第3話

 美羽が部屋から飛び出して出ていき、佐奈はどうしたらいいのか分からず部屋で狼狽うろたえていた。


 とりあえず下に降りようと自室から出て、恐る恐る階段を降りていると、階段下で洗濯物が入ったカゴを持って歩いていた母親が佐奈に気付き、怪訝けげんな顔で佐奈を見上げ、


 「あんた、へんな降り方して何してるの」


 いつもなら「別に…」と答える佐奈だが、今はそんな状況ではなかった。

 母の顔を見ずに、階段上から廊下の向こう側を覗きながら、


 「み、美羽ちゃんは、リビングにいる?」


 すると、母は納得したような顔をした後、みるみる鬼の顔に変化していき、


 「だーかーらーねー。あんた!美羽ちゃんを泣かせたわね?階段から降りるや否や、そのまま玄関から出て行ったわよ」


 何と美羽ちゃんは、そのまま家から飛び出たようだ。

 何でこんな事態になってしまったのか本当に分からずに階段に腰を下ろして頭を抱えだす佐奈。


 娘の心理状態などお構いなしに母は、佐奈に近づく。


 「座り込んでないで迎えに行ってきてあげな!美羽ちゃんが迷子になったり、誘拐されたら大変でしょ!」


 母に、腕を引っ張られながら玄関から追い出される形で外に出る。

 外はせみのうるさい鳴き声が鳴り響き、立っているだけで首筋から汗が垂れ出すほどの猛暑だ。

 

これだから夏は嫌いだ、と佐奈は太陽の日差しをてのひらで遮りながら、太陽を見上げる。


 さて、どこに行ったんだろう…と探す前に、自動販売機でお茶を買いに行く佐奈だった。



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