狂った聖女は人を斬る
王都に帰ってきた私は見当たらない聖女を探していた。
「ゲイラン、ティーナはどこに行ったんですか?」
「知らねぇよ!俺をいきなり斬りつけたと思ったらもう1人の担い手に愛を教えに行くとか言って飛び出して行ったんだ!」
「もう1人の担い手....?ゲイランは何か知っていますか?」
「知るわけないだろ!」
勇者が知らないとなると国家機密かそれに近しいものなのだろう。仮にもう1本聖剣が存在したとして一体誰が....。そこまで考えた私はハッとした。
もしかして帝国で賢者の横に座っていたノアとかいうやつか!?
そうなるとまずい。帝国では聖女を止められる存在は彼らだけだ。もし彼女達が聖女の聖剣を破壊する為に王都へ移動を始めていたとしたら?
私はもう一度帝国へと向かった。
「アハ、ハハハ。人を斬るのってこんな気持ちが良かったんですねぇ!」
私の足元には3人の商人の死体が転がっていた。手足を落とし、心臓を抉り、最後には首を落とす。
「ラナさんはずるいですよ!こんな楽しくてキモチイイことをいっぱいしていたなんて!」
『ソレガティーナノアイ?』
「いいえ!こんなものは愛ではなく愉悦です!」
『ハヤクアイヲミツケテネ?』
「ええ、勿論!アルデバラン様の寵愛は愉悦などでは語れないのですから!」
ああ素晴らしきアルデバラン様の寵愛を受けられる私は素晴らしい。
「あら?聖騎士の皆様じゃありませんか」
私は山の上から遠征に出ていた聖騎士を見つけた。
「ねぇ、アレ私に勝てると思いますか?」
『ショウサンハタカイデス。ワタシトアナタノアイガアレバ99パーセントカテマス』
「やはりアイは素晴らしいですね。殺してしまいましょうか」
私は聖騎士のいる位置に向かって飛び降りる。
「なんだ!?」
「敵か!?」
聖騎士が様々な反応をしているが1人があることに気づき声を上げる。
「聖女様だ!」
「聖女様?本当だ!ティーナ様じゃないですか!」
皆様々な形で聖女に声をかける。まさか今から自分達が殺されるとは思わずに。それを微塵も悟らせない可憐さが今のティーナには備わっていた。
「ええ。少しお見かけしたものですからお声がけした方が宜しいかと思いまして」
「そんな恐れ多い!ティーナ様直々に、声かけていただけるだなんて我が隊はこれから存分に働けるでしょう!」
隊長らしき人物がそんなことを言っている。勿論、興味など微塵もない。
ザクッと音がして隊長の首が落ちる。
「あっすいません。余りに話が長かったもので斬ってもいいのかと思いました」
「お前何者だ?」
隊の人間の雰囲気が変わる。当たり前だろう。仲間を殺されて怒らない人間はいない。
「皆がだーいすきなティーナちゃんですよ?」
「私の知っている限り、聖女様は剣を使えない。それに無闇矢鱈に人を斬るような性格はしていないはずだ」
「さてそれはどうでしょうね?」
私は聖剣を構える。
「全員戦闘態勢用意!」
大きな声で隊員の1人がそう呼びかける。だがそれはもう遅かった。
その隊員以外の首が全て落ちていたからだ。
「ば、化け物......」
「失礼ですね?私は聖女様ですよ?不敬な貴方の首も跳ねてしまいましょうか」
そういい聖女が聖剣を振るう。聖女との邂逅から5分持たずに聖騎士の隊は全滅した。
「なーんだ、弱いんですね。聖騎士って」
『ソレハヒトエニアナタガチョウアイヲタマワッテイルカラデスヨ!アイヲ!アイヲサケビマショウ!』
狂った聖女と聖剣の旅はまだまだ続く。
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