第7話 謎解きは肉体言語で解ける
わたし、マリア。
今、三十階にいるの。
もう疲れた……。
あと三十階もあるなんて、嫌になってくるわ。
「このクイズに正解す……げへな」
うーん、また、クイズとかないと思うのよ。
クイズとか言ってきたフクロウみたいな頭の魔物の無防備なお腹に低い位置から、レバーブローを決めると妙な呻き声を上げて、屈んだ。
跳躍して、その頭に踵落としを叩き込むとクイズマン(クイズを出してくるのをそう名付けることにしたわ)は床に頭を突っ込んだ妙な体勢のまま、動かなくなる。
ちょっと亀裂が入ったくらいだから、これくらいの破損はいいよね?
「わたしの手にかかれば、楽勝じゃない?」
ここまで降りてくる間に何度か、クイズマンが現れてるんだけど、この方法で解決出来たのよね。
要は相手を屈服させればいいのよ。
つまり、手段は問わないってことでしょ?
どんどん現れたらいいのよ、その度に叩き潰せばいいだけよね。
そんな風に思っていたわたしの考えがいかに甘かったのか、思い知らされたわ。
二十九階に足を踏み入れたわたしの前に立ちはだかったのはそもそもが言葉すら通じないような相手だった。
「これ、絶対バランスおかしいよね」
通路を塞いでいるのはちょっと目にも痛い半透明な紫色の物体。
名前を付けるとしたら、何だろ?
ライトヴァイオレットスライムかなぁ。
これ、どうやって通れっていうの?
言葉が通じると思えないけど「どいて」と言ってはみたもののピクリとも動かないし。
「あぁー、もうっ、面倒くさいわ!」
そう、わたしはとりあえず、考えるよりも先に拳が出ちゃうのだ。
先祖伝来の篭手に魔力を漲らせ、目の前の紫色の物体にストレートパンチを繰り出しちゃった。
バチャンっていう妙な音がして、スライムは文字通り、弾け散った。
紫色の液体を大量に残してね。
「うわぁ、何、これ……べたべたする」
最悪だよ、紫色の液体をもろにかぶっちゃった。
べたべたするし、おまけに何か、甘ったるい香りがするんだよね。
気になる……ちょっと舐めてみた。
「グレープ味じゃない……」
葡萄の味がするスライムとか、聞いたことない。
でも、これはグレープジュースの味で間違いないよ。
果汁百パーセントのちょっと高いやつかもしれないわ。
わたしは不思議な魔物に首を捻りながらもその場を後にした。
だけど、これは不思議な現象の幕開けに過ぎなかったのだ。
「今度はオレンジ色って……まさか?」
うん、そのまさかだったのよ。
今度はオレンジジュースとはね。
どうなってるのよ、このダンジョン!
責任者出てきなさいよ!!
あっ、責任者はわたしだった……。
アップルジュースにピーチジュースと降りていくごとに新しい味に出会える喜び!
って、喜んでないわ。
こうもずっとジュースばかりだといい加減飽きてくるし、おまけにこの蟻が寄ってきそうなくらい甘ったるい香りがする私自身にイライラがMAXなの。
「し、白い!? 嫌な予感するんだけど」
そして、二十階で出会ったのは真っ白なスライム。
嫌な予感は当たっちゃうのよね。
まさかの牛乳を頭からかぶってしまうの図。
最悪なんですけど。
早くシャワー浴びないと臭いじゃない、これ。
まだ、二十階なのよ?
すぐにでもシャワー浴びて、服を脱ぎたいわたしのそこからの動きは早かった。
再び現れたクイズマンが一言も発しないうちにサンドバッグ代わりに叩き潰したのは言うまでもない。
だいたい、上から降りてきているんだから、どんどん弱いのが出てくる訳で。
そりゃ、攻略スピードも上がるよね。
「や、やっと着いたぁ」
「おや、姫さま、遅かったですね」
わたしがようやく一階のエントランスホールに到着するとそこには優雅にアフタヌーンティーを楽しむアンソニーの姿があった。
「はぁぁぁ!? アンソニーが何でいるのよ?」
アンソニーはわたしの指摘に一切、慌てることなく、一点を指差してる。
その先にあるのは…魔力を使って、自由に階層を行き来する昇降機だった。
「そういうことは先に言いなさいよぉぉぉぉ!」
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