賢者とお姫様、王国へ向かう

 ラナさんの話をようやくするとこういうことらしい。

 聖女が暴走し、聖騎士を殺して勇者も殺そうとしている。そして聖剣の力も欲している。聖剣の力が聖女に渡れば3大国のバランスが崩れるかもしれない。

「なるほど。お話はわかりました。それで何故帝国までお越しになられたのでしょう?」

「お噂によると帝国には勇者に匹敵するほどの猛者がいるとお聞きしたことがありまして。あくまで噂程度ですが」

 その話を聞き、ノアさんが更に警戒を強める。何かすれば即聖剣を抜き切り捨てるぐらいの勢いがある。

「1つ言えることがあるとすれば我々は貴女に協力できません」

「何故です!?3大国のバランスが壊れるかもしれないんですよ?」

「別に我々はそんなものどうでもいいのですよ。国がなくなれば別に新しい国を作ればいい」

「そんな......」

「特にここにいる賢者マギは勇者に散々嫌がらせを受けたと聞いています。何故今更そのような男を救う為に我々がわざわざ王国まで足を運ばなければならないのですか?」

 ノアさんの怒りはもっともだ。実際俺もあまり助けようとは思わない。最悪、王国と帝国が無くなってもエルフの国に移住することだって可能だろう。

「それは....」

「我々に相応のメリットを提示できない時点でこの話し合いは終わりです。どうぞお帰りください」

 部屋を出て行くラナさんの背中は哀愁が漂っていた。



「ノアさん俺の為にありがとうございます」

「いいんですよ。実際お話を聞いて私も苛立ってましたし。ただ聖剣の話は気になりましたね」

「ええ。ノアさんの聖剣の自我が目を覚ましたということは向こうもその可能性はあります」

「流石マギ、私も同じことを考えていました。そして向こうの聖剣は管理が聖王国です」

「聖王国だと何か問題があるんですか?」

「あの国で信仰されている神は今でこそ神聖視されていますが昔は悪神などと呼ばれていたみたいなんですよ」

「つまりその悪神が聖剣の自我に何か問題が起こっている可能性があると?」

「まあ端的にいえばそうなります。聖剣を手懐けようとした聖女はもう精神を乗っ取られていたりするかもしれませんね」

「そうなると厄介ですね。ただでさえティーナの力は強大です。死者を一時的に蘇らせることも可能ですし」

 実際に俺の前で殺した魔族を復活させて見せたことがあった。あの時はすごく驚いたのを覚えている。



「それは厄介です。となるとやはり私とマギで王国に出向くしかないかもしれませんね....」

「そうなります....。聖剣の破壊もしくは洗脳されていた場合ティーナの洗脳を解く。こんな感じですか?」

「ええまあ。この際、聖王国の国力を完全に削ぎたいところなのでティーナさんは殺してしまうのも手ですが」 

「それは最終手段ということにしましょう。あまり一緒に冒険した仲間を殺すというのはしたくないので」

「マギならそういうと思っていました。殺さずに無力化するのはとても難しいですよ?」

「そこはノアさんと俺ならなんとかなるんじゃないですか?」

 こうして俺とノアさんは王国に向かうことになった。


——

昨日もたくさんブックマークとハートありがとうございます。星を増やすのは中々難しいと最近悟ってます。これからも頑張っていきます!

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