賢者、お姫様に拾われるwith勇者パーティー

 ーside勇者パーティー


「くそ!なんで勇者である俺の攻撃が通じないんだ!」

 ゲイランは普段なら楽勝で攻略できる中級ダンジョンのモンスターに苦められていた。

 今までであれば数秒とたたず切り刻めていた相手のはずだ。

 それだけならまだいいのだが聖騎士ミラや聖女ティーナの能力も心なしかいつもより落ちているように見える。


「ゲイランこのままじゃもたないわ!」

「くそ!撤退だ!一回引くぞ!」

 全くもって意味がわからない。

 俺達は将来を有望視されてる勇者パーティーだぞ。そんな俺がどうしてこんな惨めな思いをしなくちゃならない!

 パーティーの足を引っ張っていた賢者は追放したはずだ。

「ちくしょう......!なんでだ!」


 その理由にゲイラン達が気づくのは遠い未来の話だった。



 一方その頃マギは唐突に男の人が女の子に変わるという現象に驚いていた。

「あの......アランさん?」

 俺の微妙な表情をみてアランさんは自分の格好を確認する。服が男物のせいではだけて肌が見えてしまっていた。


「す、すいません!マギ様少し後ろを向いておいてくれませんか!?」

 俺は大人しく後ろを向く。後ろで布の擦れる音が聞こえる。


「マギ様、どうぞこちらを向いてください」

 俺はアランさんの方を向き直る。

「とてもお綺麗ですね」

「そうですか?ありがとうございます......?」

 アレンさんは不思議そうな顔をしている。

「マギ様騙すようなことをしたのは申し訳ありません。女の一人旅は危険ですからその魔道具で男の格好をしていまして......。改めて自己紹介をノア•アカリア•アーデストと申します」

「ノアさんですね。ん?アーデストって......」

「帝国の正式名称ですね。アーデスト帝国が第3位継承者ノアと言った方がいいでしょうか?」  

 綺麗な貴族式のお辞儀をするノアさんに俺は絶句したのだった。



「で、ノアさん俺が帝国を救うってどういうことですか?」

「お噂は聞いたかも知れませんが、今帝国では強力なモンスターがたくさん出現しています。ただ帝国は3大国のなかで1番武力が弱い国なのです」

「つまり俺にモンスターをどうにかして欲しいと?」

「はい!お噂に聞く賢者マギ様の力なら或いはと......」

「どんな噂を聞いたのかは知らないけど俺にモンスターと直接戦う力はほとんどないよ」

 しゅんと落ち込むのノアさん。


 ただと俺は先を続ける。

「俺は仲間を支援するのだけはかなり自信がある。だからそれなりに強い前衛がいれば多分なんとかなると思うよ。帝国にそういう人はいる?」

「マギ様それなら素晴らしい人物がいますよ。その人物は剣術にも長けて礼儀作法にも長けています」 

「それはすごいですね。お名前はなんというのですか?」

「ノア•アカリア•アーデストです!」

「ノアさんって戦えたんですね......」

「ええまあソロであればワイバーンを倒せるぐらいには」


 ワイバーンとは劣竜と呼ばれる竜より弱い竜だ。ただいくら竜より劣っているとは言っても並の剣士が1人で挑めば5分と持たず死ぬだろう。


「そのソロでワイバーンを倒せるノアさんが勝てない相手が帝国にはいるってことですね。ところでつかぬことをお伺いするのですが、ノアさんと一緒にモンスターを倒して回るとしてお休みとお給金はどのぐらい出るんですか?」

 俺はノアさんに恐る恐る聞く。

「帝国の街道沿いで被害を及ぼしているモンスターを倒したら後はゆっくりでいいので休みはそこさえ乗り切ればいつでも取っていただいて大丈夫ですよ。お給金は普通にノア様が冒険者やるよりは出せると思います」

「わかりました!お受けします!」

 こうして俺は帝国の第3位継承者のお姫様に拾ってもらうことになった。

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