二月十四日ってなんの日?

木立 花音@書籍発売中

二月十四日ってなんの日?

 ねえ。


 ん?


 二月十四日がなんの日か知ってる?


 日曜日だな。やっぱり僕は、日曜日が大好きだなあ。なんと言っても、ゆっくりできるからな。


 そうだよねぇ~。私も日曜日ってだーいすき。それに比べて月曜日の野郎ときたら、一日違いとは言え全人類の敵だよね。もう、休日は終わったんだ。君も、夢のような二日間のことは忘れ、これから始まる一週間と向き合う必要があるんだ、といった感じに、現実を突き付けてくる──ちょっと!


 なんだよ?


 そうじゃないでしょ! 二月十四日だよ? もっと他に色々あるでしょうに。


 ん~……そうか、じゃああれか。煮干しの日ってことか。


 そうそう。全国煮干協会が1994年に、2(に)、1(棒)、4(し)の語呂合わせで決めたというのは知る人ぞ知る話よね。


 ほう? 意外と物知りじゃないか? では問おう。煮干しとは何か詳しく説明できるかい?


 ふふん。それは挑戦状のつもりかしら? 私、伊達に長く生きていないから結構詳しいわよ? 煮干しとは、小魚を煮て干した水産加工品のことで、主に出汁を取る材料として使われるものね。また、乾煎りにして食べられることもあるそうよ。


 材料として使われるのはカタクチイワシが最も一般的だが、他に、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、アジ、サバ、トビウオなどを原料にしたものもあるそうだ。


 ウルメイワシ……? なによそれ。


 知らなかったのか。この勝負。僕の勝ちだな。


 ちぇっ……また負けた。じゃなくて! そういうことを言ってるんじゃなくて!


 なんだよ。くそデカい声だすなよ。この部屋は狭いんだから耳がきんきんするっつーの。


 だからさあ。もっと他に色々あるでしょ。君はバカなのかしら?


 じゃああれか。ふんどしの日か。


 そうそう。日本ふんどし協会が、2011年に2(ふん)、14(どし)の語呂合わせで設定したのよね。そんなの知ってるに決まってるじゃない!


 じゃあ、ふんどしについて詳しく語ってみろ。


 ふふん。女の子はふんどしについて詳しくないと思って見くびっているんでしょう? とんでもない思い違いね。こう見えて思春期の女の子というものは、表に出すことのできない様々な欲望ではちきれそうな存在なのよ? それこそ語ろうと思えば一時間でも──って語らせるな! 乙女にふんどしについて語らせるんじゃない!


 ちっ。


 ちょっと、今舌打ちしたでしょ!? 絶対乗ってやらないんだから……じゃなくて! 他にもっと有名な奴があるでしょう?


 じゃああれか。ケン・マス〇ーズの誕生日だってことか。


 解説しましょう。ケン・マスター〇とは、格闘ゲーム、ストリー〇ファイターシリーズに登場してくる有名キャラクターのことで、ライバルであるリュウと比較して波動拳の性能で劣る一方、昇竜拳の威力にすぐれ…………ちがーう!


 忘れてた。相原雪乃の誕生日だな。好きだろ? 雪乃?


 それは中のひとの話でしょう……。中の人って誰?


 さあ?


 だいたい私は女の子なのに、なんで『アイドルマスターシンデレラガー◯ズ』の話で盛り上がんなくちゃいけないのよ……。


 違うのか。じゃあなんだって言うんだよ。そうか、あれだな? 北海道のご当地キャラクター、まりもっこりの誕生日だってことだな。さあ、ご一緒に!


 まりもっこ……。言わすな! 女の子にそんな単語言わせないで!


 ちっ。


 なんであんたが舌打ちするのよ。こっちの台詞よ。


 よしわかった。これなら間違いなく正解だ。〇海砂の命日だな。


 漫画『DEATHN◯TE』に登場してくる人気キャラクターね……って、たとえ創作でも縁起悪いわよ!? そうじゃなくて。


 だから、バレンタインデーだろ?


 だから違うって言ってるでしょ……って、合ってんじゃないのよ!


 一々五月蠅いなあ。声でかすぎるんだよ。それに、合ってるんならいいじゃないか。で? バレンタインがどうかしたの?


 鈍感……。


 え?


 いや、普通のチョコレートとさあ、ホワイトチョコレートとどっちが好きかなあ、なんて。


 僕の好きな色は青だな。


 なるほど。ブルーチョコレートね。メモメモ……って臭そう! チーズじゃないんだからさ! それとも着色料か? 体に悪そう!


 ん? んん? もしかして、僕にチョコレートくれるの? 


 あ、あったりまえでしょ。君と私の仲だもん(もじもじ)


 でも君、男の娘じゃん?


 ぐはっ……って違うわよ! 変なオチつけようとしないで! 私ちゃんと女の子だから。


 本当かい? じゃあ君の名前は?


 花子。


 この場所は?


 学校のトイレに決まってんじゃん。ってなによ! 私、幽霊じゃん! チョコなんて作れないじゃん!


 そうだね。君は『トイレの花子さん』。もしかして、今頃気付いたの?


 いや、そんなことないんだけど……なんか気持ちだけ盛り上がっちゃって失念していたみたい。


 しょうがねぇ奴だなあ。じゃあ僕、用も済んだしもうそろそろ行くね?


 え、えと。今度いつ会えるかしら?


 んーそうだなー……。次うんこしたくなった時かな。


 わかった。君がうんこしたくなるまで待ってる。あ、でも、十四日は来て欲しいかな。


 了解。十四日はうんこしたくなるよう、スケジュールを調整しておくね。


 わかった。寂しいけど、それまで待ってる。


 じゃあね。


 うん、また。



 こうして僕は、学校のトイレを後にした。あー楽しみだな。早くまたうんこしたくならねーかなー。

 あ、次体育の授業だわ。嫌だわー。鬱だわー。ん、でも、十四日って日曜日じゃん。まあ、部活の合間でうんこすればいいか。


「二月十四日ってなんの日?」 おしまい。

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