第35話 予想以上に驚かれました、ハイ。
前回のあらすじ:ギリギリ牛さん達を救出できた。
テシテシ、テシテシ、ツンツン。さあ、朝だ! 起こしてもらったお礼にモフモフやらおにぎりの刑やら行って目覚める。いつものように水術で顔を洗ってから朝食の準備を行う。もちろん朝食はステーキではないよ。流石に朝からステーキは重いからねぇ、、、。マーブル達は平気みたいだけどね。
久しぶりにジャガイモをガッツリ食べたくなったので、ジャガイモをメインにする予定、といっても、ジャガイモは蒸かすだけなんだけどね。その蒸かしたジャガイモにいろいろと載せて食べていこう、という考えだ。
ということで、材料を適当に用意して外へと出る。ここで調理してもいいんだけど、調理しているところを見たいと言われているから、ここで調理しないといけないもの以外は外で調理するようにしている。
雨の日は無理だろ? その通りです。が、植物組のみんなが庭に屋根を付ける計画を立てているそうだ。もちろんマーブル達もそれに一枚噛んでいる模様。だったら任せるしかないよね。実際、私では建築は無理だし、、、。
材料などを持って外に出ると、それを確認した植物組が朝の点呼を開始する。いや、それ、私達が見ている前でわざわざやるの? 今更だけど。いや、楽しそうだからいいんだけどね。私、そこまでされるほど偉い存在じゃないんだけど、、、。しかも、牛達も参加してるし、、、。
牛さん、君達はまずはゆっくりと体力を回復してほしいんだけどね、、、。何? 楽しいことは積極的に参加してもらって気力の回復もかねてる? いや、これ楽しいの? あ、そう、楽しいのね、、、。じゃあ、これ以上は何も言わないよ、、、。
調理ということで、まず行うのがジャガイモの芽を取る作業である。こちらの世界でもジャガイモの芽は毒であり、できれば食べたくない。実はこの程度の毒であれば今の私達では問題無いみたいだけど、それでも何か変な味になってしまうので、できれば取っておいた方がいいだろう。
というか、あの程度とは言ったけど、ジャガイモの芽の毒ってかなり毒性が強いはずなのに、それがが平気って、どれだけ毒耐性があるんだろうと驚きの方が強い。言うまでもなく、食堂で提供するときにはしっかりと芽を取って調理しているから安心して欲しい、って誰に言っているんだろうか、、、。
私がジャガイモの芽を取っている横で、マーブル達は食堂の周りにいつも貼ってある水術の罠に掛かった肉、いや、ストレイトウルフ達の解体作業を行っている。流石に罠に掛かってくれるのは基本的にはスピアー程度の低ランクである。たまにランサーが掛かっている時もあるけど。とはいえ、スピアーでも十分美味いからその点は問題無し。
ジャガイモの芽を取り終わる頃には、ストレイトウルフ達の解体作業も完了しており、マーブル達が解体した肉を持ってきてくれたので、それらを細かく刻んでもらって挽肉にしてもらう。言ったでしょ、朝からステーキは重いって、、、。
ちなみに、ストレイトウルフだけど、肉だけでなく毛皮も手に入る。毛皮については基本一撃で仕留めるので結構大きい。さらに、水術の罠に掛かった個体だと丸々一頭分ほぼ真っさらの状態で手に入る。その上、ライムがキレイにしてくれるので、品質は常にほぼ最上級といっても過言ではない。
ということで、ストレイトウルフ達の毛皮も重要な資金源となるだろう。いや、まだ売っていないからどうなるかわからないんだよね。結構狩ったので、枚数もそれなりになってきたし、そろそろ売っても良いかな、とは思っている。ただ、以前出したときは買い叩こうとした商業ギルドには卸したくない。売るなら冒険者ギルドかな、しかもハンバークの村でね。一応そっち所属だしね。
そんなこんなで完成した朝食をみんなで頂く。メニュー名についてだけど、そんなものは無い。ジャガイモにいろいろと載せて食べるだけだし。あとは、植物組のみんなが収穫してくれた植物たちを使ったサラダである。
結構好評だった。本当はバターが欲しいところだけど、肝心の牛さんがまだ回復しきっていない状態では期待はできない、というより、無理して欲しくないから元気になるまでの我慢である。みんないろいろと載せて楽しんでいたけど、個人的には塩を振っただけのやつが一番美味かったと思っている。
いや、色々と載せて食べたのも美味しかったよ、何せジャガイモ自体植物のスペシャリストが育てたやつだし。あと思ったのは、牛さん達意外と小食だったかな。聞いたところ、この牛さん達は、一回一回の食事量は少ないけど、回数が多いとのことで、トータルでかなりの量を食べるようだ。取り敢えず、早く回復して元気になって欲しいところだ。
