第5話 きみの物語にならない

 雪待ちの人

 凍えるほどにあなたをください

 雪ほどのあなたをください

 凍え待ち人



 だめだ、このままじゃ書き終わらない。きみの物語にならない。まあそもそも主役変えたしなあ。ポジティブなんて言われたの初めてだ。珍しくネガティブなポンさんに驚いて私らしくないことをした。


 窓の外を見て驚いた。えらく静かで寒い夜だと思ったら雪だ。たしか去年は桜の上に雪が積もったんだよな。綺麗だけど怖い。凍える花。ほしいのは雪なんかじゃない。あたたかい太陽だろうに。


 学校に行ったら、まこっちゃんが踊ってた、周りの人も何人か一緒に。卒業が近づくにつれてみんなそれぞれ思い出作りをしている。


 雪がしんしんと降っている、粒ひとつひとつは軽いのに降りしきって積もって踏みかためられるとどうしてあんなに重いのか。


 本が好きだった。文字を追いかけて。字の並べかえでこんなに面白い文章になる、ひとつひとつが重なってどうしてあんなに感動する物語になるのか。


 ひとりの時間が好きだった、本を読んだりただ走ったり。誰にも気を使わずにいられる。もちろん共通の趣味を持つ友達と遊んでいたけど。寒かった冬を春風が吹き飛ばし、久しぶりに走ったあの日。ポンさんに出会った。


 それからよく2人で遊ぶようになって。はじめは私なんかといて楽しいのかと卑屈になってたけど。ポンさんの笑顔は何よりも信じられた。君を思い出すだけでどれほど心強いか、君にとって私はいったいなんなのだろう。

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