聖女と暗殺者、聖騎士を殺害する
「最近、ティーナとラナさんは本当に仲がいいな。裏で何かこっそりやってたりして?」
「そんなわけ...あるかも?今度ミラも来てみるといい」
聖女が聖騎士を自然に誘う。1度目のチャンスというわけだ。仮に失敗したとしても私が腕試しをしてみたかったという言い訳をすればいいだろう。
「いいんですの!?」
「うん。ラナもいいよね?」
「はい。大丈夫ですよ」
「なんだ?俺だけ仲間はずれか」
「女子だけの集まりに男が来るのは良くないですことよ。ゲイラン今回は我慢してくださいまし」
その日の夜、外で聖騎士を聖女と待つ。
「うまくいきました。これで存分に力を振るえますよね?」
「ええまあ。まさか怪しまずについてくるとは思いもしませんでしたが」
「そこは長年の信頼関係というものですよ」
クスッと聖女が笑う。聖女はその信頼関係をダシにして聖騎士を殺そうとしていることを除けば美しい友情なのかもしれない。
「来ましたわよ!夜にお出かけするなんて悪いことをしてるみたいで興奮しますわね」
「そう?夜、討伐に出かけることなんて昔から結構あったと思うけど」
「ティーナはわかってませんわ!女の子だけでこういうことをするのがいいのです」
会話をしながら聖騎士を森の中へと誘導していく。
「こんなところでいつもお話ししてますの?」
「いえ。今日はお話ではなく....」
私は腕の中に隠していた短剣で聖騎士に斬りかかる。
鎧に弾かれることもなく、人を斬った感触が手に伝わってくる。生暖かい液体が手に付着する。久しぶりの『血』の感覚だ。
聖騎士がその場に仰向けで倒れ込む。
「....何をなさいますの......?ティーナ!早く回復を!」
「回復?申し訳ありませんが、それはできかねます」
「ティーナ?貴女何を言って....」
私は聖騎士が余計なことに感づく前にトドメを刺す。心臓を貫き、喉を切り裂く。
「わあ中々エグい殺し方をしますねぇ。もしかしたら私もこうなっていたのかと思うと中々怖いものがあります」
「....早く死体を片付けてくれますか?」
「失礼、そうでした」
「しかし彼女の鎧が投擲物を防ぐというだけで助かりましたね。もっと物理の耐性が高ければ私では貫けませんでした」
「彼女は家からも大した期待をされてませんでしたし、渡された装備もそれ相応だったのではないでしょうか」
「それはまた可哀想な話ですね。私達には関係ありませんが」
聖女が火属性魔法【セイントフレイム】で死体を焼き払う。更に飛び散った血の跡を【クリーン】で綺麗にする。
「彼女もこんな勇者ごっこに参加しなければ命を落とさずに済んだものを......」
聖女は祈りを聖騎士の死体に捧げる。自分から殺す計画を立てておいて主神に祈りを捧げるという行為は少し滑稽に写った。
「ゲイラン!ミラが....!」
私と聖女は宿に戻り、事の顛末をゲイランに報告した。私達とゲイランは現場を確認しにいく。
ただ聖女が全てを燃やした後に何か見つかるわけもない。証拠の隠滅は完璧だ。
「魔王軍の幹部がミラを攫ったというのか....」
「ええ。私達にはなす術もなかった」
「ミラはああ見えて聖騎士だ。君達の力じゃ無理だったというのも頷ける....」
「すいません。私の力不足で」
「ラナさん謝らないでくれ....。とりあえず俺達の目標を一旦変えるぞ」
「ミラを探すの?」
「ああ。あれでも大切な仲間だからな」
聖女が勇者の後ろで口を三日月のように大きく開け、悪魔のような笑顔を浮かべていた。
———
昨日もたくさんのブクマ、星、ハートありがとうございます。こんなに一気に増えることは想定してなくて驚きました。これからもよろしくお願いします!
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