朝食も済んだので、後片付けをしながら店の準備である。不定休な上に、こんなヤバめな場所にも関わらず、一応お客さんは来てくれている。とはいえそれほど多く来るわけではないんだけどね。まぁ何にせよ有り難いことだ。
今日は開店してすぐにお客さんが来た。これは結構珍しいことである。いつもなら開店してしばらくしないと来ないんだけど。ちなみに、開店時間は昼飯時より少し遅い時間である。というより、私達が昼食を食べ終わった後に開店するからである。
今日来たのはケンプファーの4人とケントさん、それと何だか偉そうな騎士っぽい人達が3名の計8人。来客時間と来客人数の2つの項目で新記録となってしまった。
「いらっしゃい。今日は大人数ですね。」
「ニャア!」「キュウ!」「ピー!」
本日最初のお客さんであるため全員で出迎える。常連であるケンプファーの4人と准常連であるケントさんは、マーブル達の出迎えにホッコリしていたが、初めて来た偉そうな騎士達は固まっていた。まぁ、そうだろうな。そもそも食堂で猫やウサギやスライムがいるとは考えられないし、まして、出迎えまでしてるんだからねぇ。
と思っていたら、逆の反応だったようだ。騎士達3人の視線はそれぞれマーブル、ジェミニ、ライムに向いていたのだ。
「こ、これは、、、。」
「本当に出迎えてくれている、、、。」
「ま、まさか、、、。」
何これ、どういうことなの? 騎士達についてはケンプファーの4人に聞くよりもケントさんから聞いた方が早そうだな、ということでケントさんに尋ねた。
「ケントさん、彼らは一体?」
「おお、アイスさん、済まんな。紹介が遅れてしまったな、こちらはレープ・ヴァン・ヴィル様で、我がバロイセン帝国の第二近衛兵の団長だ。2人はお伴の騎士達だ。」
おいおい、第二とはいえ近衛兵かよ、、、。こんな鄙びた場所にそんなお偉いさん連れて来るなよ、、、。
「アイスさん、何で近衛兵の団長がこんな処に来ているのか? って顔をしているなぁ。まぁ、気持ちはわかる。」
「ケント殿、この先は私から話そう。いきなり来てしまって済まないな。紹介にあったとおり、私はレープ・ヴァン・ヴィル。恐れ多くもバロイセン皇帝陛下より第二近衛兵の団長の役職を仰せつかっている。近衛兵とはいえ、身分は低いから気軽にレープと呼んでくれ。」
・・・いやいや、あんた、『ヴァン』ってミドルネームがあるじゃん、、、。思いっきりお貴族様じゃないですか、やだぁ、、、。ってか、お伴の2人はマーブルとジェミニに釘付けになって話聞いてないし、、、。まぁ、うちの猫(こ)達は可愛いからそれも仕方がない。
「レープ様、アイスさんには貴族ってバレてますよ、、、。」
「あれま。とはいえ、貴族には関わりたくない、って顔をしているな。それなら好都合だ。ここではただの一兵士であるレープとして接してくれると有り難い。」
「・・・お気遣いありがとうございます、レープ様。私はアイスと申しまして、ここでモフプヨ亭を営んでおります。」
「おいおい、普通にケントと同じように接してくれよ、、、。」
いろいろあったけど、最終的にはこちらが折れて一兵士の人としてここでは接することになった。お伴の2人はというと、マーブルとライムに釘付けのままだった。ちなみに、ケンプファーの4人はこの光景には慣れているらしく、いつものようにテーブルに座ってメニューを見ていた。
「ところで、こんな大人数で来られるなんて珍しいですね。」
「ああ、それはだな、、、。」
話を聞いてみると、ある護衛任務で、第二近衛兵と冒険者が一緒に行動したことがあって、そのときにレープさんとケンプファーの4人がそれぞれを率いて顔合わせしたのがきっかけだそうだ。そこでいろいろと話をしている時に、食事の話になり、ここのモフプヨ亭が話題に出てレープさんが非常に興味を持ったようだ。
ちなみに興味を持った内容とは、提供する食事もそうだけど、何より、マーブル達が接客することだったそうだ。何でもレープさんはウサギが好きで、帝都バーリンにある自分の邸宅にもかなりの数のウサギを飼っているようだ。ってか、この国の帝都ってバーリンという名前なんだね、、、。
「なるほど、お話はわかりました、いつまでも立っているのも何ですし、テーブルにご案内致します。マーブル、ジェミニ、ライム、よろしくね。」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
モフプヨ亭のテーブルは1つにつき4人分となっている。それが2つ。テーブルくっつけないとな、と思っていたら、ケンプファーの4人がすでにテーブルをくっつけてくれており、さっきは座っていたけど、立って待っていた。レープさんが先に座るためだ。
