第4話

 ゾンビのように両手をブラブラとさせながら、熱くなったアスファルト上を歩く佐奈。

 数メートル先に白いボックスの自動販売機を確認すると、若干早歩きになりながら近づく。


 白い自動販売機の前に来ると、ショートパンツのサイドに付いてるポケットに右手を突っ込み、硬貨らしき物を掴んでポケットから手を出すと、一枚の硬貨が佐奈の手から逃げるように飛び出す。

 空中に飛び出た茶色の硬貨を左手で掴もうとするも空振って、そのままアスファルトの上に落ちる。


 チャリーン!


 心地いい金属音を鳴らして一回バウンドし、コロコロと前へと動き出す。


 「ちょ!?」


 硬貨は自動販売機の下に進んでいき、姿が消える。


 「…………」


 とりあえず佐奈は自身の手の中にある硬貨を見る。


 百二十円。


 続けて自動販売機に並ぶ飲料水の値段を見る。

 

 安くて百三十円。


 数年前ならば百二十円で買えたが、運悪く今は令和時代。

 一瞬諦めようかとしたが、炎天下の中、飲み物なしで美羽ちゃんを探すことを想像したら、死ぬな…と悟り、膝を曲げて自動販売機の下に右腕を突っ込む佐奈。

 自動販売機の下は真っ暗で何も見えやしない。


 私、何やってんだろ…と思っていると、急に自分のいる場所が日陰になる。自動販売機の下を弄る手を止め、寝転がった状態から上を眺めると見知った人物がいた。


 「先輩。何、遊んでるんですか?」


 白いフリルが付いた大きな傘をクルクルと指で回し、黒い長髪のthe清楚系お嬢様と思わせる人物――とどろき愛里好アリスが。

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