第10話 男のロマン


見かけの日本家屋とは違い

リビングは、

隆司が80歳の高齢とゆう事もあり

使いやすそうな家具が並んでいる。


隆司は丸いテーブルに座り毎朝

コーヒーを飲む事が唯一の楽しみに

なっていた。


田中さん、コーヒーを!

シコンノボタンの濃い紫の花が可愛

らしく沢山の花を付けていた。

高さ1メートル位の枝をはった花は

孫娘のように愛らしく見えた。


「ハイハイ旦那様。」


田中さんは隆司の気に入りの家政婦

さんだ。


隆司の好みを知り、嫌いなものも

工夫して隆司の食事を作っている。


もうすぐ田中さんも70歳が近いので

奈津に料理を教えたいが本人がやる

気ないので旦那様の元気な間は頑張

ろうと思っている。


「奈津は?」


「奈津さんは、何回告白しても

又フられたとかで、ほら去年も

同じ男性ですよ。

自棄酒を飲まれてまだ、お休みで

すよ。

夕方近くお目覚めかもしれませんね。」



隆司は新聞を読みながら


「ほほう。 奈津を振るとは骨がある男もいるんだな。」


コポコポコポ


「なんか同級生で東南西大学を首席

で出られた方とか、おっしゃってま

したよ。」


      「コトン」


静寂の中、田中さんが珈琲を

テーブルに置く音が軽く響く。


白いカップに湯気がフワフワと

浮かんでいる。

珈琲の芳しい香りがリビング一帯に

立ちこめる。



「いい男なのか?」



コーヒを手にしながら隆司が

聞いてくる。


「存じあげませんが、

かなりの男前らしいですから、

おもてになられるんでしょう。」



「奈津が大門の跡取りと、知って

おるのか? 」


「さあ?多分知られてないと思いま

すよ。」


 田中さんは着物の袖をまくり

 テーブルに隆司の朝食を並べた。


「そうか‥。」



隆司は暫く考えて



「一度合って、どんな男か見てみるか。」



そう言うと田中さんの作った工夫い

っぱいのサンドイッチを、ほうば

った。




大学首席、山形大夢26歳

アニカホールディングスグループ

課長職


「ホホウ、26歳の若僧でやって

いけるのか? 」


「はい。なかなかの手腕と聞いて

 おります。」


秘書の山倉は真面目一本でキチンと

整えられた七三の

ビジネスツーブロックの髪をかきあ

げ黒縁メガネのめつけんを人差し指で押した。


「そうか、奈津の婿に迎えたいが、

どう思う ?」


「はい。人望もあつく温厚で、

なかなかの人 物らしく宜しいかと

思ぃます。」


「ふむふむそうか。して女は

おるのか?」


「はぁ、彼女がいるようです。」


興味深く聞いていた隆司の顔が

眉間にシワをよせ


「かたを付けろ!! 


金はいくら積んでもいい 。

奈津のためなら、はした金にすぎん。

儂は、曾孫を早く見たいのだ。」


「はい。直ぐに手配致します。」

 隆司が取り乱しても山倉は

冷静沈着で姿勢を正しキチンと頭

を下げ会長室を出ていった。





雪菜がスーパーからマンションに

着くと黒塗りの高級車が滑るように

横付けされた。

不振に思っていると中から


黒縁メガネの50代位の七三で

きっちりまとめた髪をした男が

おりてきた。


「失礼ですが櫻井雪菜様で

しょうか?」



  「そうですけど・・・何か?」

少しキョドリながら答えた。


「わたくし、こう言うものです。」

 彼はポケットから名刺を差し出し、 雪菜に渡した。


 名刺を見た雪菜は驚いた。

「大門コンツエルン、会長秘書

 山倉勲」


「大門ってあの!大手企業の大門です

か?」



「はい。今日はお願いがありまして、伺いました。お付き合いいただけますか? 」



「え!!え、いや、困ります。」


「では、ここで単刀直入に申し

上ます。山形様と別れて頂きたい。

 それ相応の金額を用意致します。

 8ケタで如何でしょう?


 山形様に取っても大層なお話と

 思ぃます。」


「‥え、・・・何の事でしょうか?

