53 シークレットクエスト④[東奔西走]
ジルトレに戻り、さていよいよ料理だ。……とは、残念ながらいかなかった。
なぜなら、クエスト②の内容が、こんなだったからだ。
◆連続シークレットクエスト『**のレシピ』
進行状況:クエスト① 達成 5/5 ②未達成 0/7
クエスト① レシピの材料を全て集めよう。[クリア!]
クエスト②調理道具を全て揃えよう。
・聖餐皿(中) 1
・聖餐鉢(中) 1
・聖櫃(小) 1
・聖匙(小) 1
➖【金翅鳥の羽根】[自然脱落]1
➖ガルタマヤ岳に棲む「神鳥ガルダ」の赤く輝く美しい翼。そこから抜け落ちた羽根は、ガルダの巣の周りに落ちているだろう。
➖【ヒュギエイアの杯】1
➖ヒュギエイアの杯。金色の蛇が巻き付いた銀色の杯。神器として保管されている。
➖【シャムシール・エ・ゾモロドネガル】1
➖エメラルドを散りばめた宝剣。身につけると魅了の魔法に抵抗する。悪魔特効を持つ。神器として保管されている。
今度は調理道具か。【金翅鳥の羽根】……面倒そうな説明が書いてある……のはひとまず後回しだ。
聖餐器類と聖櫃、それに「神器として保管」と書いてある杯と剣について、クラウスさんに聞いてみよう。
*
「はい。存じております。【ヒュギエイアの杯】はアラウゴア大神殿、【シャムシール・エ・ゾモロドネガル】はミトラス大神殿の宝物庫に納められております」
「それは、一時的にお借りできるものなのでしょうか?」
「はい、もちろん。伝承『レシピ』に関することでしたら、どの神殿も積極的に協力してくださるでしょう。念のため、私がそれぞれの神殿長に事情を書いた手紙を認めますので、それをお持ち下さい」
「ありがとうございます。他の聖餐器や聖櫃については、どちらでお借りできるでしょうか?」
「聖櫃は当神殿のものをお使い下さい。聖餐皿と聖餐鉢、それに聖匙は、新しく購入された方がよろしいかと思います。物販所で取り扱っておりますので、後ほどお部屋にお持ちします」
「いろいろありがとうございます。お手数ですが、よろしくお願いします」
今回のシークレットクエストは、RPG感たっぷりだな。次から次へ、探し回らないといけない。
*
その後の行動は、我ながら速かった。
【通行許可証(墓陵遺跡)】を使って、ユーキダシュのアラウゴア大神殿までショートカット。
【ヒュギエイアの杯】の貸し出し成功。
そこからトリムへ南下して、王都行きの定期便に乗船。
王都に着いたら、ミトラス大神殿に直行して【シャムシール・エ・ゾモロドネガル】を借り受けると、
すぐに王都を出てジオテイク川を越えた。
川を越えると乗り合い馬車が出ていたので「歓楽の街クォーチ」へ。
そして、クォーチで別の乗り合い馬車に乗り継いで「西端の街アドーリア」に到着した。
「西端の街アドーリア」は、こじんまりとした小さな街だが、街中の至る所にプレイヤーが溢れていた。「アドーリア神殿」に立ち寄って挨拶を済ませた俺は、その足で冒険者ギルドに向かった。
*
《アドーリアの街 冒険者ギルド》
まず資料室をひと通りチェックしてみたが、残念ながら俺の求める情報はなかった。
「すみません。山岳地帯の地図、あるいは情報があれば知りたいのですが」
「山岳地帯の全域地図は、1部100,000Gで販売しております。ただ現在入山希望者が多く、入山制限をしております。順番をお待ちになるなら整理券を発行致しますが、どうされますか?」
「地図を1部と整理券をお願いします」
「では、ギルドカードをお願いします。代金の清算と地図情報・整理券番号の登録を致します」
受付嬢にギルドカードを渡す。これを使うのは久し振りだ。
「地図と整理券、両方の登録が済みましたので、ご確認下さい。整理券は、『南北山岳地帯』・『竜の谷』共通です。目的とされるエリアを選んで登録すると有効になります」
「ありがとうございます。あともし神鳥『ガルダ』の情報があれば、それも知りたいのですが」
「ガルダの巣のおおよその場所は、ご購入頂いた地図に記載されています。情報は誠に申し訳ありませんが、現在のところございません」
「そうですか。ありがとうございました」
