秘密の会話
「なんて告白したんですか?」
椅子を戻して座りつつ質問を再開させる。
「電話でね、普通に好きですって」
うん、ストレートに言われた。
「そこで無理って言われたんですか?」
「ううん、考える時間がほしいって言われて、次の日LINEで振られちゃった」
うん、ちょっと混乱して、電話で話そうとしたけど期待させたら悪いなと思ってLINEで返事した。
「ええ〜……その人見る目ないですね、小田先輩を振るなんて。ところでその人の名前は?」
「まあ、受験だし、しょうがないよ。私も受験を意識して勉強し始めてるし、今誰かから告白されても断ると思う。名前は恥ずかしいから教えなーい」
肩をすくめながら苦笑いをする小田の声は、一見いつも通りだが、どこか寂しげだった。
「じゃあ、その人のこと諦めるんですか?」
吉田の問いに、小田は首を振った。
「ううん、諦めないよ」
きっぱりとした口調に、心臓が跳ねた。
ここで小田が諦めるなどと言おうものなら、俺は告白ができなくなってしまうではないかと、内心焦っていた。
そうか。俺のこと、諦めないでいてくれるんだ。
「受験が終わったら、また告白しようかなって思ってる」
「だいたい1年後ですか……一途ですねぇ」
「……告白、うまくいくんじゃねぇの?」
急に話に割り込んだものだから、吉田が驚いた顔をした。
「つーか小田の告白で気になり出して、受験終わったら相手から告白しようと思ってたりするかもな」
「えっ」
少し赤くなった頬に、今度は両手を当てて笑う姿が女の子らしくてかわいい。
「そうだといいなぁ。楽しみ」
「……木村先輩」
「ん? 何?」
「小田先輩の好きな人、知ってるんですか?」
「へっ!? なんで!?」
「なんか、何かを知っているような口調だったので」
ちょっと俺の後輩勘鋭すぎじゃね!?
「まあ、隼也君には全部話したことあるよね」
「あ? あー……まあそうだな」
「ええ!? じゃあ小田先輩の好きな人ほんとに知ってるんですか!? 小田先輩が口割らないので教えてください!」
「えええ……」
さすがに今までの話は全部俺のことだ、なんて言えるわけがないし、小田も恥ずかしいのだろうから黙ってるんだし、というかさっきからずっとくそでかボイスで喋っていてうるさいのに、それが俺に向けられるとよりうるさいな……じゃなくて。
ぐるぐるとしていたら肩をぽんと叩かれて、小田が圧のある笑みを俺に向けていた。
「言わないでね。というか、言わないよね。言ったらどうなるか分かってるよね」
「あ……はい」
「えええ!? 木村先輩までだんまりですかぁ!?」
吉田の叫びと、下校を促す放送が重なった。
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