視線

花宮優

視線

バイトからの帰り道、学校からの帰り道、職場からの帰り道。

それぞれの帰り道が交差する夜7時の街中にわたしは今日も生きていた。


ふと今日の自分の過ちや、後悔、羞恥心、反省、そんなものが頭の中でグルグルとして、気がついたらわたしの足は歩くのをやめていた。

そのまましばらくボーッとして心を整理すればいいのに、向いから歩いてくる通行人の視線が目に、頭に、心に、刺さる。

立ち止まることを咎められているようで、足を前に動かさざるを得なかった。


これがわたしの毎日だ。

人の行き交う夜7時、視線の重みに耐えることができず、立ち止まることさえできないほど臆病だ。

ただのどこにでもある平坦な道なのに、すれ違ってももう二度と会わないであろう人達なのに、立ち尽くすことさえできない自分の無力さにただただ、涙が流れた。

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視線 花宮優 @hana_yuu

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