第3話結成第肆調査船団〔弐〕

宇宙戦艦扶桑型一番艦扶桑。俺の住む家であり、第肆調査船団の仲間でもある。そして俺は、扶桑の二等士官室区画にある自室へと向かった。


「竜馬中尉お帰りなさい」


「ん?あぁ、扶桑か。ただいま。、、、っとそうだコレからの予定を教えてくれ」


扶桑、宇宙戦艦扶桑に搭載されているAIだ。彼女は数少ない俺の話し相手でもある。見た目は大和撫子、和服美人だ。


「後、10分で艦内放送が始まります。艦内放送にて艦長がお話しされた後、私は出港となります(ふふっ、また一緒にいられますね)」


「わかった。なら、艦内放送中いや、出港から5時間寝る。何かあれば起こしてくれ」


「軍服脱がないんですか?シワになりますよ」


「、、、起きたら。」


「全く、、、お休みなさい竜馬。」


場所は変わり、扶桑艦長室。


私は新島蓊、この艦の艦長でもある。現在は艦内放送の為にカメラが回されている状況だ。


「艦長、本番まで10秒です。」


「うむ、よし」


「oK」


「扶桑乗組員諸君、私は宇宙戦艦扶桑艦長、新島蓊だ。これから我々は、今まで人類が経験してこなかった困難に陥る事も、今目の前にいる仲間、そして自分が死ぬ事もあるだろう。しかし、諸君達はこの扶桑に乗っている。この戦艦が戦時中、何と呼ばれていたか、知らぬものは居ないだろう。、、、奇跡の艦。そう、我々は奇跡に守られている。そして、私はこの遠征を必ずや脱落者を出すことなく、終わらせたい。、、、そして、諸君等の勇気に、敬礼!」


「よし!艦内放送終了、艦長お疲れ様でした。」


「うむ、では私はブリッジに移動する。」


、、、この遠征、上層部の思惑があるのは明らかだ。こんなことに部下を巻き込むことになるとは。


「艦長に敬礼!」


ザッ!


ブリッジに入ると副艦長である重丸君の号令に続き、ブリッジのメンバーが私に敬礼してきた。


「総員、出港準備に入れ。」


「総員、出港準備。」


「出港準備、okです。」


あぁ、これからは神のみぞしる。


「宇宙戦艦扶桑、発艦せよ!」


女神よ、どうか我等が航海に幸運を。


そして、扶桑の食堂にて


「全く、あいつは何処いってんだ?せっかくのパーティーなのに。」


「連隊長、そうは言いますが彼がパーティー等に参加するとお思いで?」


「ヒュンケル、、、奴が来ないと連隊の美男子三人集が揃わないだろ?」


「まったく」


私はヒュンケル・シードラン。トーリスリッター連隊第1小隊長だ。彼はロバート・フォン・ギルバート。栄えある連隊長様だ。我々が話しているのは竜馬に対してだ。 連隊長様と彼がいると女性が嫌と言うほど集まる。そこに、、、


「おい!啓、一緒に話そうじゃないか!」


「!?連隊長!!!」


彼が連隊長曰く、トーリスリッター連隊美男子三人集。トーリスリッター連隊は男性だけでなく女性も多い。約半数は女性だ。その半数の女性隊員が選んだ美男子トップ3。

因みに男性隊員が選んだ美女トップ3は、、、。


「サリー!メリー!アリー!」


「「「ロバート!♥️」」」


全員、連隊長殿にゾッコンだ。


もうひとつ、連隊長には秘密のランキングがある。トーリスリッター連隊、爆死希望ランキング。それの栄えある一位、ロバート・フォン・ギルバート。2967票、第二位大車啓。33票。竜馬が入っていないのは、、、田浦マリンとの関係が周知の仲。マリンを周りが応援しているからである。少なくとも、女性が竜馬に言い寄ることはまずない、彼が話すのは大抵仕事の話であり、女性から避けているのだ。


