第7話 リューデス村 - 2 -
村までの道中は半ばを過ぎ、間もなくすると日も落ちる。このまま森の中の乗馬を楽しみながら安穏な時間を過ごすだろうと全員が思っていた。しかし、森の中を駆けながら遠くから嫌な気配を感じ取り、木に登り風の匂いを捉える。
「これは……この匂いは……」
変わりなく続く木々を通して漂う違和感。
「隊長!!!!」
先を行く一人の兵士が声を張り上げた。
「村が……燃えています……」
森の先から一本の黒い煙が立ち上がっていた。焼ける匂い、人口的な匂い。
フェルデナントの馬はその場で止まり、私も木の上から地面へ飛び降りる。
「少し先に高台があり、そこから煙が見えました。方角からして……間違いないでしょう」
先ほど声をあげた兵士が、緊張に強張った顔をして言った。
「そうか。報告助かった。俺は村を見に行くから、サラを連れて城へ引き返せ」
「私も行く」
サラはそう言われると分かっていたかのように、フェルデナントを遮った。
「サラ、状況は変わった。城へ御戻りください」
「私、仮にもこの国の救世主なんでしょ? この国で起こったことを見たい」
当たり前だと言わんばかりの、澱みない真っ直ぐな言葉と声でサラは言った。その思いがけない気迫にフェルデナントも口を閉ざしている。サラも引き下がるつもりはないだろう。
ただの火事ではないことをフェルデナントは気付いているだろうが、あえて口を開いた。
「フェルデナント、この煙はただの火事ではない。故意に火をつけた、いえ、もっと悪質な匂いがする」
火薬という薬の一種の匂いだ。戦争で使われた時、村の大人が持ち帰って一度だけ嗅いだ事がある。
「……ラルスは城へ戻り後援を要請しろ。シアラは村の様子を見てきてくれ」
「フェルデナント!」
「サラ。サラは俺の前に移って、なるべく身をかがめて」
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