第3話 始まり - 3 -


 私の生まれた村は、所在を知るものが限られている閉ざされた村だった。


 村人の多くは当時の領主に仕え諜報活動や暗殺を稼業としていたため、村そのものの存在すら知られてはならなかったのだ。

 現在は、裏舞台の仕事が大きく減り、外の世界と表向きの交流をするようになっているが、今でも諜報活動員として軍に従事したり、傭兵として他国へ出稼ぎに行ったりしている者も少なくない。

 とはいえ、多くは農業で生計を立てており、かつての村の知識は諜報活動員の訓練や薬草の栽培に役立てられている平穏な村だ。

 

 そういった環境の中、自分が祖母の言う”影”であると意識をし始めたのは村の仲間と一緒に学校に通うようになってからだった。

 成績は優秀だった。なぜなら、学校で習う武術や、地理、薬学などの学術はすでに習得していたからだ。初めて自分が他の子供と違う育てられ方をしていることに気がついた。「シアラは特別な子だから」と遊びにいれてもらえないこともあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る