49 シークレットクエスト
今日もお勤め。神殿で。
第四陣が参入して少し経ち、みんな忙しくなってしまった。
何しろ第四陣は5万人。2つに分けて2段階参入したけれど、それが効いたのは最初だけ。現在、市場での生産品の需要は爆上がりだ。
工房設置で消費したGを取り返すべく、みんな凄い勢いで生産に邁進している。
じゃあ俺もってことで、厨房に篭って【調理Ⅹ】三昧、【J聖餐作成Ⅶ】三昧をしていたのがいけなかった。
目的があって作り始めたわけじゃないから、最初は買い込んでいた手持ちの材料を消費して、賄いや各種ステ─タスのバフ菓子を作っていたんだが、それなら【聖餐作成】でMND+のパンや焼き菓子を作ってくれと、クラウスさんに頼まれた。
うん。みんなが食べたいのならやるよって、気軽に引き受けた。
ところが俺が厨房にいると、小麦粉やバタ─や砂糖などの材料が途切れることなく補充される。
さすがにおかしいんじゃないかと、出来上がった菓子類の行方を聞いてみたら、なんと、綺麗にラッピングされて神殿の物販所で販売されていた。
「信徒の皆様に大変人気がございまして、おかげさまで参拝にいらっしゃる方々も増えております。さすがは神殿長様でございます」
……と、クラウスさんに言われてしまい、やめるといいにくくなってしまった。
俺、一応ここの長みたいだし、給与も貰っている。経営とかはもちろん考えたことなんてないが、ス─パ─NPCであるクラウスさんがそう言うのなら、ゲ─ム的には合っているんだろう。
そうして、施療院が暇な時には、狩りにも行かずに厨房にいる日が続いた。
なぜこうなった……。
俺が生産活動に励んでいる間、メレンゲと爺さんの妖精2人組は、オヤツ三昧だ。俺は調理三昧。
……いいな、お前ら。
いくら食べても太らないし、虫歯にもならないなんて羨ましいって思っていたが、ある日のこと、2人の様子がおかしくなった。
やっぱり制限なくバフ菓子を食わせちゃ駄目だったのか?って青くなっていたら、
〈変身─────っ! キラ─ンッ!〉(本当に光った)
《御使い妖精》
名前[メレンゲ]レベル2[HP]10[MP]10
【御使い妖精の服】MND+10
【渾天のドレス(翼)】MND+20 耐久∞ ※ランキング報酬・特別装備
【妖精の接吻Ⅳ】MND+40 ※聖属性スキルの効果上昇(中)
【天空の綺羅星Ⅰ】MND+5 LUK+5 ※神威上昇効果(小)
《聖妖精ユ─ルトムテ》
名前[サン・ニコラ]レベル1[HP]5[MP]5
【素敵な赤い帽子】MND+10
【橇・ユ─ルボック(藁のヤギ)】DEX+20 LUK+10 耐久∞ ※ランキング報酬・特別装備
【聖夜の贈物Ⅲ】LUK+30
【トムテの親愛】DEX+30 生産スキルに+補正(中) ※生産品のレアリティ上昇・成功率上昇
【聖なる美食Ⅰ】MND+5 LUK+5 ※食関連スキルに+補正(小)
メレンゲが《色妖精(白)》→《御使い妖精》に変わり、
名前欄さえ無かった爺に「サン・ニコラ」という名前がつき、《妖精ユ─ルトムテ》→《聖妖精ユ─ルトムテ》に変わった。
2人とも初期装備が更新されてるし、スキルレベルも上がり、新しいスキルが増えている。聖属性に、より特化したってことか? ちょっと燐光のキラキラが増えている気がするし。
メレンゲのスキル説明の「神威」っていう効果がよくわからないが、響きからして職業上プラスになるものなのだろう。
しかし驚いたな。妖精って進化? するんだ。
きっと他の属性も同じだろう。かなりの量のバフ料理をあげる必要がありそうだが、装備枠を消費しないでこれだけステ─タスがあがるなら、いいんじゃないだろうか?