 仰っていることが‥よく分かり

ません、それに私、

 彼氏をお金で売ったりしません

 一円も頂くつもりもありません


 いりません。」



「会長は大門コンツエルンの一人娘、

奈津様 に山形様をと、

望まれております。

 つまり、大門を 大夢様に、

譲りたいと 言う事です。」


「え!! あ!! ‥え!! 奈津さんって、

あの雌ラ イオン」


「は?・・・ライオンと言われました

か!?」


「いえ…その!! だ,だ大夢は、

何て言って ます?」

 震える声で聞いた。


「まだ分かりませんが、

彼の夢は企業のトップに立つ事と

伺っております。


断る理由は、無いとおもいます。


 彼にとって悪い話では無いかと

思われます

が?あなた次第で彼の人生がどう

にでもなります、最悪今の職を

失うやもしれませ んよ。」



「…どうゆう事で・・・すか?奈津さん

って、あの大夢と同じ会社の奈津

さんですか?」




「そうです。大門隆司の、孫娘、

狭山奈津様です。御理解下さい

ませ。

後日お返事を、 この名刺の番号で

お待ち致します。」

 

彼は、キチンと背を正し、頭を下

げまた車に乗り込み去っていつた。


ポツンと残された雪菜は、もらった

名刺をジッと見て大夢に何かが

起こりそうな

嫌な感じの胸騒ぎを覚えていた。



その夜、大夢は部長と銀座の

高級クラブにいた。


接待と言われ断れずノコノコ付いて

来てしまった。


ネオンがギラギラ欲望が渦巻く

世界、大夢はなんとなく苦手

だった。しかしこの世界で生きて

行くにはかけ離せ無い事を

知っていた。


遊びも仕事のうちなんだと言う

ことを。


日本髪を綺麗に結ったママが

にこやかに挨拶をする。

「ようこそいらっしやいました。」


黒い着物に散らばった桜の花が

上品に色っぽく叉貫禄もある。

黒い瞳と赤い口紅はやはり素人には

出せない艶やかさがあった。


ここの客はTVで見た顔がチラ

ホラ見えた、目が馴染んでよく

見れば、どこそこの社長クラス

ばかりだ。


ホステスも頭がキレて経済や金融、

株のうごきなどの話題にも軽く

ついて来る。


程よく薄暗くホステスも美人揃いだ。


暫くすると社長が急に立ち上がり

深々と頭を下げた。

誰か分かりもしないが俺達も

立ち上がり頭を下げ出迎える。


ホステス達も目配せをしている

相当な大物と思われる。

ママやチーママが張り付いて彼を

もてなしている。



白髪の老人だが、目はギラリと

生きている。

適度に鍛えられた身体は老人という

に失礼に当たりそうだ。


彼は柔らかな笑顔を見せながらも

目はしっかりと俺達を見据えている。


「君が山形君か?」

少し嗄れた声は、俺を威圧しながら

問いかける。


「あっ、はい申し遅れました。

山形大夢と申します。」


名刺を差し出すと彼の秘書が受け

取った。


彼は俺をジッと見て


「ふむふむ、なかなかの色男だな!

 モテるだろうな!!ハハハ堅くなら

ないでざっくばらんに話そう。」


結構気さくな人かもしれない。


彼は大門の会長で孫娘と食事に行っ

たりゴルフをしたりするらしい。

楽しそうに話てくれた。


皆がペコペコする意味が今更ながら

よくわかった。


会長も俺の事を気に入ってくれた

みたいだし、楽しいお酒が飲めた。


「今度家に来なさい。」


と言われ少し

 舞い上がってしまった。


今では九条グループと肩を並べる

企業大門コンツエルンこの人と知り

合いになればもしかしたら

光寿郎と肩を並べるだろう。


そしたらもしかして日本を回せる。

中小企業も、個人企業も収入が得れ

るように貧困層が無くなり皆が

生活水準があがるように精一杯

働ける。


俺達二人ならそれが出来るかも

知れない。

進学校で知り合った彼とは

馬が合、苦楽を共にし夢に向かって、

同じ目標を決め

ずっと一緒に歩いてきた。。


夢のような計画。

男のロマンだ。








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