第4話 道も未智も変わらん。
今日は玲子と学校に登校する為に早めに家を出た。
この時間帯、朝部活の連中か物好きしか居ない、しかも朝部活は大体離れの校庭に居るだろうから実質校舎に行っているのは僕達だけだろう。
「しかし、誰もいないこの時間帯に学校に行くのも、なんだか変な気分だな」
そう呟く、別段これから毎日玲子と一緒にに学校に行くつもりはない。今日に関しては玲子が家から学校への道筋を知らないから今日だけ一緒に行っているだけだ。もしこいつと一緒の状況を誰かに見られでもしたら胃が死ぬ可能性がある。
あ〜、きりきりする。
「そうなの?お寝坊さんなんだね。」
「何その可愛い言い方。あと僕は別に遅刻はしないから良いの、…まぁ、昨日遅刻しかけたけど」
「ダメじゃん」
ぐうの音も出ないとはこの事か、
いつもより重たい瞼をこしらえながら空を仰ぐ、
しばらく歩くと
校舎が見えて来る。
いつもは賑やかな校舎もこの時間帯は静かな様だ。
「そういえば、玲子。元女優だってバレたらヤバくない?」
ふと、僕は頭の中で過った事を言う。
「へ?…あー、たしかにそうかもね〜、」
なんて口元に指を刺しながら思い出した様に彼女は呟いた。どうやらそんなに気にしていないらしい。
「でも、そんな事どうにでもなるよ?」
「いや、君は自分の有名さを考えなよ、はぁ、仕方ないなぁ、」
そう言いながらカバンに手を入れる。少し前に買ったアレがあるはずだ。
たしか…ここら辺にあったような…あ、あったあった。
「ほれ、」
僕は彼女に向かって、袋を渡した。
「何…?これ」
彼女は不思議そうに袋を開いた。
「伊達メガネだよ。少し前に文化祭で女装カフェをやるんで買ったんだが、良く考えたら僕ウェイトレスじゃなかったから必要なかったんだよね。あげるよ、」
「ほぉーー、和泉くんの女装かぁ、興味ありますねぇ、」
「いや、僕あまり似合わない自信あるよ?」
「ううん、和泉くんって意外と線細いから結構美人になると思うよ!」
「はは、お世辞でも嬉しいよ…」
☆ーー☆ーー☆ーー
はぁ…。
とぼとぼと学校に向かう。
「はぁ…、死にたい…」
私の推しが居なくなってしまった…
ちにたい…
ため息を吐きながらそう呟く。その姿はきっとクラスのマドンナと言い難い姿だろう。それそうだ私はマドンナなんかになりたくなかった…
文武両道、品行方正、まさに完璧美少女の鑑である私。春野花代は常にある衝動に駆られていた。
愛したい!愛したいという心!
母親曰く、私はオタクである。
部屋のほとんどが好きなアニメのフィギュアの山に囲まれて、ラノベ漫画ブルーレイボックスサウンドトラックまで全て買い揃え、オタクと呼ばれるのにこれ以上無い程の愉悦感を感じる。
真のオタクである。
そんな二次元オタクである私が初めて愛した三次元…それが女優、"泉 玲子"だった。
ルックス然り、声然り、演技力然り、全てが宝石の様に輝いて、誰もを魅了する。ああ、れーたんは我の嫁っ!愛してる!
しかし、先日、
『私、泉 玲子は芸能界を引退します!』
テレビに流れてきたそんな声が私を深淵に落とした。
そのショックで昨日一日寝込んだのは仕方ないよね…
あ〜あ、リアルでの生き甲斐をなくした…
二次元に行きたい…
推しがいる二次元に行きたい…というかその世界で生きたい、すーたんによしよしされたい。かーくんに膝枕してもらいたい…
神よっ!!私を三次元に留まらせたくば、れーたんに会わせろ。後、あの綺麗な髪によしよしさせろ!
そんな事を思いながら校門にたどり着く。
また、お世話が飛び交う学校生活の始まりだぁ、
「…ん、」
ふと見ると制服を着た男女が二人立ち話をしていた。
よく見ると一人は隣の席の大月和泉くんだと言う事がわかる。目が前髪に隠れていて一見地味に見えるけど、中々女っぽい顔つきをしている。まぁイケメンかと言われれば普通の域を出ないのだけど、美形らしいのは確か。
オタク友達の霞くんと仲良い子だ。
後一人…誰…?
たしかにこの学校の制服を着込んでいる。メガネを掛けているがどう見たって美少女だ。メガネ美女…?…推せる!
「おはよう!大月くん、」
私は大月くんの背中から、顔を出す様に話しかける。すると例の女の子と目があった。あ、この娘、正面から見ると一段とすっごく可愛い。ペロペロしてペットにしたい。
「あ、春野さん、おはよう。」
気づいくと大月くんはこちらを横目に見ていた。早速聞いてみようかな、
「この子どなたかな?初めて見る気がするんだけど、」
「ん、ああ、この子か…
この子は美鈴三玲子、僕の親の友達の子なんだ。今日から転校してくるらしくて、道案内も含めて一緒にきてたんだ。」
そう紹介する大月くん、美鈴三玲子ちゃん…みーたんか、推せるな!
「そうなんだ〜、こんにちは私は大月くんのクラスメイトの春野花代って言います。よろしく」
「そうなんですか、初めまして、美鈴三玲子です。夫がお世話になっています。これからは夫婦ともども宜しくお願いします。」
「いえい………え、?」
夫…?誰が?夫?
あ、乙戸の間違えかな?
…いや、完全に夫だったし…
しかも夫婦って言ってたし…
「お、夫…?夫…オットセイ?
夫婦…ふーーふ?」
「ちょ、その言い方は勘違いするよ!」
「勘違いじゃないよ?事実だよ?」
「僕が了解してなかったら!事実じゃないんだよ!」
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