第2章 いざ、ダンジョンへ
第10話 アルクターレ
グレース剣魔学園の入学試験まであと4年。
ヌレタ村の平凡な少年アルトこと俺は弛まぬ努力の末、両親からダンジョンへ潜ることを許可された。
ここでおさらいをしておくが、俺が学園の入学試験までに成し遂げたいこととして大きく分けて3つの事項がある。
1つはスキルの習得、2つ目は学園の入学費などの必要な資金の調達、3つ目は剣術及び魔法のレベルアップだ。
スキルの習得とは、具体的には威圧スキルと変身スキルの習得のことで、これらは魔導書と呼ばれる特別な本を読むことで習得することが出来る。しかしこの魔導書という本、めちゃくちゃ高い。
2つ合わせて300万
剣術と魔法のレベルアップは言わずもがな、ダンジョンで実戦経験を積むことで柔軟性や適応力などを身につけることができればと思っている。
一応、学園の入学試験まで4年弱あるが、試験直前の1年はセインにとって重要なイベントが発生するはずなので、それの見学をするために出来れば3年以内に以上の項目を達成したいと考えている。
そんなわけで俺は今、冒険者登録及びダンジョン攻略のため、ヌレタ村から半月ほどかけてアルクターレという都市に来ている。
アルクターレ、王都から少し離れた場所に位置する中規模都市でヌレタ村からは比較的近くにある都市だ。俺のような辺境の村出身の冒険者志願者はまず初めにこのアルクターレで冒険者登録を行い、そのまま駆け出し冒険者としてそこで下積みをするのが一般的だ。
そんな背景からこのアルクターレという街では辺境の村出身の駆け出し冒険者が多く、初心者向けの易しい依頼やダンジョンなどが充実している。
その一方で高難易度のダンジョンや高報酬の依頼はほとんど出回らないため、十分に実力のついた冒険者は報酬や難易度のより高い依頼やダンジョンを求めてアルクターレを離れて王都近くの都市へ移動するらしい。
「アルト=ヨルターン。11歳。ヌレタ村出身。冒険者になるためアルクターレへ来ました。趣味は読書で特技は読み書き算盤。尊敬する人は両親で、好きな言葉は雨垂れ石を穿つ。黒い髪と瞳がチャームポイントです!」
「うんうん、丁寧にありがとう。別にそこまでは聞いてないけどな?」
前述のようにこの都市には辺境の村出身で身分証明書すら持たない人間も訪れるため、都市に入る際の検問は非常に緩くよほど大きな犯罪歴でもない限り誰でも入れてくれるようだった。
自分の名前と年齢、出身地、アルクターレへ来た理由などの開示と、犯罪歴を確認できる魔道具による簡単な検査のみでアルクターレへ入ることを許可された。因みに、犯罪歴のあるなしは航空機に乗るときの金属探知ゲートのような魔道具で判定した。犯罪歴のないものはそのゲートを通っても何も起こらないが、犯罪歴のあるものがそのゲートを通るとゲートはその犯罪の規模の大きさによって色が変化するとのことだ。
勿論、俺が通ったときには特に何も起こらなかったが。
先程アルクターレは駆け出しの冒険者が多い初心者向けの街であると言ったが、街の中を見渡すとそれを裏付けるように俺と同じか少し年上くらいの冒険者の姿を数組確認することができた。
アルクターレの住民も駆け出しの冒険者達を暖かく見守っているようで、中には冒険者への支援として無料で食料を配っている人もいるらしい。俺も実際に、検問を抜ける際に門番のおじさんや検問官のお兄さんにはこれから頑張れよと声を掛けてもらった。
以上のように、依頼やダンジョンの難易度から都市の人の雰囲気に至るまで、アルクターレという都市は冒険者を目指す者にとっては打って付けの場所であることが分かる。
うん、やっぱり良いところだなぁ。
「——おい、聞いてんのか、テメェ!!」
「さっさと、金を出せって言ってるんだヨ!」
アルクターレへと足を踏み入れてから実に5分。人の目につかない路地裏でチンピラ2人組にカツアゲをされながら、俺はしみじみとそう思った。
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