「キャー!啓君!」


「えっ?ちょっ!酔ってるだろ!おい!やめろ」


はぁ、まったく。



ここは、、、


「、、うま、竜馬、久し振りだな?」


「あなた、竜馬を玄関に立たせたままじゃ駄目よ。ほら、夕飯が出来ているからね?食べましょ」


そうか、家に帰ったんだ。


「うん、わかった」


「竜馬、それで小学校はどうだ?」


「うん、結構い、、、え父さん?母さん?」


「竜馬!逃げろ!!」


「竜馬、貴方は、、、生きて!」


周りが燃え、自分の手が血で濡れている。父さんと母さんが

何か叫んでいる。何故だ、何故離れる。速く、速く助けないと、また、また家族が、、、


「、、、うい、竜馬中尉、竜馬中尉、起きて下さい。竜馬中尉。お約束の5時間が経過しました」


「あっ、あぁ。今起きる」


「どうかしました?心拍数が上がっていますよ」


「大丈夫だ、それより俺が寝ている間に誰か来たりしたか?」


「いいえ、誰も訪ねて来ることはありませんでしたよ」


「そうか、扶桑、有り難う。後は自分でやるよ」


「いいえ、食堂は閉まっていますよ。貴方の昼食はできています。今は、食べてください」


「、、、わかった。」


俺はそう言うと、扶桑が用意したレーションを口に入れ、ミネラルウォーターで飲んみ込んだ。


「申し訳ありません。私は機械なので。ドローンを使い、こうするしか」


それなら、食堂が閉まる前にドローンで適当なのを持ってこればと思ったが、扶桑が用意したんだ。文句を言うのは止めよう。


「構わない、レーションは兵士の必需品だしな。それに、女性に用意してもらった食事にケチをつける男はいない」


「?!、、、有り難うございます。それでは」


扶桑はそう言うと、彼女のホログラムは俺の部屋から消えた。彼女の用意した食事を終え、軍服からクルースーツに着替える。寝てたから当たり前だが、案の定、シワになっているところが多く、シワ伸ばしに苦労した。、、、コレなら扶桑の忠告を受け入れておくべきだった。自室から通路に出ると、新島艦長が歩いていた。俺はすかさず新島艦長に対して敬礼した。


「竜馬か、姿を見ていないから心配していたぞ」


「いえ、自室にて休憩しておりました」


「、、、竜馬、私はお前が軍人になることに私は今でも反対している」


「知っています。お義母さんにも言われました。ですが、自分は貴方に、新島翁、お義父さんに救われました。家族が焼け死んで、たった一人になった自分を救ってくれたのはお二人です。、、、それにこれはケジメです。救われた命は、御二人の為に使う」


「ふぅ、わかった。なら早く孫を見せてくれ」


「、、、相手がいないもので。」


「マリンはどうした。周りではお前達を周知の仲だぞ?」


「告白はしたんですが、、、返事を貰っておりません。そこからは、何時もと同じように仲間として酒を飲み明かす仲です。」


「ふぅ、、、確かにな。返事を待っていろ、駄目だったらやけ酒に付き合ってやる」


「はは、それでは」


艦長とのたわいもない話を終え、俺は格納庫へと向かった。扶桑自体が巨大過ぎるせいで、格納庫に行くまでに時間がかかるため、テレポートエリアから向かった。テレポートは便利だが、便利過ぎると身体が鈍ってしまうな。ちなみに、格納庫にきた目的は愛機の確認である。扶桑には1500のドール、500の蜂王、600の土蜘蛛、10の海亀と各海亀に30搭載される子海亀。これだけの兵器が入る格納庫は本当に大きい。


「中尉!」


格納庫に入ると、いきなり叫び声が聞こえた。一瞬、俺の事を呼んだのかと思ったが違うみたいだ。まぁ、中尉なんて腐るほどはいないが、尉官位はけっこうな数乗船している。呼ばれたのは誰かと、回りを見渡すと屈強な男風の奴がメカニックの女性に呼ばれているところだった。


