聖女は聖剣を手懐けたい、暗殺者は帝国へ急ぎたい
ラナが出て行ったあと私は勇者から聖剣を借りて自分のものにしようとしていた。
『アイヲアイヲ....』
「全く、アルデバラン様もここまで壊さなくてもいいと思うんですよ。もう少しまともな自我が残っていれば調教も簡単だったというのに....」
私は主神に多少の愚痴を言いながら聖典に書いてあることを読み上げる。
「愛は生きている人間すべてに平等に与えられるべきです」
『ソレハアイデハナイ。チョウアイダ』
ダメだったか。そうなると中々面倒くさい。
「貴方の定義する愛とはなんですか?」
『アイハアイダ』
全くわからない。愛は素晴らしいが私は愛を受けたことがない。
「私に愛なんてわからないです....」
『アナタガケンジャトイウジンブツニ、ムケテイタカンジョウガソレニチカイトイエル』
「あれが愛....?」
『アレコソアイ!アアスバラシイ!アイ!アイ!アイ!』
聖剣が赤い光を放つ。
「アレが素晴らしいアイ....」
その時こっそり覗いていた勇者の証言によると聖女の目が不気味な赤い色に変化していたという。
「聖女が聖剣を手にする前に急がなければ」
私は王国から帝国までを走って移動していた。普通なら歩いて3週間以上かかる距離だが私は3日で移動できる。縮地を巧みに使い続ければなんとかなる。
「ここが帝国....。前のモンスターが暴れ回った事件で壊滅的な被害を受けたというのに栄えていますね」
私はとりあえず情報を集めることにする。
「すいません。マギという人物に聞き覚えはありませんか?」
「マギですか?そういえば数ヶ月前に貴族になられた方にそんな名前の方がいたような....?」
全員がほぼ同じ返答をする。噂には少し聞いていたが恐らく賢者は帝国に移住したのだろう。
「失礼ですがマギ様と謁見することは叶いますでしょうか?」
私は城の門番に聞く。どの道ここで接触できなくても忍び込めばいい。
「マギ様?失礼貴女の素性をお聞きしても?」
「現勇者パーティーの一員です。少しマギ様にお伝えしたいことがありまして」
「会えるかはわかりませんが取り合ってみましょう」
そう言って門番さんがメイドさんに話を伝える。
「少々お待ちください」
暫く待ったあとに面会できることになった。
城の入り口をくぐった瞬間私は忍び込むと思っていたことを後悔した。多重の結界を潜った感覚を感じたからだ。1つだけでも勇者が壊すには数日かかるような代物だ。私は冷や汗をかく。もしかして今から会う人物はとんでもない化け物かもしれないと。
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