第5話 ドンマイ
「何あれ…すっごい美人…」
「俺の目が変なのかな…あの人の周りだけ花が咲いてるように見える…」
「花って言うか、もう俺らと作画が違うだろ、つか出てる漫画のジャンルが違う感じがする…まぁ俺ら文字だけど、」
「転校生が、美少女眼鏡ちゃんって…どこのギャルゲだ?」
「俺が主人公なラノベキタコレ!」
午前8時30分、ホームルームの時間帯
美鈴三玲子は冷や汗をかいていた。
先生に言われた通り、転校生らしく登場をしたは良い物の、周りからの視線に慣れない。
いや、正直こう言う視線を掻い潜って来たつもりだったし、実際慣れたもんだと高を括っていた。
だがその視線を掻い潜って来たのはあくまで"泉 玲子"であって"美鈴三玲子"じゃない。この両名は彼女にとって同じ物では無いのだ。だから失敗した。
「み、み、美鈴三玲子です、よ、よろしくお願いします…」
思ったより緊張してる。よく喋れてない。
いつもならニッコリ笑いながら挨拶出来るのに何故か無理っぽい、
というより、周りの視線もいつもに増して怖い…
いつもの視線より距離の差がひどく近いのだ。誰もが彼女を狙っている狩人、それが現状であり非常にも彼女の状況を悪化させる原因であった、
今や虎の檻に兎を放りこむそんな状況を周りの誰も否定できないだろう。
美鈴三玲子はしばらくこの質問の波に呑まれるのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「転校生、かなり可愛かったぜ!」
ホームルーム後、瞼を擦りながら隣のクラスから帰ってきた隼一の話を聞く。やはりというか彼女の出だしも大丈夫なようだ。しかし、早く起きすぎたか、まだ眠い
目の前の隼一はそんな僕を気にも止めずに話し続けている。朝から元気だなぁ、本当にもう少し音のボリュームを下げても誰も文句は言うまいよ、頭がガンガンするんよ。
「なんだよ和泉、転校生に興味ないのか?」
「いや、今朝早くに起きてさ、眠いだよ。まぁ別に遅く寝たって訳じゃないんだが、」
「お前の早くって5、6時くらいだろ?いつも自堕落な生活してるからそうなるんだよ」
なんて小言挟まれながら、耳を傾ける。耳が痛い。
そんな事を話しているとふと、隼一がニヤニヤしながらこちらを見る。
「しかしまぁ、和泉くんよぉ、」
「なんだよ?」
「お前美少女って言葉に反応しないとは、さては枯れてるな?」
「なわけ、」
「もしくはそっちの気が?」
「ねーよ、だが安心しろ、あったとしてもお前に欲情はしねーよ、」
何気ない会話を楽しみながら横目にふと、春野さんを見る。
今朝、玲子と僕の関係を彼女に勘違いさせたまま放置してしまった。故か、春野さんはなんとなくぽけーっと阿保面さらしながら心ここに在らずという状況だ。
なんか悪いことしちゃった気がする。
するとケータイのバイブレイションがポケットに響く。
「ん、メールか?」
隼一は気づいたように呟いた。
「ああ、多分アイツからだ…」
「アイツ?」
「…まぁ、友達?」
そう言いながらアプリを開く。
『無理』
そう一言だけ書かれたメール、差出人はやはりというか玲子だった。
うん、察した。
まぁ転校生だもんね、美少女だもんね、仕方ないよね、
『お察しします。』
そう一言添えて『HAHAドンマイ☆』と書かれたスタンプを押した。
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