第6話 きみの物語になりたい

 Dear K

 きみの物語になりたい

 Dear story

 親愛なるきみへ



 君の物語になりたいけどなれない、この気持ちを分かってほしい。自分が言葉になって目に見えてしまうのは怖い。でも、


「ねねちゃん、そういや今月号はどうしたの?」


「ん?何が」


「同題異話SR」


「ああ、自分を主役にした……読む?」


「うぬ……ねねちゃんこれ音読していい?」


「なんでよ、絶対だめ!!」


「…きみの物語になりた」


 そこから先は口を塞がれてしまったので言えなかった。あ、キスじゃないよポテチ香る手のひらです。



 きみの物語になりたい

 青春の1ページといってもいっぱいある。だから1ページ目が青い春の出来事とは限らない。青春を本にできたら日記のような詩のような、そんな一瞬の切り取りでつぎはぎだらけの本になるんだろう。

 そんなきみの物語の1ページに私はなりたい。


 私の中にきみのページはたくさんある。私の暗闇に太陽のようにやってきた。時には月のように、時々嵐のように。大人達から言わせればまだまだこれからの人生。振り返ればたった数ページなんだろうけれど。きみからもらったたくさんの言葉がかいてある。今をいきる私の物語。

 親愛なるきみへ

 私なんかいてもいなくても同じだと思っていたけれど、きみのおかげでそうじゃないと気づけた。きみのおかげで…



 卒業式に同じ言葉を返した。2人ともぼろ泣きで、ねねちゃんのラブレターほどうまく言えなかったけど。


 きみのおかげで強くなれた。

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きみの物語になりたい 新吉 @bottiti

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