第2話結成第肆調査船団

西暦2100年。20年に渡る戦争は終わりを告げ、各国は復興の道を歩んでいた。そのなかでも、戦争の発生地に存在し、亜連との激戦を繰り広げた国、そしてその同盟国は抜きん出て復興が速かった。そして亜連との激戦を繰り広げた国、それこそ我が国である。我が国日本は他国の進行を決して許しはしなかった。だから、現在があるのである。そして戦争終結から今日、12月24日で1年になる。我等はかの惨劇を忘れてはいけない。


「せーんぱい!キャッ!」


ビリッ、


俺の読んでいる新聞が破れた音と共に、目の前に一人の女が倒れ混んできた。髪はシルバーで光の反射でか輝いている。身長はだいたい165cm程、俺よりも頭1つ分小さい。


「いてててて、すみません」


そして、俺はこの声を知っている。士官学校時代から嫌と言うほど聞いてきた。そいつは常に俺の回りに存在し、俺の幸福を悉く滅ぼしてきた。


「西糀谷花菜准尉です。本日を持ちまして、トーリスリッター連隊第1小隊第1分隊に配属になりました宜しくお願いします、遊佐竜馬分隊長」


ん?おかしいな、西糀谷花菜、カナか、奴と同じ名前だな。

トーリスリッター連隊?俺の所属する連隊だ。おーけー。

第1分隊第1分隊?俺の所属する分隊だ。おーけー。

分隊長?俺は隊員だ。おーけー。?のー!

あるぇ?


俺は自問自答を繰り返し、全てにおーけー。が着くと思っていた。しかし、3門目にのー!が来た。俺っていつ分隊長になったんだ?


「なぁ、君。恐らくだが間違えているぞ。俺はしがな、、、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!おっおおまお前は!」


