第33話 牛乳以外も手に入りそうです、ハイ。

前回のあらすじ:アルラウネに頼まれて牛さんの保護決定。



 アルラウネ達に案内してもらい道中を進んでいるが、こちらを襲ってくる魔物はストレイトウルフ達くらいで、他の存在は確認出来ていない。確認された魔物達は、もちろんマーブル達がサクッと倒して素材を確保して進んでいるが、そのストレイトウルフ達の襲撃も散発であり、集団でこちらに来ているわけではない。


 ほとんどが、ランサークラスであり、良くてトライデントクラスが2体ほど出てきたくらい。得意の集団戦を仕掛けてこないあたり、恐らく偵察任務程度ということになる。しかも、指示を出しているのが同じウルフでないことが窺える。ということは、何らかの上位種の魔物がストレイトウルフの一集団を支配しているという結論につながる、と思う。


 さらに進んで行くと、ストレイトウルフ達の襲撃の回数も増えてきており、これは目的の場所に近づいてきている、ということでもある。数においても、今までは3体一組で襲ってきていたものが、今では5体になっている。また、トライデントクラスも増えてきており、たまにロンギヌスクラスまで来ていた。ごちそうさまでございます、美味しく調理することを誓います。


 こちらの予測通り、アルラウネからもうすぐ牛さん達のいる場所に到着しそうだと言ってきた。ということで、頑張って偵察任務をこなしていたスズメさん達に調理していないけど、狩って解体したばかりのロンギヌスクラスの肉をあげて、休憩するように伝えた。スズメ達は美味しそうにお肉をついばんで、トレントの所に戻っていった。


「これより警戒を強めますので、ジェミニはアルラウネとトレントと一緒に先頭に行ってください。マーブルは周りの警戒をよろ。ライムは、アルラウネとトレント以外の植物族のみんなを護って。」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」


 うん、いつもながら可愛らしい敬礼である。見慣れているとはいえ、可愛いものは可愛いのだ。最近はその可愛さに気配探知を思わず忘れてしまいそうになったりするが、何とか堪えていた。


 しばらく進んでいたが、ストレイトウルフ達もそうだけど、その他の魔物にも襲われることはなかった。上位種が範囲指定で探索を指示しているのであろう。


 さらに進んで行くと、ようやくストレイトウルフ達ではない存在を探知することができた。あちこちを動き回っているが、どうやらその存在は2本足のようだ。恐らくこちらの方面の偵察部隊から連絡が来なくなり、いろいろ動き回っているのだろう。

まぁ、仮にこちらに来ても報告には行かせないけどね。


 ジェミニも2本足の存在に気付いたようで、アルラウネとトレントに警戒するように伝えていた。その間にも気配探知内の魔物の数は増えていった。正直上空からの情報も欲しいけど、スズメ達では荷が重いのであきらめる。


 詳しく状況を把握したいので、みんなには一旦止まってもらい、改めて気配探知をしてみると、そこは何らかの集落になっているようだ。恐らく2本足の魔物の集落なのだろう。あるいは、ストレイトウルフの巣を集落にしたのかもしれない。いずれにせよ数が多くて、移動しながらの把握は少し大変である。


 探知の範囲を少しずつ広げていくと、ストレイトウルフとは違う4本足の魔物の存在を確認出来た。その4本足の魔物だけど、ほとんどその場から動いていない、いや動けていない状態である。多分その4本足の存在が、アルラウネの言っていた牛乳をくれる牛さんなのだろう。


 2本足の魔物の存在を目視できるようになったので、鑑定をかけてみる。では、アマさん出番です、お願いします。


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【ブラックミノス】・・・2本足で行動する牛型の魔物じゃ。体が大きく筋肉質ではあるが、大食漢のせいか、脂肪もそこそこ含まれているぞい。ワシの説明から察することが出来ると思うが、上質の肉が手に入るようじゃな。場所によって味が変わるみたいじゃぞ。個々の強さもあるが、基本集団で行動するため、この世界では滅多に手に入らない高級品のようじゃぞ。・・・先程からトリトンからの催促がうるさいのじゃが、、、。

