賢者、帝国にスカウトされる
翌日、目が覚めると夜明け前だった。
勇者パーティーの追放、王都の冒険者ギルドで仕事が受けられない。色々なストレスであんまり眠れなかったみたいだ。
金も装備もほとんど勇者パーティーのところに置いてきてしまった。
俺は先が見えない不安に頭を抱える。
「はぁ......。この先どうしようか」
溜息をこぼしながら、これから金を稼ぐにはどうすればいいのかを考える。
方法は3つある。
1つ目は王国の外で冒険者活動をする。
2つ目はこの国の王様に頭を下げる。
3つ目は冒険者という職業を諦めることだ。
「この中だと確実にマシなのは1つ目だろうな。2つ目も3つ目も勇者パーティーが邪魔をしてくる未来しか見えない。ならいっそいい機会だし王国を出てみるか......!」
正直不安がないといえば嘘になるが生きる為には仕方ない。
「しかしどこに行こうか。聖国は聖女ティーナの息がかかっている可能性があるし、帝国か?」
俺は3大国同盟のことを思い浮かべていた。
王国、聖国、帝国3つの大きな国が同盟を結んでいるのだ。この3つの国は冒険者ギルド同士の繋がりもあるので冒険者登録を再度する必要がないのも大きなメリットになる。
俺は帝国に向かう馬車を探しに来ていた。
お金はないが商人の人達に頭を下げて護衛に入れてもらえれば安く移動できるかもしれない。幸い味方を強化したり支援をすることには自信がある。
「あの、すいません。帝国に移動する商隊はありませんか?」
「帝国?心当たりはないね......。大体今あの辺は強い魔物がたくさん出没してるから誰も近づきたがらないんだよ」
「そうだったんですか。貴重な情報ありがとうございます」
俺は頭を下げその場を後にする。
「帝国にそんなことが起こってたなんて......」
このままじゃ帝国に移動するどころか王国を出ることすらできないかもしれない。そんなことを考えていた矢先、後ろから声をかけられる。
「君!もしかして帝国に行きたいのか?」
「は、はい!」
「そうか!ちょうどよかった。私も今から帝国に行く用事があったのだ。一緒に乗っていかないか?」
「是非お願いしたいです」
こうして俺は幸運にも帝国行きの馬車に乗ることができた。
「ところで君、商人じゃないよね?」
「会ったばかりのアランさんにする話ではないかも知れませんが実は役立たずと言われてパーティーを追放されてしまって......」
「ということはマギさんは元々冒険者だったのか?」
「冒険者と言えば少し違うかも知れませんが似たようなものです」
「そうか!帝国は冒険者が少ないからどこにいっても歓迎されるだろう。ところで職業はなんだったんだ?」
「えーと賢者でしたね」
「まさかマギさんってもしかしてあの賢者マギ!?」
「あのがどのかは分かりませんが多分その賢者マギで合ってると思います」
アレンさんがなんでこんなに驚いているのかはよくわからない。勇者パーティー時代も俺は全然注目されていなかったはずだ。
「マギさんいや賢者マギ様どうかその力を使って帝国を救ってはくださいませんか......?」
「え?」
俺は生まれて初めてこんな間抜けな声を出しただろう。
なぜならアランさんが女の人になっていたからだ。
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