第17話 叶わない想い。

その週末また会長に呼ばれた。

夜6時勿論社長経由で。

今宵は、俺1人呼ばれている。

俺は、考えた挙げ句、光寿郎の婆

ちゃんに相談した。

大門隆司に対抗出来るのは

九条財閥会長!九条 椿しかいない

と思った。


婆ちゃんは光寿郎と付き合い始めた

16歳から知っている。

会社を巻き込む騒動になるまえに

納めたい。


光寿郎に電話して、婆ちゃんと

合わせてもらう。

久し振りに九条家の門の前にたつ

警備のおじさんとも顔見知りだ。


「おう、色男、元気だったか?。」



筋肉もりもりの彼は65歳

まだまだ九条家の警備は余裕のよ

うだ。


「聞いたぞ、大門に婿養子に行くん

だってな‼このぉ~色男め!! 」


「へ!! 行きませんよ。誰ですか?

嘘ばらまく奴(怒)」


「おや! そうなのか?なーんだ

つまらん。」

丸棒素に剃った髪をジャラジャラ

なでながら残念そうに言った。


中に通され光寿郎が出迎える。


婆ちゃんの部屋には会長らしく

日本髪をキチンと結い上げ、

ピシッと落ち着きのある、

辛子色の着物とグリーンの帯の

婆ちゃんがいた。


婆ちゃんは、話を光寿郎から聞い

ていたらしく、



「隆司はね、自分に従う奴には

割と物わかりがいい。

しかし敵とみなしたら消し去る間で

やる奴だよ。

厄介な奴に見初められたねぇ。

奴の手を見破るなら、

自分だったらどうやってモノに

するかを考えるんだよ。



例えば。

光寿郎ならどうする?

結菜を手に入れるには?どうし

た い?」



「相手の本命の人物を切り離した

後は、そうだな

もう、既成事実を作るしかないな…

手っ取り早い。

ベロンベロンに飲ませるか、

睡眠薬つかうかかな。」


「一度、関係持てば、後は簡単だ。

脅す か妊娠して、責任取らせる。」


私も結菜が手に入らないなら

光寿郎に手を貸すと思う。

あんないい娘は見た事ないよ。


「婆ちゃん、」

光寿郎が声をあげて

「結菜レベルのいい子がいたんだ。

いやいや結菜の次くらいかな。」


「ホホウ、何処にだい?」

椿は以外に驚いて聞いた

光寿郎は笑いながら答える


       「長崎。」


「結菜が婆ちゃんに

合わせたいってさ。」


「へえ!長崎か、

大夢の事が片付いたら行って

見ようかねえ、結菜誘って

こりゃ楽しみだ‼」



婆ちゃんは、


「山根、あれを持っておいで。」


山根と呼ばれる体格のいい女性は

なぜか、ニンマリとして部屋に入って

来た。


「ふふふっ、まじか。」


光寿郎は包みを見て薄ら笑いを

浮かべた。



「プレゼントだよ。開けてみなよ。」


クスクス、クスクス笑う

婆ちゃんと山根さん。

光寿郎はひっくり返って笑ってる。


包みは

「アダ?アダルトショップー?

ば、ば、婆ちゃん

なに買ったぁ、???」


       「貞操帯?」





「自分の身は自分で守れ。

 最悪の事が起きないためだ。

 多分彼女を引き離したのは、大門


 アイツなら会社脅すくらい

 電話一本ですむよ

 勿論私だってね… 

 現に結菜の支店長脅して結菜と

食事に何回も行った。」




「婆ちゃん、そこ自慢にならん。」

 光寿郎はげんなりと呟いた。


夜、別客として、クラブ美桜に

光寿郎と光寿郎の秘書他8名が来ていた。

光寿郎は、大夢にメールで



(あれ付けてきたか?)



俺は光寿郎の顔を見ながら


(おう。付けてきたけど

違和感がある)

と返信。



光寿郎がニヤニヤして回りの男達と

笑い出した。


しばらくして会長と何人かの偉そう

な男たちがやってきた。

ママがすぐ飛んできた。


その後日本髪をピシッと結い上げ

紫色の着物にグレーの帯をした

年配の女性。上等な着物を着た

貫禄満点な婆ちゃんと、

美しい着物を着た女性3人を伴って

入って来た。


九条の秘書だと直ぐ分かった。

美人で、立ち振る舞いが上品

九条グループは女性の身なり立ち

振る舞いに厳しい会社だ。


バーちゃんなりにここの

ホステスと対抗意識を見せつけに

連れて来たのだろう。

気品があり、ホステスの彼女らとは

違った雰囲気がある。


沢山の客の目が釘付けになる。

ここのホステスさんも皆綺麗で

頭もいい、だが日本美人と言う訳

もない。


しかし婆ちゃんが連れ立ってきた

女性は、凄く知的で日本美人だった。



「あら…偶然。」

光寿郎の席の10人位が立ち上がり

頭を下げた。



それを見たホステスやママは、

彼女が普通の、人物でないことを知

るだろう。


「ちょっとお話いい!久し振り。」



婆ちゃんは隆司に話しかけると



「おお、九条家の、椿様。

 久し振りじゃのうハハハ。

 まだ生きとったか!!