「リョウマ中尉!」


「応、何のようだ?」


「貴方のドールの整備が終わりました。」


「へぇ、どれ見せてくれ。ついでに、、、今夜どうだい?」


、、、なんつう会話してんだ。兵士としての自覚は無いんだな。それにしても、リョウマか同名の奴は何回か見たこともあるし、あり得なくは無いな。


「リョウマさん、、、ですよね?」


「、、、君は、確かメカニックだったな七美軍曹」


「はい、リョウマさんはどうして此方へ?」


「ドールの最終調整がしたくてな。だが、こうもドールの数が多いと、、、」


「いえ、あのリョウマさんのドールは真っ黒の奴ですよね?」


「あぁ、それだ」


「今、あそこにありますよ、ほら」


「あちゃー、メンテナンス中か」


七美軍曹の指示した方を見ると、外装取り外し段階に入っている俺のドールがあった。


「リョウマさんのドール、名前はたしか、、、」


「スカーフェイスだ、ほら顔の所。人間だと目の辺りに当たるな。あそこに傷があるだろ?」


「だからスカーフェイス(傷のある顔)なんですね。」


そこからスカーフェイスの前まで機体の状況等を聞いた。


「ピッグマン、どうだい?俺のスカーフェイス」


「中尉ブーか?スカーフェイスは外装にガタが来てたブーから、新しくしてるブー。サマナ君、ネヴィル君、休憩ぶー」


「足やったら休憩入ります」


「同じく!」


「ブー、仕事熱心なのは感心ブー、でも時には休むことも大切ブー」


「了解です、チーフ」


「わかりました、チーフ」


相変わらず、部下を大切にしてるなピッグマン。


「ピッグマン、この娘しってるか?」


「流石ブー、七美軍曹はドール整備士として特1ライセンス持ちブー、腕はまだまだ僕達に及ばないながら、正に金の卵ブー。ところで、紹介したって事は四人目ブーか?」


「あの~、リョウマさん?四人目ってどういう事ですか?」


「あぁ、俺のドールは少し特殊でな?」


「少し?特注品の間違いだブー。竜馬の機体は重武装と超加速なんて馬鹿なコンセプトの機体ブー。その特性から通常のメカニックじゃ竜馬本人がメンテナンスした方が速いまであるブー。だから、スカーフェイスを作成した僕が竜馬専属のメカニックになったんだブー。普通ドールは四人のメカニックによって手入れされるブー。でも竜馬は自分の決めた相手にしかスカーフェイスを触らせないんだブー」


「そう、それで上を黙らせて四人までなら俺の専属にして良いって訳だ。そして、その四人目に七美軍曹なってくれないか?勿論、特殊手当ても着くぞ。ただ、場合によっては俺の部隊と共に戦場に行くことになるが、、、」


「そこは安心して良いブー、竜馬が仲間を危険に晒す時には既に部隊は全滅してるブー」


「ピッグマン?!」


「フフッ、リョウマさん結構面白いんですね」


「ブー、、、悪いけど本題だぶー」


「ピッグマン、依頼したスラスターの強化はどうなった?」


「無理ブー、これ以上やるとリミッターを外す事になるブー。リミッターを外せばオーバーロードは必須、それに垂直加速と直上加速以外できないブー。重くなれば旋回だって遅くなるし、、、重装備高起動、そんな機体は夢のまた夢。諦めるしか無いブー」


「そうか、、、」


「あの~、なら前方にもスラスターを着けてはどうですか?旋回ならスラスターを吹かすだけでできますよ」


「「、、、」」


「ど、どうしたんですか?」


「スラスターで強制的に旋回?そんなの無理ブー、無重力下だと永遠に回り続ける事に、、、」


「いや、有りかもしれん。スラスターで回り続けるんなら逆噴射機構も取り付けて、」


「そんな事をしたらスラスターが1つでも破損したら爆発必須ブー!動く爆弾ブー」


やはり、無理か。俺とピッグマンのはある意味夢が重なった存在だ。ピッグマンの夢、それは夢である重装備高起動機体を作ること。おれの夢、誰にも乗りこなせない自分専用機を手に入れる事。俺のスカーフェイスは元々ピッグマンが作った重装備高起動機体だが、ピッグマンと俺は現在に納得していない。もっと速く、誰にも追い付けない速度。俺達はソレを目指している。


「あの~、話終わりました?」


「「あ」」


「ならジュピターメタルを取り入れればどうでしょうか?あれならどんな物も防ぐことができますよ」


「「ジュピターメタル?!」」


七美軍曹が言ったジュピターメタル。木星外周に存在する金属物質の一つだ。発見から1世紀以上たった今でも加工方法が確立していていない。そんな物を?


「ジュピターメタルの加工方法なら私、お父さんから教えてもらいましたよ。」


「なに?!」


「ジュピターメタルの加工方法なら、、、です」


「これは、世紀の発見ブー。」


「七美軍曹、俺は是が非でも君を手に入れたくなったよ。どうだい?俺のチームに入らないか?」


「え、、、あの宜しくお願いします!」



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