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 ・・・陛下、何してるんですか、、、。とはいえ、これはいいことを聞いた。これを聞けば、マーブル達も張り切るだろう。どうせこちらは少人数だから、奇襲して牛さんだけを連れて行くのは正直厳しい。だったら殲滅してお肉もついでに頂くとしましょうか。ダークブルもヘルボアも十分美味しいけど、用意できる肉の種類はたくさんあるに越したことはないでしょう。


 ・・・とか考えていると、その前にジェミニが牛肉、いや、ブラックミノスの存在に気付いたようだ。そんなジェミニの様子に気付いたライムも向こうを確認したと思ったら、こちらに飛びついて来た。ライムもプニプニで非常に心地よいのだ。


「あるじー! おにく、おにく!!」


「ミャア!!」


「アイスさん!! あれは、間違いなく美味しいお肉ですよ!!」


 ブラックミノス達を狩る気満々になったマーブル達に反して、植物族のみんなは足がすくんでいた。


「ま、まずいです! あ、あれは、ブ、ブラックミノスデス!!」


「み、見つかったら、こ、殺されるデス!!」


「あ、みんな、大丈夫だよ。私達に任せて欲しい。」


 植物族達は、震えながらも頷いた。


「ご、ご主人、だ、大丈夫ですか、、、?」


「大丈夫だよ。それにさ、アルラウネが言っていた牛さんって、向こうにいるから、どちらにしてもこいつらをどうにかしないと無理だよ。」


「そ、それはそうなのですが、、、。」


「とにかく、大丈夫だから。こちらとしては、美味しい牛乳だけでなく、お肉まで手に入るんだから、この機を逃すわけにはいかないんだよね。」


 私がそう言うと、マーブル達も頷いていた。


「と言うわけで、今回の作戦ですが、申し訳ないけど、ライムはみんなを護って上げてね。あの牛ならライムでも倒せるけど、恐らく時間がかかるから。護るだけなら簡単でしょ。」


「わかった、みんなをまもるね!!」


「うん、頼むね。ところでマーブル。私の探知では35体確認したけど、マーブルの方ではどのくらい確認出来た?」


「ニャア、ニャ、ニャア。」


「アイスさん、54体のようです。で、隊長クラスが5体、ボスが1体だそうです。」


「なるほど、私ではそこまではわからなかったよ、ありがとう。では、作戦を伝えます。マーブル隊員は、まずは牛さんの安全を確保しておきたいので、牛さんのところに向かってください。牛さんの安全が確保できたら殲滅開始です。もちろん、途中で遭遇したら倒してもらっても構いません。」


「ミャア!!」


「ジェミニ隊員は、マーブル隊員が左側を目指しますので、逆方向である右側を進んで殲滅しまくってください。で、2人だけでなく私にも言えますが、今回の殲滅戦は、あくまで食材の確保もかねておりますので、首狙いで行動してください。ライム隊員はみんなの安全確保と、牛肉達の血抜きが今回のメインです。あ、そうだ、倒したお肉達はこの袋に入れてくださいね。」


「了解です!!」


「わかったー!!」


 3人の敬礼を確認してホッコリしたところで、ジェミニとライムにそれぞれ収納袋を渡しておく。ライムは万が一の時用である。


 集落の方では相変わらず牛肉、いや、ブラックミノスが動き回っていた。ストレイトウルフ達は、やはりこちらにはやってこない。一部では私達の存在に気付いたものがいるようだが、ブラックミノスに報告に行く気配が全く感じられない。どうやらバタバタしているせいで、新たな命令が出されていないようだ。命令無しに動いていないのは、無理矢理従わされたからだろう。絶対服従の線も捨てられないけど、まぁそんなことはどうでもいいか。


 気配探知での確認と作戦を伝えて、ライムとアルラウネ達には待機してもらい、私達だけでさらに進んで行くと、ある程度集落の全貌が見えてきた。うん、作戦通りでいいかな。この集落はある程度しっかり作っているようで、入り口には見張りも存在していた。