「ケンプファーの皆さん、済みませんね。本来なら私達がやらないといけないことなんですが。」
「気にしないでくれ。それよりレープさん、先に座ってくれ。でないと他の者が座れないからな。」
「先程も言った通り、私はここでは一兵士のレープだ。そんな気遣いは不要なのだがなぁ。」
そうは言っても相手はお貴族様だから、いくら口調では砕けた感じでもそうはいかないのだろう。レープさんが最初に座って、次にケントさん、お伴の2人が座って最後にケンプファーの4人が座った。
8人全員が座ったのを確認して、私は厨房から果実水をピッチャーで用意する。マーブル達はそれぞれトレイやら人数分の入れ物を用意してくれた。私はピッチャーとは別の容器から果実水をそれぞれ入れて、トレイに載せて最初の準備が完了。
「じゃあ、マーブル、ジェミニ、ライム、お願いね。」
3人は返事をして、ジェミニが果実水を、マーブルとライムは飲み物の入れ物を4つ載せてあるトレイをのせてテーブルへと移動した。マーブルとジェミニはトレイを頭に載せたまま、お客さん達の所へと移動する。ケンプファーの4人がそれぞれマーブルとライムから飲み物の器を受け取り、レープさんやお付きの2人、ケントさんの所に置き、最後に自分たちの前に置く。この辺は何度も来てもらっているだけあって非常に慣れていた。私はジェミニからピッチャーを受け取ってテーブルの真ん中にそのピッチャーを置いた。
「料理の前に、まずはこの果実水で喉を潤してください。」
「有り難く頂こう。」
そう言って、レープさんは果実水を飲み始めると、他のみんなも飲み始めた。
「「「!!」」」
「アイスさん、これは一体何だ!? 果実水といったな!? こんなに美味い果実水は初めてだぞ!」
「・・・うーん、何と言ったらいいんでしょうかね。今朝採れた木の実などを混ぜたものですから。」
「ほう、一種類の果実という訳ではないのだな。」
「はい、一種類では量的に厳しいですからねぇ、、、。」
「そっちかよ、、、。まぁ、美味いからいいか。よし、喉も潤ったことだし、食べる物も頂こうか。」
「食べたい物をこちらのメニュー表からお選びください。果実水はその入れ物に入れてありますが、お手数ですが各自でお注ぎください。」
「ほう、定番メニューと日替わりメニューで分かれているのか。カイン、オススメは何だ?」
「・・・ケントさんじゃなくて俺かい、、、。」
「そりゃぁ、そうだろう。お前達はかなりの頻度でここに来ているからな。お前達に聞いた方が早いだろ?」
「まぁ、そうなんですがね。ただ、正直どれも美味くて選ぶのが困る、というのが本音だな。一通り頼んでみるのもアリっちゃあアリかもな、、、。」
「そうだね、2人前ずつ一通り頼むのも手だね。」
「ほう、ミトンがそう言うなら、それもアリだな。確か、ヘルボアとダークブルの肉を使っていると聞いた。それにストレイトウルフの肉を使ったステーキも気になるしな。」
あれこれと迷っていたようだけど、結局一通り2人前ずつでパスタ3種類とステーキ、及び本日の日替わりを頼んだようだ。ケンプファーの4人はメニューを見慣れているせいか、下の方までしっかりと見なかったようだけど、ケントさんがメニューの一番下の部分に気付いたようだ。
「アイスさん、この一番下に書かれたものって一体何だ?」
「あっ、本当だ! これ凄い気になる!」
「ほう、全て銀貨2枚のメニューのようだけど、これだけは金貨1枚となっているな。」
「ホントだ。ヘルボアやダークホーン、ストレイトウルフでさえ銀貨2枚だったのに、、、。これって、かなりもの凄い素材だよね、、、。」
「素材については今のところ内緒ということで。メニューですが、これもステーキになります。」
「ほう、この銀貨2枚のメニューだけでも本来なら金貨5枚くらい払わないと食べられないものだが、、、。よし! 折角だから8人分用意してくれ! もちろん、支払いは私に任せてくれ!」
他の7人が遠慮していたみたいだけど、結局好奇心とレープさんのごり押しによって金貨1枚のステーキ8人分の注文が入った。
さてと、張り切って作るとしましょうかね。マーブル達も期待を込めた目でこちらを見ていた。もちろん、君達にも焼きますよ。
アイスさんの転生記 ~今回は食堂のオヤジです~ うしのまるやき @maruyaki-san
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アイスさんの転生記 ~今回は食堂のオヤジです~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます