第34話 牛乳ゲット! でも今日はおあずけです、ハイ。
前回のあらすじ:高級牛肉が手に入りました。
牛さんを助けに行ったら、牛肉まで手に入ってしまい、心の中では笑いが止まらない状況です。そんな私の表情を察したのか、マーブル達も今日の食事が楽しみで仕方ないようです。
・・・熟成させたいから今日は食べられません、とはとてもじゃないけど言えなくなったので、一部はすぐに調理しないとまずそうだな。マーブル達のあんな期待した顔を見せられては作らないわけにはいかなくなってしまった。もちろん、マーブル達だけではなく、植物組のみんなもそうだけど、2羽のスズメ達も期待を込めた目でこちらを見ているからなぁ、、、。
それはそうと、ここに来た本来の目的を果たさなければならない。ブラックミノスという恐怖の存在が、ああもあっさりと瞬殺された驚きと、その肉が非常に美味であろうことがわかり、それが食べられるかもしれないという期待の混ざった訳の分からない表情をしていたアルラウネに声をかけた。
「アルラウネ、今日ここに来た目的って何だっけ?」
「ハッ!? ご、ご主人、申し訳ないデス。あまりにいろいろとあったので、すっかり我を忘れてしまったデス。」
「我に返ったようでよかったよ。君達でないと、私達では話は通じなさそうだからね。早速案内頼むよ。」
「ハイデス!! 私についてきてくださいデス!」
アルラウネが歩き出したので、それについていく私達。牛さん達の捉えられている場所へと到着すると、アルラウネが悲しい顔をしてつぶやいていた。
「そ、そんな、、、。あれだけいた牛さん達がこれだけしかいない、、、。」
かなり落ち込んではいたけど、久しぶりに再会できたのが嬉しかったようで、アルラウネ達は牛さん達のところへと走って行った。牛さん達もそれに気付いたようで心なしか嬉しそうだった。というか、言葉わからないから察するしかないんだよね。
せっかくの再開だし、こころゆくまで会話を楽しんでもらおうと思って、その場に腰をかけると、マーブル達は牛さん達の方へと向かって行った。牛さん達がどう思っているのかはさっぱりわからないけど、マーブル達が嬉しそうに走り回ったりしているから、恐らく牛さん達も楽しんでいるのだろう。そんな光景をホッコリと眺めてしばらくのんびりしていた。
ある程度時間が経ち満足したのだろうか、マーブル達が戻ってきた。膝の上に代わる代わる乗ってきたので、モフったりおにぎったりして感触を楽しんでいると、アルラウネがこちらにやって来て申し訳なさそうに言ってきた。ほぼ間違いなく頼み事だろう、内容も多分アレだな。
「ご主人、お願いがあるデス、、、。」
「牛さん達を迎え入れるのね? いいよ。」
「えっ? まだ何も言ってないのにわかるデスか!?」
「いや、普通にわかるよ。でも、大丈夫? 食堂まで歩いて行ける?」
「ゆっくり行けば大丈夫だと思うデス、、、。」
「わかった。じゃあ、ゆっくり戻ろうか。でも、それだけだと退屈だから、いろいろと採取してもらうよ、それが条件ね。」
「ハイ! ありがとうデス!!」
アルラウネは嬉しそうに牛さん達のところへと行くと、植物組のみんなと一緒に牛さんを先導してこちらに来た。って、デカっ! 以前いた世界の牛よりデカいぞ、これ。ちなみに連れて行く牛さんの数は3頭だ。子牛が1頭に成牛が2頭か。しかし、どんな種類なのか気になるな、アマさん出番です。
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『ミルギュウカウ』・・・牛の魔物じゃな。ミノス族とは違って攻撃的ではないが、怒らせると突進攻撃が厄介じゃぞい。ちなみに牛のくせに肉は美味くないんじゃな、これが。その代わりに超良質のミルクを出してくれるぞい。ただ、そのときの機嫌によって味は変わるから、くれぐれも大切に育てるんじゃぞ。それと、魔物じゃから、雄と雌の区別はなくミルクを出すから安心して欲しい。
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名前そのまんまやん、、、。まぁ、下手に名前変えられるよりはいいか。しかし、肉は美味しくないか、、、。食べないけどさ、、、。それと機嫌によって味が変わるのか。まぁ、その辺は植物組のみんながどうにかしてくれるだろう。私もどうこうする気はないし、美味いミルクさえ出してくれればこちらとしても文句はない。
さぁ、牛さん達とご対面です。と思ったら、子牛がこちらに向かって走ってきていた。健康状態がよろしくなさそうだったから、速さはそれほどでもなかったので受け止めてみたけど、流石は牛、子牛とはいえあの牛の子供である。吹き飛ばされそうになりながらもなんとか踏ん張って耐えた。
植物組のみんなは私に攻撃してきたのかとヒヤヒヤしていたらしいけど、マーブル達が平然としているのを見て落ち着いたらしい。そう、甘えてきたのだ。しきりに鼻をこちらにこすりつけては舐めたりする。端から見ていると可愛らしいのだけど、やられる方としては服が唾液でベッタリしてしまうので勘弁して欲しいというのが本音だ。あと、バッチィから舐めてはいけませんよ。
頭の部分をひとしきりモフった後、ライムにキレイにしてもらってから帰りの途に就いた。途中で休憩を挟みつつ進んで行ったが、特にこれといった襲撃という名のイベントは起こることなく無事にモフプヨ亭まで到着。
救出イベントにしても突然のことだったので、当然牛達の居住スペースはおろか、牧草地域なんてものも存在しない。当座は植物組のみんながどうにかしてくれるのだろうけど、どちらにせよそういったものが全く無いので、しばらくは結界でどうにかするしかないかな。
