともに話せる状態ではないのがよくわかった。

「というわけで死んでもらいます。マギさんは近接戦闘が苦手でしたね」

 そういい一気に距離をこちらに詰めてくるティーナ。速度が速すぎて反応しきれない。

 数秒後自分が切られている姿が瞳に映る。

「ノアさんすいません。俺ここまでみたいです」

 そう呟きゆっくり目を瞑る。思えばノアさんやエルに出会えたこと以外ロクでもない人生だったと思いながら。



 1秒2秒3秒とすぎても剣が体を斬る感覚が伝わってこない。

「マギ早く目を開けて魔法をかけてください」

 聞き覚えのある声が聞こえ、目を開くとそこにはティーナの剣を受け止めているノアさんがいた。

 この人はいつでも俺の救世主だ。

 急いで起き上がった俺はノアさんに支援魔法をかける。

【プロテクション】

【アンチマジック】  

【属性付与火】

【身体能力強化】

「なんだがこの付与は初めてマギと戦った時を思い出しますね」

「ええ。俺もそう思っていたところです」


「なに人の剣受け止めた挙句ラブコメを始めてるんですか?さっさと死んでください」

 ティーナから鋭い斬撃が飛んでくる。俺に放ったものとは段違いだ。

 だけどノアさんならきっとあれを受け止められるという自信があった。何故なら俺の支援魔法が掛かっているから。

 ティーナの斬撃華麗に弾き返したノアさんはとても美しい。

「まさか今のが弾かれるとは予想外です」

「まあそうですね。正直私1人では貴女に勝てないと思います」

 ですがとノアさんは言葉を続ける。

「私は貴女方が不要と言い追い出したパートナーが居ますので。マギと一緒に戦う私は無敵ですよ?」

「それがアイだというのですか?」

「それは分かりかねますが少なくとも貴女とその背後にいる悪神よりは愛があるのではないですか?」

 ティーナとアルデバランを挑発するようにノアさんが告げる。

『よく言ったな小童』

 ティーナの持っている聖剣から声が聞こえてくる。

 大方あれがアルデバランなのだろう。

『貴様とそこの男は殺すだけでは足りぬ。死して尚地獄を味合わせてやる』

 その言葉を区切りに徐々にティーナの体が変化していく。今までは普通の人間だったが今は異形の悪魔か何かだ。


「さてマギ、私達はあれに負けられません。やれますか?」

「愚問ですね。さっきあんな啖呵切ったにしてはノアさんこそちょっと腰引けてませんか?」

「そんなわけないでしょう。ささっと倒して帰りますよ」

「はい、そうしましょう。エルも待ってますし」


 こうして俺達の最終決戦が始まった。

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