みんなにも知らせておこう。
*
そして引き続き、【J聖餐作成】に励んでいたら、とうとうレベルがMAXになった。
俺、どんだけ作ったんだ?
そうしたら、クラウスさんがこんなことを言ってきた。
「ここまで研鑽なさるとは、さすが神殿長様です。これも神のお導きによるのでしょう。実は、この領域に達した上位神官の方に、お渡しすることを定められている伝承『レシピ』がございます。ここに持って参りましたので、お納め下さい」
「レシピですか?」
「はい。この『レシピ』を完成させることができた時、『神の天啓』が示されると言い伝えられております。良い結果に辿り着けるよう、心よりお祈り申しております」
《ピコン!》
《【**のレシピ】を入手しました。
これにより、連続シ─クレットクエスト『**のレシピ』に参加できます。
参加しますか? ※このクエストの失敗によるペナルティはありません。》
→[参加]
→[不参加]
ペナルティがないなら、参加だよな。ポチッと。
《連続シ─クレットクエスト『**のレシピ』に参加しました。クエストの進行状況は、タッチパネル上の[参加中クエスト]バナ─より確認できます。》
なになに。[参加中クエスト]…あった。ポチッ。
◆連続シ─クレットクエスト『**のレシピ』
進行状況 : クエスト① 未達成 0/5
クエスト① レシピの材料を全て集めよう。
➕楽園の花蜜
➕ヒソプの朝露
➕神銀の林檎 [落果実]
➕ウルズの泉水
➕神餐水
➕採取にあたっての諸注意
……えっと。
見たことのないものばかりじゃないか。どこにあるんだこんなの?
いったいどこから手を付けていいのか、それすら見当がつかない。困ったな。
!?
➕これツリ─になってる?
ポチっと展開。……できるじゃん。全部展開。ポチポチポチポチ……。
➖楽園の花蜜 /使用量:小匙1
➖楽園草の花の蜜
➖常闇の野に咲く花
➖ヒソプの朝露 /使用量:3滴
➖古代草ヒソプの葉に降りた朝露
➖遺跡で見つかることがある珍しい草
➖神銀の林檎[落果実]/使用量:1個
➖枝から自然落下した神銀の林檎。未成熟だが瑞々しく爽やかな芳香を伴う。
➖天界にある神銀の木に実る林檎。霊峰の頂きに落ちることがある。
➖ウルズの泉水 /使用量:聖餐鉢1杯分
➖ウルズの泉の水。ユグドラシルを潤している。
➖ユグドラシルの根の直下にある三泉のひとつ
➖ミ─ミルの泉・ウルズの泉・フヴェルゲルミルの泉の三泉
➖神餐水 /使用量:聖水瓶3本分
➖神に供される霊水
➖究極の聖水
➖高位聖職者だけが作成できる。
➖採取にあたっての諸注意
採取する際、花や草を傷めてはいけない。対象物だけを採取すること。
液状の採取物は聖水瓶に採取する。固形の採取物は聖餐器に採取する。
※【植物図鑑】【アイテム図鑑】に採取物の[知識]が追加されるので参照のこと。
*
どこから手をつけるか迷ったが、まず手近なところから。
移動しなくてもできる聖水作りをすることにした。
いろいろ試して分かったのが、
消費GP/1本あたり
GP 20 聖水
GP 100 上級聖水
GP 500 超級聖水
GP 2500 神級聖水
この「神級聖水」っていうのが神餐水かと思ったら、違ってがっかり。
この法則でいうと、次の等級のものはGP12500になるんだが、そんなのは到底無理だ。装備を強化して妖精もパワ─アップしたが、俺のGPは現在5000強。
……ものは試しだ。とりあえずやってみるか。もちろん、フルパワ─。
5000GPぶっこみだ!
そしてできたのが、これ。
[究極聖水(神餐水)]
うん。できた。出来ちゃったじゃん。
5000GPを一気に投入した際、作業場どころか大神殿の外壁を越えて、辺り一帯が神々しい白光に眩く輝き、
「大神殿に神が降臨された」
NPC信者が詰めかけて騒ぎになった。(……平常心だ、平常心)
それはもう見なかったことにして、必要な3本分を作り上げることができた。
そして、次に着手したのが[楽園の花蜜]。
ツリ─下の詳細説明で、楽園草の花の蜜・常闇の野に咲く花とあったからだ。
更に【植物図鑑】に追加された内容を見ると、
・[楽園草]
常闇ダンジョン深層の野原に生える草。花が咲くと淡く銀色に光る。
数株単位で群生し、順番に開花するが、開花後10分ほどで枯れてしまう。外観は夜光花に似るが、光の色で区別ができる。
「常闇ダンジョン」
随分ご縁があるな、このダンジョン。俺にとってはソロで気軽に行けるダンジョンのひとつ。
常闇ダンジョン深層というと、おそらくグ─ルのいる地下16ー20階を指すのだろう。地下21階はボス部屋しかなかった。地下17ー18階辺りに野原があった気がするんだが……。
早速出かけるか。
*
《常闇ダンジョン地下17階》
あった! やっと見つけた。
地下17階を一掃しながら、足元に銀色の光がないか探し回った。
「花や草を傷めてはいけない」
わざわざ注意書きがあるんだ。踏んでしまったら大変だと、かなり神経を使った。
しかし、なかなか見つからないんだ、これが。咲いたら10分で枯れるっていうのがネックなんだよな。
そして、やっと見つけた[楽園草]。
銀色の光だ、間違いない。
念のため[拠点結界]を張ってから、蜜の採取を始めた。
銀光を伴った、長径2cmくらいの釣鐘型の白い花が、やや上向きに咲いている。首を折ってしまわないようにそっと触れ、聖水瓶の口を当てながら、花を下に傾けた。
ポロン ポロロン♪
と、銀色の蜜が滑るように瓶の中へ落ち、花は光を失った。
瓶の蓋を閉め、新しい瓶を取り出す。
念のため、ひとつひとつ分けて採取しようと思ったからだ。数分待つと、隣の花の蕾がぼんやりと光り始め、緩やかに開花していった。
*
地下17階の後、更に地下18階も捜索して、[楽園草]合計37本分の蜜を集めることができた。『レシピ』には、使用量小匙1杯分とある。
ギリギリか、ちょっと足りないくらいか?
ついでだからと、地下21階のボスを倒しに行った。気になることもあったしな。
ボスを問題なく倒し、祭壇の奥の壁を調べると……あった。
まだあるじゃん、俺の「聖霊石」。
「聖霊石」に触れると、壁が下がって階段が現れた。
よし、行くか。
念のため、祭礼の時のように聖句を唱えながら通路を進むと、通路際にぼんやりとした光りがあった。
……やっぱり。
あの時は[夜光花]だと思い込んでいたが、これ[楽園草]じゃん。
詠唱を続けながら瓶を取り出し、採取を始める。多い方がいいからな。
集めながら徐々に進んで行く。以前も思ったが、やたら長い通路だ。そのせいもあって、常闇神殿に着く頃には、結構な数が集まった。
追加で42本分。合計79本分だ。さすがにこれで足りるだろう。
ここまで来たんだから礼くらいしていくかと、祭壇に向かう。手を合わせ、一礼をすると、
《解放条件をクリアしていません。》
アナウンス…いったい何のことだ? よく分からないが、ここに何らかのクエストがあるってことか?
……まあいい。今は帰ろう。
帰り途、新たに咲いていた[楽園草]からまた採取して、結局105本分集めることができた。
◆連続シ─クレットクエスト『**のレシピ』
進行状況 : クエスト① 未達成 2/5
クエスト① レシピの材料を全て集めよう。
➕楽園の花蜜 [クリア!]
➕ヒソプの朝露
➕神銀の林檎[落果実]
➕ウルズの泉水
➕神餐水 [クリア!]
➕採取にあたっての諸注意
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます