第8話  暗澹(あんたん)たる春雨の渦中で。

いまいち、乗り切らない春がはじまろうとしていた。

育て上げてきた複数学年との度重なる連続的な別れはまだしも、新たに引き受けた学年も、総じてそこまでの高い目標を掲げる生徒も軒並みおらず。その前に、そもそも、全体的にクラス人数が極めて最少人数に近いという現状。

これまで、確かにそのような境遇は何度となく、経験してきたが、それにしても、今年は去年までの充実度に比べたらあまりにもその差が激しかった。

去年の今頃は、緊急事態宣言により、学校が休校となり、実際に授業がはじまったのは、三月も半ば。それも、ズームという映像授業による試みで。

そんな中でも、活気あるメンバー(生徒)がいたのは、唯一の心の救いだった。

さて、このような状態で、いったい、乾橘の心にエンジンがかかるのはいったい、いつになるのだろうか。

ベテランの域に達しているとはいえどもまだ全然、不安真っ只中という春雨の渦中に乾橘は静かにたたずむ。

あるいは、大規模なフリーエージェント宣言が起こすのか。

まだ、状況が不透明な混沌はしばらく、続くような様相を呈している。

そして、この時期のキナ臭さが社風といえば、社風だった。

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