第9話 リューデス村 - 4 -


「……なぁ黒髪って昔語りでは妖術が使えるとか言わねえ?」


「まじか、おい縛っておくか?」


「……子供の昔話なんて信じてる……」

 心の声が思わず漏れてしまった。


「おい!! 縛って轡はめておけっ!!!!」


 強引に紐を咬まされた。


 大体、髪の色が違うだけでどうして妖術が使えるのよ。腕をまとめられ背中でぐるぐる巻きに縛られる。目隠しは困るけど、轡なら勘弁してあげる。


「用心深い輩だな……」


「フェルデナント、大丈夫じゃなくなってきてない!!?? 妖術がどうとかって聞こえるよ!!?? 救世主って魔法とか使えちゃう設定なの??」


「魔法……? なんですか、それは?」


「不思議な力で望みを叶えるような……あーえと、炎よ燃えあがれー!!!みたいな」

 サラが言葉と同時にシアラを捉える二人に向かって手を掲げた。


「ぎゃああああぁあぁぁぁっぁあーーーーっ」


 シアラの両隣にいた二人の男達が何の前触れもなく、炎に包まれた。いや、燃える直前にサラの左手から火の玉のような何か明るい光が放たれたように見えた。


「!!??」

「炎が……燃え上って……」

「サラ、今のが魔法というものですか? ……凄い威力だ……シアラ、聞こえるか、戻れ!」


 肩を掴んでいた二人の男は火を払うのに必死で、飛び火した周囲も混乱している。背後で腕の縄を絞めている男を振り切る。フェルデナントの戻れという声が聞こえた。


「シアラ、無事か」


 ざくっ、っとフェルデナントは腕の縄を切った。轡を引きちぎり、思わずぺっと唾を吐いた。 


「私は平気、やつら意外と頑丈よ。フェルデナント、サラをお願い。レオ、行くよ」

 頷くレオと、炎に慌てふためく山賊に向かって走り出す。


「フェルデナント、私が火を……?」


 ちらりとフェルデナントを見る。震えるサラの肩にフェルデナントが手をやった。同時に、キンッと、レオが剣を交わす音がし、反射的に距離を取り服の裾から飛び道具を抜く。

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