第20話 雪菜に会いに行く
興信所に依頼して2週間が過ぎた。
九条家から連絡が来た。
結菜も光寿郎も俺も、婆ちゃんちに
集まった。
ドキドキを押さえきれない俺は
約束時間より二時間も、早く来た。
なぜ結菜と光寿郎も一緒か?分か
らない。
野次馬的なものだろうか?。
婆ちゃんが貫禄満杯で入って来る…
後ろから山根さんもついて来る…
みんなご苦労様。
「山根 」と、一言声をかけると
山根さんは大夢の前にA4サイズの
紙袋を差し出した。
少し戸惑いながら中を見ると
ケーキ店で働く雪菜、
以前よりずっと細くなり
可愛い雪菜の写真は、この前会社
の前にいた雪菜だった。
大夢は写真を見ながら
目が♡♡♡に、なっている。
誰も見ていなかったらA4サイズの
雪菜に、チュッチュッチュッと
やってるはずだ。
唇が無意識に、とんがってる。
彼女の二週間のスケージュールが
事細かに調べてあった。
ケーキ店が終わると直ぐカフェに
出勤していた。
休みは殆ど取らなく真面目で評判も
いいらしかった。
場所を見ると、長崎?
その言葉に光寿郎と結菜2人は顔を
上げた。
二人が覗き込んで見た写真の人物は‥
光寿郎が顔をしかめて
「うそだろう~」と叫ぶと
結菜も、「えーっ」と叫んでいた。
婆ちゃんは意味不明な顔をしたが
俺たちと雪菜は知り合いだと説明し
た。結菜と光寿郎の話に良く出てく
るユッキーが雪菜だと大夢は今頃知った。
そこにいた全員が溜め息をついた。
「なにやってんだよぉ。」
全員がガクリとしている。
探して探していた雪菜は
こんなに近くにいた。
「さて、どうするかい?
あの娘は本当にいい娘だったよ。
大夢も孫と変わらないから
変な娘なら報告はしないつもりで
長崎のケーキ店に行ってみた。
お金を忘れたと言ってみたんだよ‥」
‥
「ごめんなさい。財布落としたみた
いで知り合いが持ってくるから
それまで待ってもらえません?」
「ハイハイ。大丈夫ですよ。」
「今、もちあわせが‥なくて夕方ぐらい
ですけど‥。」
困った顔をした店長はどうしたもんか
と考えていた。
すると横から
「店長、長崎を楽しんでらっしゃる
のだ か ら、いいじゃないですか?
折角の旅行なんですもの。
わかりました。
私が出し代えます。」
そう言った。
ネームプレートを見て雪菜と確信した。
「ちょっと待ってて下さい。」
そう言ってバタバタと店の奥に
入って行った。
レジで会計を済ませコッソリ
「失礼ですがお連れがこられるまで
これ使って下さい。
今これしかなくて‥」
五千円を椿に手渡した。
「長崎楽しんで下さいね。凄く
良いところで私も大好きな
町なんです。」
「あ、あ、有り難う。」
山根も感心したそうで
「奥様がお世話になりました。」
そう言って10万渡して来たそうだ。
雪菜はビックリしてアワアワしてた
そうで
追いかけて返しに来たけど
「奥様に恥をかかせないでください。」
と一括したら
「ビビりながら、有り難う御座
います。」
と受け取ったらしい。
「私はいい娘だと思うょ。九州男子
に もってかれちゃうよ。
いいのかい?」
「えっ、九州男子?」
「そうだよ。けっこうモテるんだか
ら早くしないと。」
「だけど‥オレ‥
酷い事言ったんだ。」
そうだ、雪菜の全身を
凍らせた。冷たく吐いた一言、
雪菜の心は
あの一言で決まったんだろう。
折角ついた事務職を辞め、住み
慣れた土地を離れたんだ。
「本心じゃないんだろう。
間違いは誰にもある。しっかり
謝るんだね、大夢が言った事は確か
にショックだろうが
‥彼女次第だ!何もしないより
いいんじゃないか?」
大夢はまだ決心がつかないよう
だったが取りあえず居場所がわかり
安堵したようだった。
光寿郎は
「良く考えたらいい。俺だったら
結菜が他の男にもって行かれたら
気が狂うぞ!!。」
♡♡「モウッ、光寿郎♡!」♡♡
結菜はホッペを赤くして
二人はイチャイチャ、
「やれやれ、早く曾孫の 顔みせて
おくれ。もう決まりだろ!!
早く結納しなきゃね。
大夢も‥頑張ってみな!」
大夢は、静かに頭を下げて、A4の
封筒を抱いて九条家を出た。
「よっ!!色男!! どした‥?」
何時ものように、からかい気味に話し
かけてくる警備のおじさんに、
「彼女に謝るには、どうしたら‥。」
と、ボウーッとしながら聞いた。
おじさんは、
「頭擦り付けて赤くなるまで
やり続けろ、情のある女なら大抵
許してくれるぞ、ただし!! 本気でやれ。」
そうか‼‼
俺は、「本気でやる!! 」
と宣言してから門を出た。
おじさんもまともな事も言うもんだ、
と感心した。
あれはきっと経験者だ。
会社には九条家から圧をかけておく
から心配するなと言われ甘える事
にした。
権力とは、凄いと実感した。
急いで飛行機の予約を取る。
平日なので、運良く航空券をとれた。
九条家の運営するホテルに
婆ちゃんが予約してあるからと
連絡をくれた。
俺はここまでは決まり事のように
テキパキと動けた。
空港についた。
もう一時間も座ったままだ。
どうしたらいい?どうすればいい?
