第40話 男マネを追放した野球部の崩壊4
その後、渚は小石川みのりたち三人を風の杜学園へ連れて行き、連絡を受けて待っていたくずはに事情を説明した。
渚が聖鷺沼高校野球部の人間をある程度連れてくるのは、くずはとしても予想できる範囲だった。
むしろ渚に接触したのが三人だけとは、意外なほど少ない。
そのことを遠回しに聞いてみると、三人娘が口を濁しながらも答えた。
「それはですね……渚って一見凄くとっつきにくいし、才能無いくせにだらけてるヤツとか絶対認めないタイプなんで……」
「そうなんですよ。しかも問題は、その基準が全部自分っていう、ね……」
「でも男子の人気は有頂天だよね! 野球の実力はありえないくらい凄いし、滅茶苦茶美人だし、おっぱいもとんでもなく大きいし!」
「……そんな男、こっちから願い下げ……マネージャーさえいればいい……」
なるほどと事情を了解したくずはが頭をひねる。
この三人には、涼葉がこちらの計画を全部暴露したという話だ。
そうなった以上、三人はこちらの復讐計画に協力してもらわないと困る。
もしも逆らうようなら即座に潰す。
少し考えたのち、くずはが三人に命令を下した。
「まずこちらの要求として絶対なのはね、あなたたち三人の力でもって、そっちの野球部を県大会決勝まで勝ち上がらせること。これは当然可能でしょ?」
「まあ、それくらいなら……楽勝すぎかな?」
「渚たちが敵にいなければ、わたしたち三人できっと全国優勝できるしね」
予想できてはいたものの、前提条件が崩れない事にくずはが胸をなで下ろす。
「そして決勝戦当日だけど、三人は出ても出なくてもどうでもいい。ああそれと、もし野球部を退部するなら準決勝後にしてね? 変に感づかれるのもイヤだし」
「うわーっ。それ鬼畜ですね、決勝目前でいきなりバッテリーが揃って退部とか。でもアリよりのアリかも」
「どうせ野球部には先が無いんだし、だったら胸クソ悪い内部崩壊眺めるより、そこの時点で退部すべきでしょ」
「あのクソ監督に、決勝戦出ないって言う理由にもなるしね」
三人の心が完璧に野球部から離れていることを、くずはと渚は確信した。
「ほかにも三人に頼み事があったら連絡するからよろしくね。上手くいったら、ウチの学校への転入を斡旋してあげてもいい。もし裏切ったら──」
「……すみやかに処刑する」
『処刑なのっ!?』
****
話を終えてみんなで野球部部室に行くと、西神田が残っていた。
くずはにどっさり渡された温泉旅館のパンフレットを眺めている。
「渚さん、お帰りなさい──あ、みのりたちも来たんだね。風の杜学園野球部にようこそ!」
『ごべんだざう゛ぃぃぃぃぃぃ!!!!』
三人は、なにを言ってるのかよく分からない嗚咽とともに号泣土下座した。
西神田がびっくりした後、渚をじろりと睨み付けて、
「まさか、渚さんがいじめたんじゃないよね?」
「………………そんなことない」
いじめたのは主に涼葉とくずはだ。だから自分は無罪。のはず。
そこに連れてったのは自分だけど。
『ぶえええええんっっっ!!』
ブタみたいな声で泣きまくるかつての部活仲間に苦笑して、西神田が優しい声をかけた。
「事情はぼくはよく分からないけどさ、みんな疲れてるんだよ、だから元気出して。久しぶりに癒しマッサージでもする?」
『すりゅぅぅぅぅ!!』
「じゃあ、上着を脱いで椅子に座ってね?」
三人がTシャツ姿になって椅子に並ぶ。
渚には負けるとはいえ三人とも相当美人だし、野球も上手いし、スタイルだって抜群である。
ネット上のエッチな男性向け裏サイトに行けば、三人も渚とはひと味違った野球少女としてかなりの人気を誇るのだけれど、幸か不幸かその事実をここにいる誰も知らなかった。
そうして西神田は、久しぶりの癒しマッサージで三人娘の全身を隅から隅まで、トロトロの甘々に癒して癒して癒しまくった。
三人は、本当に絶対一番逆らってはいけないのは、くずはでも渚でも涼葉でもなく、目の前にいる男子マネージャーであることを、魂の底から思い知らされたのだった。
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