第4話 きみの物語となきたい

 珈琲は月の下で

 愛とは呼べない夜を越えたい

 珈琲は夜を越えたい

 愛とは呼べない月の下で



 ねねちゃんから謝られた。別に怒ってない。なんだか知らないうちに心の支えになっていて別れるのが辛くて。言葉にしたりお話にしたり、卒業式の日にきっとたくさん泣くだろうから。それまでに悲しい雰囲気になりたくなくて。逃げてしまった。


 遠くに行くことを決めたのは私なのに、なんて弱いんだろう。ねねちゃんは笑っていた、別に会いに行けない距離じゃないよ。それでもねねちゃんはすぐ会えるうちにたくさん会っておきたくなってって。分かってたくさん笑っている。


「ポジティブだね、ねねちゃん」


「…ポンさんの専売特許でしょそれは」


「今ちょうど品薄で」


「仕入れといてよ、買いに行くから。あ!そういやさこの前…」


 まるでねねちゃんじゃないみたいだったけど、それはまるで私のものまねみたいだったけど。私たちはくだらないことを大げさにしゃべり続けた。好きな人の話とか、恋と愛の違いとか、いつか結婚式は呼んでねとか未来の話もした。クラスの友達は余興で踊ってくれるって。突然踊り出すやつ、もうネタバレしてんじゃん。そこは知らないふりをしてよ、なんて。


 月明かりはやっぱり太陽のようにあたたかくない。それでも暗い夜を照らしてくれる。珈琲を飲んで、もう少し長く夜の中にいようとする。


 愛を写真におさめることはできない。心の中は見えないから愛のようなものを撮っているだけ。

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