第49話 キス

 男子マネージャーに癒しマッサージされながら優しく頭ナデナデされて、ようやく渚が泣き止んだ頃にはもう夕方だった。


「渚さん、もう落ち着いた?」

「……すーはー、すーはー……うん、大丈夫……」

「なら良かったよ」


 帰り支度を済ませて部室を出ようとするマネージャーの腕を、渚がきゅっと握って止めた。


「……あのねっ……マネージャー……!」

「なに、渚さん?」

「……ボク、マネージャーに一つ……お願いがある……!」

「なんだろう? ぼくにできることなら何でもいいよ?」

「……ホントに?」

「本当だってば。だって、渚さんはぼくの恩人だからね。それに甲子園優勝のご褒美だってあげたいし」

「……それは絶対に逆だけど、じゃあ、言う……」


 そして渚は、とんでもないことを口にした。


「……ボクも、マネージャーと……エッチなこと……したい……!」

「ななななななっ!?」


 いきなりすぎる渚のお願いに、西神田が大いに慌てる。

 けれど渚にとっては、ぜんぜん突然なことではなくて。


「……マネージャー……くずはとセックス、したんだよね……?」

「どどど、どうしてそんなこと知ってるのさ!?」

「……そんなのすぐ分かる……テレビの中のくずは、信じられないほど絶好調だったし……肌もぴちぴち、おっぱいも更に成長してた……記録も信じられないほど伸びたし……そんなの、理由は一つしか考えられない……」

「そんな理由で!?」

「……見る人が見れば、あの世界大会のくずはは……セックスの事後を世界中に放送してたのと同じこと……」

「そんな風に見るの、世界中で渚さんだけだからね!?」


 大慌てするマネージャーに、渚がずい、と距離を詰める。

 渚の膨らみすぎた爆乳の先端が、マネージャーの胸部に当たって柔らかくひしゃげた。


「……ボク、すっごく頑張ったよ……? そのご褒美、マネージャーからもらいたいな……」

「うううっ……」

「……きっとくずはにもそう言われたはず。でないと恋人同士でもないのに……マネージャーがくずはとエッチなこと、するはずがない……」


 完全に図星だった。

 最後の最後で提案したのは西神田とはいえ、それまでに『ご褒美』を何度となく強調されていなければ、思い切ってエッチな癒しマッサージにまで至ったとはとても考えられない。


「……それとも……ボクなんかじゃだめ、かな……?」


 渚が上目遣いで男子マネージャーを見て、精一杯目をウルウルさせる。

 渚のメスの本能が、ここが人生最大の勝負どころだと絶叫していた。

 渚の子宮が目の前の男子様を受け入れたくてキュンキュンしていた。

 フェロモンと女性ホルモンが過剰分泌されまくっていた。


 そして渚は、この大一番に勝利した。


「……ぼくでよければ、もちろんオッケーだよ。渚さん──んんっ!?」


 返事が終わるまで待つこともせず、渚はマネージャーに熱いキスをした。

 渚のファーストキス。

 けもののキスだった。

 本能を剥き出しにした、まるで魂ごとむさぼり尽くすと言わんばかりの荒々しいキスだった。

 くずはのキスを絶対に上書きしてやる──そんな宣戦布告にも見えた。


「……ボクっ……マネージャーのこと、一生離さないからっ……♡ 絶対に……♡」

「ちょ、ちょっと渚さん! 部室はダメだよ!? せめて保健室のベッドとか、体育倉庫のマットとか!」

「……そんなのだめ……もう我慢できない……♡ ここで犯したいッ……♡♡」

「だからダメだって! もう渚さん、ぼくの言うこと聞かないと、これから癒しマッサージする回数減らすからね!?」

「…………それは困る」

「ほっ」


 その後、男子マネージャーは渚のお姫様抱っこで保健室へ連れて行かれて、滅茶苦茶犯されまくるのだった。

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