「はい!先輩の頼れる後輩であり、一番弟子西糀谷花菜です!先輩、お久し振りですね!、、、あれ?どうしたんですか?」


分隊長、そうか、考えたらあの時言われたな。


「遊佐竜馬中尉、お前を第1分隊長に任命する」


「シードラン少佐?それはどういう事でしょう?」


「お前の前任者が不祥事を起こし、独房に入った」


「あー、あの酒の件ですね?」


「そうだ。その件だ」


俺の前任者。大尉だが、酒癖が悪かった。今回、どうやら飲酒運転中に轢き逃げ事故を起こしたらしい。連隊はこのような馬鹿を切り捨てる。だから俺が分隊長か。


「わかりました。遊佐竜馬中尉、喜んでお受け致します」


「そして、」


「まだあるんですか?」


「、、、その車には三名の分隊員が同乗していた。ソイツ等も処罰される。君には誰だか解るだろ?」


「俺と啓少尉以外の3馬鹿ですね?」


「あぁ、よって、士官学校から3人補給兵員が来ることが決定した。」


「士官学校だって?!馬鹿な!次の任務を理解しているのですか!」


「、、、これは上層部の決定だ。覆されない。、、、私もおかしいと思う。しかし、」


「兵士は命令には服従する。解ってますよ」


「愚痴は後で聞いてやる。頼んだぞ」


「yes,sir」


そして現在へ、、、か。あっ、俺の分隊、壊滅する。


「あっ!遊佐竜馬中尉ですね?」


「ん?次はなんだ?」


疫病神の次はなんだ?男の声?こいつも聞き覚えあるな。


「はっ!神野剛少尉であります。本日1000を持ちまして、トーリスリッター連隊第1小隊第1分隊所属となりました。宜しくお願いします、分隊長」


「お前は富士山麓基地の訓練生じゃないか?!元気にしてたか?」


「覚えて頂けて光栄です!あの時、見捨てられた我々を救ってくれた中尉には感謝しています。そして、中尉の部下に成れたことは誇りです!」


「誇りとか、、、あー、そんな事はどうでも良い。生きていることが一番大事だ。まぁ神野少尉宜しく頼むぞ」


「はっ!有り難うございます。」


俺が絶望から少し立ち直るとアナウンスが流れてきた。


「扶桑発信30分前になりました。船員の皆様は搭艦をお願いします。繰り返します。、、、」


「ふぅ、、、実に嫌だが分隊が揃った。全員、登艦するぞ」


「「了解です。分隊長!」」


扶桑が止まっているのは4番スペースポート。ここからだと最も近い位置にある移動にかかる時間はだいたい5分程度だが、登艦

が面倒だった。アナウンスにあわせて乗り込むせいで余計に時間を喰っちまった。


「うわー、やっぱり大きいですねー!」


「当たり前だよ。全長24,000m、全幅4,500m、全高9,600m。これを越える戦艦は、、、大和型の全長2,6000m、全幅,5,050m、全高1,1050mだけ、ですよね竜馬先輩!」


「、、、カナが、まともなことを?!あの、疫病神が?」


「えー、まだ私を疫病神って呼ぶんですか?もぅ、プンプンって感じですよ~」


知っている。俺は知っている。他の奴が女神と言おうと、俺にとってこいつは疫病神だ。


「く、、、さっさと搭艦手続き済ませろ。俺が付き添うのはここまでだからな。それじゃぁな」


俺はそう言うと士官搭艦口に向かった。何故入口が二つあるか、それは新たな補給兵の関係がある。元々搭艦者5000人は扶桑に乗り慣れたベテランだった。それが1000人程が他の部隊へと移動させられた。幸いなのがトーリスリッター連隊は数人の入れ換えですんだこと。しかし、技術者の大半が士官学校上がりのエリート((笑))に変わった。勿論、最悪だ。


「ん?あれは、、、おい!そこの兵士、その軍服扶桑の搭艦員だな、新兵か?」


「はっはい!整備班に配属されました、藤木七美です。でも、入り口が、、、えっ」


「あー、士官搭艦口に来ちまったのか、、、わかった。俺と行くぞ」


「ちょっと、引っ張らないで!」


「あら、竜馬じゃない、遅かったわね。」


「マリンさん、少しエスコートする相手がいてね。それよりもこの娘の手続き此方でもできる?」


「できるけど、、、どうしたのその娘?」


「見た感じ新兵って感じじゃない。多分、民間人から徴兵されたんだと思う。人混みで搭艦口が分からなかったんだろ?ここでも出来るから安心しろ」


「えっ?!いや、有り難う、、、ございます」


「あら、15歳?若いわね。、、、まぁ、仕方ないか。それじゃ、手続き終了!これで貴女は扶桑の仲間よ、これから宜しくね」


「それじゃっ、俺も行くから!ばー」


「駄目よ、貴方はまだ手続きが終わってないんだから」


「かー、一緒にやってくれれば良いのにさ。ってことで、七美ちゃん先に行ってね」


「何口説いてんのよ」


「口説いてなんていない、それとも俺が子供に性的欲情すると思っているのか?いくらコンバットハイになったとしても」


「ハイハイ、わかったから。それじゃぁね七美軍曹」


「ではまた何時か会おう、軍曹」





私は藤木七美、15歳です。パパやママ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、親戚の叔父さん叔母さんが戦争で死んでしまって1年間、施設で過ごしていました。ドール整備工だったパパの教えでライセンスを獲得していたために、軍に徴兵されました。正直、軍に入るのは嫌でした。でも、施設の先生に迷惑はかけられません。仕方がないんです。お別れパーティーもしてもらって、ここに来て、、、迷いました。ついさっき搭艦30分前の放送も流れたし、もし乗れなかったりしたら、、、。そう思いながらなんとか扶桑に到着しました。でも、様子がおかしいんです。話だと1000人の人が搭艦するはずなのに人の気配がまるでありません。どうやら間違えてしまったようです。


「ん?あれは、、、おい!そこの兵士、その軍服扶桑の搭艦員だな、新兵か? 」


私はその兵士に自分の所属と名前を話しました。でも、私はそれよりもその兵士の顔に驚きを隠せませんでした。その兵士は私のパパに瓜二つな見た目をしていたのです。 親しそうな女性兵士に竜馬と呼ばれていたので、私は彼が駿河の英雄だとわかりました。手続きを終わらせて私は扶桑に搭艦しました。私はペンダントにある家族写真を見ながら


「、、、パパ、私は頑張る」


そう言いました。


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