ホホウ、皆綺麗じゃな‼」

ハハハハハ


隆司は飲んでいた水割りを驚きつつ

テーブルに置いた。


「迎えがこないうちはまだまだ

元気ですもの。

この子達私の秘書‼」

秘書3人は綺麗な身のこなしで

頭を下げた。


「あんたこそ、へっぴり腰まだ振っ

てんの?

 元気だねえ。」


「男は死ぬまで現役じゃわい。」


「あらっ、あなた大夢じゃない!

 何してるの?」

椿は、わざとらしく大夢を見た。


「おばあ様、お久しぶりです。」

大夢も愛想良く振舞った。


「ほほう、九条家まで名前知られて

るとは凄いな山形君」


「この子は大事な預かりものなのよ。

 九条と繋がりがあるの‼。

 大門さん、大夢に何にも

手だし、しないでね。



 じゃっ


 私は孫が、財布忘れたらしくて

持って来ただけよ」


向こうに見える光寿郎に、向かって

手を上げた。



「おばあ様、ありがとう。」


わざとらしく光寿郎は財布を受け

取ると婆ちゃんに小声で


「今日やられるパターンだな。」


「釘さしておいたけど危ないね。

 逆効果だったかも。

 あれは付けてるかね?」


  「付けてるみたいだよ。」


「山形君この前の返事を聞きたい。

奈津の事をどう思っている?」 



「同僚です。友人としてはこれか

らも、仲良く行きたいと思って

おりますが


 それ以上は,…ありません。」


   「そうか‥残念じゃ。」


隆司はウーロンハイを置くと

ママに目配せをした。

「チューハイ、山形さんに!」

ママがカウンターに向かって叫ぶ。

 


婆ちゃんに連れられ九条家一同は

引き上げた。


「じゃ私達はこれで、」


「ああ…今度合うときは、結婚式

 じゃな!!」


[ホホホ、御冗談。もっとすごいとこよ。」


婆ちゃんは相手にせずサッサと切り

上げた。



しばらくすると荼津が車でやってきた。

その後泥酔した大夢が奈津に支え

られ車に乗せられていった。


車は某有名ホテルに入って行った。

奈津は凄く嬉しそうだった。


男も女もレイプにはかわりない。


30分してホテルに抗議しレイプ犯

がいると交渉するが、断られた。


仕方無く警察を呼びますと携帯を

出したら渋々了承された。

弁護士と九条家の名前をだし

鍵を受け取る。


支配人を連れ部屋に踏み込むと

全裸にされベッドに横になっていた

大夢を発見した。


イヤアアアァ、ビックリした裸の

奈津が毛布で身体を隠す。


彼が無理やり奈津を連れ込んだと

弁解するが揺すっても、

叩いても起きない。

救急車を呼び搬送されて行った。


「狭山奈津、君のしたことは犯罪

だよ。

 それに彼は貞操帯を付けている。


 君を連れ込んで何をするって言

うん だ?



 君が探していたのはコレだろう」

 光寿郎は鍵を見せた。


奈津は首を振り泣き出した。


ホテルの支配人が

「警察は直ぐ来るそうです」


そう言うと、益々声を荒げて泣いた。


あのクラブにも警察が入るだろう。

奈津は足から崩れ落ち


「大夢が大夢が悪いのよ。

 大学の時からずっと彼が

 好きだったのに。」


「お前の、わがままで80過ぎた爺

さんも警察行きだ。それに大夢、

多量の薬飲まされて危ないんだぞ、

おまえ下手すりゃ殺人犯だよ。」


「え、嘘よおおぉ そんなそんな

つもりなかったのぉ~」


奈津は起こした事の顛末を知り、

泣きじゃくった。


大夢は2日間眠りから冷めなかった。

あのままホテルに置いたままだった

ら本当に死に至ったかもしれない。




主犯は大門隆司

バーテンが薬をこぼして量を計ら

なかったらしい。

殺意はなく穏便にすますため

話し合いになった。


結局大夢が薬は自分で飲んだと

主張し事件にはならなかった。


長年仲間としてやって来た奈津を

哀れっぽく思った大夢の優しさかも

知れない。


会長は辞任し,クラブは取り

潰された。


奈津は大夢の計らいで刑事事件に

こそ、ならなかったが

何処からか情報が漏れ、


淫乱女と噂が立ち会社にいられなく

なり外国へ逃げるように移住した。



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