場所は分かったんだ。実際に行ってみるしかないか。
「ねえ、あなた。『ガルダ』の巣に行くの?」
後ろから声を掛けられて振り返ると、黒い魔女服を着た女性がいた。
「はい。そのつもりです」
「『ガルダ』の巣なら、巣へ行くのを目的とした臨時パーティの募集が出ることがあるわよ。よければチェックしてみてね」
「ご親切にありがとうございます。後で見てみます」
「頑張って」
……親切な人だったな。そして臨時パーティか。
はぁ。急いで来たのに、山岳地帯はやっぱり混んでいた。整理券か……参ったな。
ここアドーリアの街が、これほど混んでいるのには理由がある。
「竜の谷」はもちろんだが、あれは騎士系の転職ルートなので、対象プレイヤーの数はまだそれほど多くはない。これほど活況を呈しているのは、最近、さらに他の職業の転職ルートが見つかったせいだ。
*
「竜の谷」は、外洋に突き出た大きな半島上にそびえる、南北に分かれた山岳地帯の谷間にある。
南側の広い山岳地帯「ヤクイオット山」の中腹に「寺院」が見つかり、正規ルート以外の神官職向けの修行コースがあることが分かった。
その修行コースは、戦闘系も支援系も対象になり、⑥次職への転職ルートに繋がるクエストだったため、前線組に人気になった。
また「ヤクイオット山」の裏側、海に面した西側の一帯は「仙岳」と呼ばれ、「七つの滝」を中心に様々な魔法職の転職クエストを拾えることが分かった。
そこにおそらく、「賢者」の正規ルートから外れた混合魔法職の転職ルートがあるのではないかと言われている。
そして、俺の探している神鳥「ガルダ」はというと……。
地図上では「竜の谷」の北側にある「ガルタマヤ岳」にいるようだ。「ガルタマヤ岳」は、この辺りで最も標高が高い山で、北面は崖で崩れ落ちている。
どうやらこの辺りみたいだな。整理券は北の山岳で登録しておこう。しかし、険しそうな山だ。【登攀】スキルを持ってはいるが、今のレベルで大丈夫だろうか?
*
【登攀】を鍛える方法がないかと、ギルドの受付で聞いてみたところ、しっかりあるそうだ。
山岳地帯の入口に、レジャー用の非戦闘エリアがある。そしてそこには、
・「ロッククライミング」コース
・「アスレチック」コース
・「ハイロープ」コース
この3つのコースが設置されている。レジャー施設なので、整理券がなくても、コース料金を支払えば誰でも利用ができて、登山系のスキルを鍛えたり取得したりするのが可能らしい。
入山の順番が来るまで、ここで遊んで……いや、鍛えていよう。
*
予想外に楽しかった。
特に気に入ったのは、ハイロープ。
6m以上ある高い木の上にロープやワイヤーが張り巡らされていて、それを伝って狭い足場から足場へ移動するゲームだ。
不安定なジグザグの吊り橋や、グラグラする横棒の上を渡ったり、ぶら下がった丸太の上を伝ったり。そのおかげで【平衡感覚】というスキルが生えてきた。
そのほかにも、滑車の付いたハーネスをつけて、十数m以上の高さの足場から数百m離れた地面まで張られたワイヤーを伝って、一気に滑り降りる、ロングジップスライドっていうアトラクションもスリルと爽快感が味わえて凄く良かった。
面白くて何回か繰り返している内に、【滑空】が生えた。何に使うかよく分からないスキルだけどな。
もちろん、本命のロッククライミングもかなり真面目にやったよ。
岩をよじ登るのは、最初はかなり大変だったけど、【登攀Ⅲ】が【登攀Ⅵ】になるまで頑張った。
そうやって各種レジャーコースを満喫していると、あれだけ長く感じた待ち時間も比較的早く終わり、
……そろそろ入山の順番が来そうだ。
《登録された整理券の順番が来ました。
種類:入山許可
希望エリア:ガルタマヤ岳
「入山許可証」を発行致しますので、当冒険者ギルド受付カウンターまでお越し下さい。
アドーリア冒険者ギルド」
*──────────*
次回はいよいよガルタマヤ岳へ
途中かなり飛ばしている部分がありますが【Web版】ということでお見逃し下さい。
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