第22話 転校しました
喫茶店で転校の話をした週の土曜日には転入試験、翌週には転校手続きを終えて、実際に転校するまでおよそ半月。
それが転校先が名門私立高校、しかも時季外れの転校となれば異例のスピードとしか言いようがなかった。
西神田としては、骨折りしてくれたくずはに感謝しかない。
卒業単位の問題なんかもゴニョゴニョしてくれたみたいだ。
転校した先で西神田と渚は同じクラスになった。
学校に元々在籍していたくずはの妹、佐倉前真希とも同じクラスだ。
「にーくんと同じクラスになれて〜、ボクとっても嬉しい〜」
ボクっ娘三姉妹の次女、佐倉前真希はゆるふわ系ボクっ娘である。
昼休み、真希が勝手に使っているという立入禁止の屋上に案内し、渚との自己紹介を済ませた。
「……ボクは篠宮渚……マネージャーとは、一緒の野球部だった……」
「姉さんたちから聞いてる〜。でもよかったよ〜」
「……なにが?」
「璃沙ちゃんが出会ったタイミングでボクもいたら〜、きっと渚を一生〜、ベッドから起き上がれない身体にしちゃってたから〜」
真希はゆるふわ系ではあるが、一方で握力500キロオーバーの格闘系メスゴリラでもある。
そのユルすぎる口調をバカにした対戦相手を、ことごとく病院送りにしたという噂は嘘ではない。
渚は真希の言葉で、改めて自分が破滅の淵でダンスしていたことを思い知らされて、底知れない恐怖に震えた。
「でもにーくんってば酷いよ〜。結局ボク一人だけ〜、完全に蚊帳の外だったもんね〜」
「ええっ、そんなことないよ? 涼葉はもちろん、璃沙ちゃんだってほとんど絡んでないし──」
「寂しかった〜」
思いっきりあざとく落ち込む真希だが、それでもなお滅茶苦茶可愛いくらいには超ハイレベル美少女だった。
そこで渚はふと気付く。
……そういえば佐倉前三姉妹の残り二人もそうだし、マネージャーの妹の涼葉も……マネージャーのことで動転していて気にならなかったけど、信じられないほどの美少女で、かつスタイル抜群だった……?
自分もまた同等レベルの爆乳美少女である自覚が全くない渚は、強力すぎるライバルたちのスペックに戦慄したのだった。
「寂しかった〜」
「はいはい分かったよ真希、辛かったね。大丈夫? マッサージする?」
「する〜!」
泣いた烏がもう笑う。
そんな喩えがぴったりの真希が、いそいそと制服を脱いで下着姿になった。
「あのね〜。今のボクのおっぱいは〜、118センチのPカップで〜、パンツはライムグリーンの紐パンなの〜」
「真希ってば、そんなこと言わないでいいよ!?」
「……!!」
渚はまたしても戦慄した。
……こ、コイツこんなに可愛いのにボクより胸が大きくて、その上紐パン……だと……!?
……一体どれだけあざと可愛いければ……気が済むというのかッ……!!
「じゃあ揉むよ……って滅茶苦茶硬いんだけど!?」
「にーくんが構ってくれなかったせいで〜、どんどん硬くなっちゃった〜」
「ってこれ筋肉に力入れてるからでしょ! びっくりしたなぁもう」
「ボクが一番〜、筋肉を硬くできるから〜。癒しマッサージの練習に最適なの〜」
「なるほど、ぼくに対する挑戦状ってわけだね。でも負けないよ!」
「ひゃんっ」
勝負はあっけなくついた。
全身の筋肉を硬くして挑んだ真希が、一瞬で返り討ちに遭ったからだ。
「ふわああっ〜、ボクの身体が全身ふわふわ〜、とろとろ〜。気持ちいい〜」
「ふふん。ぼくに挑戦状なんて、百年早いんだから!」
完璧なまでの即落ち二コマを眺めながら、渚は心に誓った。
(……いつか絶対、マネージャーに『渚を癒しマッサージしている時が、一番幸せだよ』って言わせるんだから……!)
とりあえず、マネージャーにできるだけ多く癒しマッサージしてもらうため、これまで以上にハードな練習しようと心に誓う渚だった。
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