大事なこと
「チョット、カイセイ! おかしなことを言ってるのは、参ノ国の天然王女サマなんでしょ? なのに、なんでアンタは黙ってんのヨ! ちゃんと言い返しなさいよネ! 」
委員長の暴言に反論しない俺を見たホニーが、ぷりぷりした顔つきで訴えかけてくる。
「うーん…… でも、なんかさぁ、こういう誤解のされ方って、ちょっと新鮮だと思わないか?」
「ハァ? アンタなに言ってんの?」
「ほら、こういう誤解される場面って、これまでなら絶対『このロリコンめ!』って言われるところだろうから」
俺はそう言いながら、怒りの視線をホニーに送る。
「ヒイッ! ま、まあそうね。ア、アタシもそんなようなことを言ったような気がしないでもないわネ……」
「だろ? でも今回は、なんて言うんだろう…… 成人女性を対象に、自分の権力を振りかざす真っ当なクズって思われてる気がしないか?」
「真っ当なクズっていうのが、アタシにはよくわからないんだけど……」
ホニーが思考停止に陥ってしまったため、アイシューが話の続きを引き受ける。
「言いたいことは何となくわかるわ。特殊な性癖の持ち主と思われるより、ちょっとエッチで横暴な権力者と思われた方がまだマシって感じかしら?」
「その通りだ。流石はアイシューだな。俺のことがよくわかってるじゃないか。ロリコンと思われるぐらいなら、権力で無理やり女性に言うことをきかせようとする、悪逆非道なクズって思われる方がよっぽど嬉しいんだ 」
「もう! カイセイさん、別に私はそこまで言って無いわよ?」
「いや、これで良いんだ。よし、これからは俺は『全世界の成人女性の敵』だ。俺のキャラ設定はこれで行こうじゃないか!」
俺の言葉を聞いた3人娘たちが、神妙な顔をしてつぶやく。
「……なんだか今まで悪かったワ」
「そこまで『ろりこん』って言われるのが嫌だったなんて……」
「オニーサン、今までわかってあげられなくてゴメンだゾ……」
「わかってくれたのか、みんな…… 俺は…… 俺は今、とても嬉しいぞ!!!」
「あのー、私を置いてけぼりにしないでもらえますか? あなたたちはいったい、何を言っているのですか?」」
あきれ顔の委員長がつぶやいた。
「いやぁ、良い機会だから、特殊な性癖を持っていると誤解される辛さを表現してみました」
「まあ、あなたがこれまで誤解を受けて、辛い思いをしていたということは理解しましたが…… いえ、問題はそこではなく、あなたは無理やり参ノ国の王女を自分の妃にして、参ノ国を併合するつもりなのでしょう?」
「…………なんでそうなるんだよ。名誉毀損で訴えてやろうか? この世界に裁判所があるのか知らないけど。いいか、俺にまったくそんな気持ちは——」
俺は弁解しようと口を開いたのだが、俺の言葉を
「おい! それはどういうことだ!!!」
「あなたがお気の毒だという話です」
哀れみのこもった視線をレネーゼに向ける委員長。
「おい、ニシノ国の娘、ちょっと待て。カイセイは私のことを無理矢理自分の妃にしようとしているのか?」
「えっ、ご存知なかったのですか? お可哀想に……」
「なあ、ちょっと待てよ。俺には結婚の予定なんて、本当にないぞ?」
「とぼけても無駄です。私はニシノ国の教皇様からちゃんと聞きました。あなたが参ノ国の王女殿下を無理矢理自分の妃にしようとしていることを」
「ななな、なにぃいい! カイセイ、おまえはワタシを、その…… つつつ、妻に迎えたいというのか!?」
「……言っとくけど、変態プレイも結婚も要求してないからな。まったく、なんで変態プレイには喜んで応じるくせに、結婚って話になるとになるとそんなに動揺するんだよ」
「いやぁ、きっと貴殿なら、自分の欲望が満たされたら、ワタシのことなんかすぐにポイって捨てるんだろうなと思っていたもので」
「……………………なあ、今言ったこと、冗談だよな? 頼むから冗談でもそういうこと言うの、ホントにやめてくれよ。ミミーが見てるだろ」
「なんだぁー、そうだったのかぁー。いやぁー、実は私もそうではないかと薄々思っていたのだぁー。困ったなぁー」
「おい、人の話をちゃんと聞けよ!『あーあー』言うなよ、うるさいんだよ!」
「ま、まあ、なんだ。おまえがどうしてもというんなら、あれだ。仕方なく、そう仕方なくだがおまえの妻になってやるのも、やぶさかではないというか……」
まったく…… コイツは、なにひとりで妄想を爆発させてるんだか。
レネーゼがモジモジしている姿を見た参ノ国の兵士が、突然大声で叫んだ。
「何を言っているのですか、姫さま! お気をしっかり持たれませ!」
そうだそうだ! この天然王女に言ってやれ。
「こんな好機はありませんぞ! ここはもっと積極的に行かねば!」
あれ?
それを聞いた他の兵士も叫ぶ。
「そうですとも! 姫さまを嫁に貰おうなどという奇特な人物など他にはおりませんとも!」
そうなのか?
「まったくです! 参ノ国では皇族はおろか下級貴族に至るまで、姫さまを嫁に欲しいという人物など一人もいなかったことをお忘れか?」
噂には聞いていたが、そこまでだったとは……
「おい、お前たち!」
顔を真っ赤にさせながら、レネーゼが大声を上げた。
そりゃ、流石に怒るだろうよ。
いくらなんでも王女様に対して失礼だよ。
「ワタシはお前たちのような忠臣を持って幸せだ。ここはもっと積極的に行くべきだったな。私としたことが不覚であった。許せ!」
やっぱり、そういうオチになるのか……
「そうです! ここは勢いで押し切りましょう。何なら、このままインチキ王国までついて行かれては?」
「いっそ、今ここで結婚式を挙げてしまうというのはいかがでしょう?」
「何たる名案! 貴公、もしや天才か!?」
参ノ国の兵士たちが、好き勝手言い始めやがった。
……もう、続きはお前らの国の王宮に帰ってからやってくれよ。
「チョット! アンタたち、ナニ勝手なこと言ってんのヨ!」
そうだホニー。そこの天然王女と天然家臣団に言ってやれ。
「カイセイの正妃はアタシで、第二夫人はアイシューだって、決まってんのヨ!」
……決まってねえよ。
さっき言っただろ? 俺はロリコンじゃネエんだよ。
「ホニー! あなた本当、いい加減にしなさいよ!」
やっと常識人アイシューの登場か。今回ここまで来るまで長かったぞ。じゃあ、あとは頼んだぞ、アイシュー。
「どっちかって言うと、正妃は私でホニーが第二夫人だと思うんだけど」
…………アイシューよ。今日はお前もそっち側に行くのか。
「あのー、このコント、いつまで続くんですか?」
あきれ顔の委員長がつぶやいた。更に——
「何ですかコレ? 今流行りの異世界転生ハーレムですか? あなたはもうハーレムを完成させたんですか? 私が一生懸命魔法の修練に励む毎日を送っているというのに、あなたはハーレムを作って、毎日楽しく過ごしているのですか? 理不尽です!!!」
……誤解だよ。それから大事なことだからもう一度言うよ。
「なんでホニーとアイシューがハーレムメンバーに含まれてんだよ! 俺はロリコンじゃネエって言ってんだろ!!!」
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