勇気が出ない。
そんな疑問が降りかかり動けずに
いた。
何時も俺の足を止めるのはあの時の、
腹立ち間際に言った
"消えてくれるよな!!"
本気じゃない。
本気な訳がない。
まさか雪菜が本気で消えるなんて
考えなかった。
はあ~つ魂が飛ぶような深いため
息をつく。
するとカップルの言い争う声がした。
「本気なわけねーだろ、何で帰るんだよ!」
「あんたが、あの女と浮気したから
じゃん、見たし
肩くんで私の前わざと仲よく歩いて
たし!! 見たし‼」
「あれは、お前が憎たらしかった
からだよ! 本気で好きなのは
お前!!」
バッチ~ンとハエを真剣に狙い
ブッ叩いたような音が響
女の子はキヤリーバックをもっ
て歩き出した。
「あ!! やらかしたな。」
俺は呆然と立ち尽くす男に
近寄り言った。
「本気なら本気を見せないと!彼女
違う男のモノになるぞ!! 」
と言ってやった。
「どおした‥ら!」
「頭擦り付けて、赤くなる程やれ。」
おじさんから聞いた崖っぷちの
すがりざまを
彼にも、おすそ分けをした。
彼は彼女の元に走り土下座して頭
を擦り付けた!
「好きだ陽菜、ごめん陽菜お前しか
いない、 お前が帰るなら俺は
このまま、
あの世にいく
今生の別れになるぞ。
それでも帰るならそれでいい。
ただ 本気で愛してる、
忘れないでくれ。お前だけ
愛してる。」
「ゲッ!! まじか!!」
俺は立ち止まって野次馬の中にいた。
そこまで本気でやるとは思わ
なかった。みた感じ、彼は本気
だった・・・!!
誰がみても本気が分かる。彼女は、
ボロボロ泣きながら
「モウッ、遅いよ!」
そう言ったが、しばらくして冷たい
視線を彼に投げ... 言った。
「じゃあ、結婚して!!じゃなきゃ
このまま帰る。」
彼はあわててポケットから小さな
箱を出し
「こんなオレですが、お前しかい
ない、 嫁さんになってください。
本気で、愛して る。」
とプロポーズをした。
あまりの騒ぎに益々野次馬が集まって
いたが彼女の号泣の「ばい」
ウワーンウワーンと泣きながらの
返事を聞いたとき回りから
拍手喝采が湧き上がった。
彼は赤くなったおでこをハンカチ
で撫でながら、恥ずかしそうに回り
の人達にペコペコ
頭を下げていた。
空港のエスカレーターの前で
追いかけて来た彼に御礼を言われた。
「いや、他人事じゃないんだ、俺も
彼女を連れ戻しに来た。
有り難う!君に元気をもらった。
今度は俺が頑張るよ。」
彼は「本気は伝わります。
頑張って下さい。」
お互い名刺交換をして別れた。
そうだ俺に足りなかったのは
本気の本気だ。
強く決心し雪菜のいるケ⌒キ店へ
向かった。
いらっしゃいませ。
明るい声で出迎えてくれる。
硝子窓が大きく開いて、オランダを
思わせるような作りだ。
入り口にはコルチカムやコスモスの
秋の花と
夏の名残の花が沢山植え込んである。
長崎は異国情緒があり不思議と
落ち着く町だ。
「すみません。
櫻井雪菜はいますか?」
「ああ、ユツキーなら今帰りました
よ。多分カフェに行ったと思い
ます。」
白いコック服を来たふくよかな40歳
ぐらいの男性が教えてくれた。
カフェへの道を教えて貰い直ぐ追いかけた。
店から何人かのスタッフが何事かと首を出し覗いていた。
今ならまだそこらにいるはず。
俺は声をあげて叫んだ。
「雪菜!! 雪菜!! ゆきーなぁ!!」
向こうで、ひとりの女の子が唖然と
して立ち尽くしていた。
「だ、大夢?」
か細い声、だが大夢にはききとれた。
俺は息を切らし雪菜の元まで走り
しつかりと抱きしめた。
シナモンの香りとバニラ、エッセンス
の甘い香りが染み付いた身体は
細くて、柔らかくて、愛らしい
雪菜だった。
「だい、大夢どうしたの?なにして
るの?」
ポカーンとしてる雪菜に
「ゴメン!あの時の言葉は、
本気なんかじや無い‼、別れたく
ない!
俺を見捨てないでくれ
雪菜、お願いだ。」
「ええーつ、逆玉は?‥何で?
大夢の夢叶うじゃん。
何言ってるか分かんない。」
「違う!違うよ。俺は雪菜が側に
いて光寿郎と仕事がしたいんだ、
雪菜がいないと
何も出来ない馬鹿なんだ。
バカなんだよ。」
大夢は、ガタッと崩れ落ち土下座
した。
「頼む!何度でも謝るよ、帰って来
てくれ 愛してる。」
頭をこすりつけて謝った。
「oh -Japanese、土下座」
「oh -Oh -」
外国人また外国人の山になった。
I am proposing to her right now,
please support me if
you think I'm poor,
(今彼女にプロポーズしています。
俺が可哀想なら応援してくれ)
そう言ってまた頭を擦り付けた。
恥は掻き捨てそんな言葉もある。
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