マンドラゴラ達から話を聞くと、牛とはいえ魔物なので、食事に関しては草が好物ではあるけど、普通に肉も食べられるとのこと。とりあえずそれなら何とかなりそうだとホッとしながらも、魔物なら何でもアリかい! と少し突っ込みたくなったのは気のせいではないと思う。また、居住地域などの生活に関しての場については任せて欲しいと言われたので任せることにした。
とりあえず、時間も時間なのでメシだメシ。ということで、食事の準備にとりかかることにした。もちろんメインは先程狩った黒牛達である、本当は熟成させてから食べたかったんだけど、黒牛にしろ! とマーブル達が目で訴えていたからね、、、。
ということで解体タイム。1頭の黒牛を空間収納から取りだしてまずは血抜きである。ブラックミノスの血については使い途はなさそうなので、躊躇せずに水術で抜き去っていく。水術によって押し出されていく血をマーブルが風魔法で上空まで上げてから超広範囲に広げていく。それにしても、やはりデカいだけあって、出てきた血の量もシャレにならないくらい多かった。やはり試しというのはしてみるものだよね。
血抜きが完了したら、今度は切断作業であるが、その前にライムに一通りキレイにしてもらってからである。ジェミニは最初に皮と肉をキレイに分けてくれた。ちなみに皮だけど、見事な一枚の大きな皮にしてくれた。これは高く売れそうで助かる。もちろん上位種の皮についてはこちらで取っておいて自分たちで使う予定である。実際に使うかはわからないけど、、、。
ちなみに解体結果はこちら。内臓は割愛ね。
ブラックミノスの大皮 ・・・ 1枚
ブラックミノスのサーロイン ・・・ 40kg
ブラックミノスのロース ・・・ 80kg
ブラックミノスのリブロース ・・・ 35kg
ブラックミノスのバラ肉 ・・・ 65kg
ブラックミノスのヒレ肉 ・・・ 10kg
は? これ1頭分、しかも通常種のやつですが、、、。肉だけで230kg? モツやハツもこれに加わると一体どれだけ? いや、沢山食べられるから有り難いんだけど、こんなのがあと50体以上もあるのか、、、。まぁ、今後手に入るかわからないからそのくらいあった方がいいのか、ということで納得しておく。どちらにせよ今日は時間がないから、内臓料理は後日だね。内臓は足が速いからさっさとしまっておこうか。
では気を取り直して、今日はステーキ祭りじゃぁ!! ということで、マーブルとライムに200gくらいの大きさにそれぞれカットしてもらうことにした。これだけの量であっても、マーブルとジェミニならすぐにやれてしまう。しかも、お肉祭りと言うことで2人ともテンションは高いのであっという間だろう。
ライムには、岩塩を細かくする作業を頼んだ。深めの石の入れ物に岩塩を入れると、ライムは一部を硬質化して硬質化した部分をブレンダーのような形にして自ら回転をし始めると、岩塩はガリガリと砕けていき、ライムがその場所から出ると、良い感じの大きさの塩が完成。今日はこれを振って食べるのだ。ついでに下味用のさらに細かくした塩を用意してもらった。
この恐ろしいほどの手際と連携に他の住人達は唖然と見ていたが、もちろん彼らにも働いてもらいますよ(新住民の牛さん達は別)。マンドラゴラにはジャガイモなどの調達、マンドレイクは香辛料の調達、アルラウネには香草の調達をそれぞれ頼み、ドリアードは木の実の採取、トレントは運び係、スズメ達には上空の偵察かがりをそれぞれ頼んで任務開始である。もちろん敬礼などの一連の行為が含まれている。
私はその間に、下味用の塩と手持ちにあったコショウを肉にすり込んだり、スープの準備などをしていた。
みんながそれぞれ準備をして戻ってきたところで本調理に入った。本調理では基本私とマーブル以外に出番は食器を並べたりすること以外に出番はないので、食器を並べ終わるとすることがなくなり暇になる。暇になったみんなはどうしているかというと、最初こそはみんなで遊んでいたりするのだけど、そのうち匂いに釣られてしまいこちらに来ていつ終わるのかと見に来てしまうのだ。正直落ち着かないから大人しく座って待っていてくれると助かるのだけど、、、。
そんなこんなでどうにか完成したので、夕食会の開催である。
「では、食材となった者達に感謝して、頂きます!!」
いつも通りの私の音頭で夕食を食べ始める。どの位食べられるのかわからなかったので、各部位3kgずつ焼いたのだけど、どうだろうか? 今日はそれほど時間もなかったので、塩コショウや香草などで味付けしているだけなんだけど、喜んでくれるかなぁと思っていたが、完全に杞憂だった。
いつもであれば、「美味い」などの声が聞こえるところなのだけど、今回はみんな無言で食べていた。そう、カニさんを食べているときの感じである。実際に食べている私でも、今は食事に集中したいくらいに美味い。
以前いた世界では、最高級の肉というものは食べたことはないけど、それでも結構な値段のする肉は食べたことはある。今食べている肉については明らかにそれを凌駕している。ある意味、魔物のランクが高いほど肉が美味いというのは非常にわかりやすくて助かるのが本音だ。そんな美味い肉を、マーブル達と一緒に楽しんで食べるということがどれほど幸せで楽しいことかとかみしめながら静かに肉の味を楽しむのだった。
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