第2話 出発 - 2 -

 城の門前で2人の兵士が馬に跨り、出発の合図を待っている。飽くまで領土内の村の定期視察を名目とするようだ。


「サラ、今日は後ろに座ってください。タンデム用の鞍を用意しました」

 茶色い髪にフードを被ったサラが、わーいとはしゃぎながらフェルデナントの馬によじ登ろうとしている。


「カヴァリヤ国が持っている本が予言書なら、未来が書いてあるってことでしょ? 一番役に立つんじゃないの?」

 サラはフェルデナントの肩越しに尋ねる。


「そうとも限りませんよ、現在の情報は他国との交渉において最も有益だ。それにエクレール国は歴史書に記載されている過去の遺物で先の戦争を優位に運びました」


 フェルデナントはサラのフードを直しながら、遠慮がちだったサラの腕を自身の腹のベルトをしっかり掴むように導いた。

 サラの顔が自然と背中に預けたように横向きになる。


「……フェルデナント、ちょっと救世主様を大事にしすぎじゃない? 逆に怪しい」

「あー、そうですね、すみません。髪の色を隠しているのならフードは取ってしまったほうが良いかもしれませんね」

 茶色い髪なら救世主だと疑われずに済む。


「シアラは馬に乗れるの?」

 サラはフードで乱れた髪を直しながら聞いてきた。


「はい。私は後ろから付いていきます。城を出るとすぐに森に入るから、そこからは駆けます」


 森の中の馬は移動にかなり制限がかかる。そして、視野が利かないから、もし不穏な輩がいたとしたら彼らにとって監視や奇襲にはもってこいだ。だからこそ、カヴァリヤ敷地内とは言え上位の視点で周りに注意を払う必要がある。


「凄い! カッコいい! 木の上を走るんでしょ? 見たかったなぁ……」

「シアラは凄いですよ、壁も走れます」

「ほんとに!?」

 目をキラキラと輝かせるサラ。フェルデナントはとても楽しそうだ。


「フェルデナントなんて、剣でりんごの皮をむけるんですよ。こちらのほうが実用的です」

「その長い剣で!? ほんとにフェルデナント!!??」

 すごーーいとはしゃぐ救世主様を尻目に、私は自分の黒髪を覆うように丁寧に布を頭に巻く。フェルデナントは帰ったら試してみましょう、と適当なことを言っている。


「サラ様」


 たわいもない話をしているところに、カイが城から出てきた。


 

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