 気配探知を強めながら先を進むと、ようやく全貌がわかったので、とりあえず牛肉達の退路を断つために、正面の入り口以外には水術で氷の結界を張って出られないようにしておく。そういう準備を整えつつ私達が入り口に向かって進んで行くと、ようやく牛肉達は私達の存在に気付いたようだ。どうやらブラックミノスという魔物は偵察力はかなり低いと言える。もちろん、集団であることに加えて個々の強さもあるようなので、それでも問題無かったのだろう。


「「ブモォーーーー!!」」


 ありゃ、問答無用で襲ってきたよ、、、。八つ裂○光輪さながらの氷の輪、これからは円氷とでも名付けましょうかね、円氷を水術で作り出して攻撃開始しようと思ったら、マーブルとジェミニがそれぞれ門番達の首を切って収納してしまった。しまった、先を越された! とか少し思ったけど、獲物はタップリいるんだ、これからぶっ倒していけばいいや、と思い直して、改めて号令をかける。


「では、戦闘開始です!」


 私の号令の後で、直ぐさまマーブルは左側、ジェミニは右側へとそれぞれ走っていった。私はといえば、正面からガンガン戦いますよ。門番が倒されて私達が侵入してきたことに気付いた黒牛達が次々とこちらに向かって来ている。


 黒牛達は、それぞれが喰らうと痛いどころでは済まなさそうな大きい斧を両手に持っている。ほとんどが石斧だけど、少数ではあるけど、金属製の斧を持った者も見かける。恐らく、身分によって武器の素材が異なるのだろう。とはいえ、その見かけだけで判断するのは早計である。石でできていようと、金属でできていようと、それぞれ効果は異なるだろうけど魔法付与も可能である。まぁ倒せばどれも変わらないけどね。


 襲ってくる黒牛達の斧を躱しつつ、円氷を投げつけて首を狩っていく。投擲スキルもあるのだろうけど、これ結構威力あるね。8体くらいを倒した頃、金属製の斧を持った黒牛が襲ってきた。


 隊長クラスだけあって、体は一回りくらい大きい。また、その攻撃は早く、狙いも正確ではあったけど、それだけだった。側面に回り込んで膝裏に蹴りつけて体勢を崩した後に円氷を投げつけて首を刎ねて終わり。さあ回収回収。


 さらに進んで行くと大きな建物が見え、そこには先程の隊長クラスよりもさらに大きい存在を発見した。恐らくこいつがボスだろうな。ボスは生意気にも知能があるらしく、こちらの言葉で話してきた。


「人間風情が、ここに何しに来た?」


 折角なので正直に目的を伝えましょうかね。


「どうも、食堂モフプヨ亭の者です。牛肉の仕入れをしにやってきました。」


 その言葉を聞いて、ボスの表情がさらに凶悪になっていった。それを察した取り巻きの黒牛達が襲ってきたが、今度は攻撃をされる前に円氷を投げつけて終了。もちろん回収は忘れない。


「大漁、大漁。」


 嬉しそうに倒した黒牛達を回収していると、目の前にいるにもかかわらず、あたかも存在していないような態度を取られた上に、自分の手下達が倒されていく様子を見て我慢できなくなったのだろう、雄叫びを上げながらこちらに向かって来た。


 怒りで我を忘れているようで、その攻撃はどれだけ鋭くても単調であるため、躱すのはたやすかった。倒すのはいつでもできるけど、別の場所ではマーブルやジェミニが黒牛達を調達して廻っているため、もう少し時間稼ぎが必要だろう、とはいえ、このまま躱し続けても、相手のラッキーパンチがこちらに当たるとも限らない。流石にラッキーパンチを1発でも喰らってしまっては、こちらも無事では済まないのだ。


 折角なので、ボスの指を狙って指をそれぞれ2本ずつ円氷で切断すると、思った通り斧を落としたので、ここからは格闘戦で挑んでみた。武器を頼って戦闘している者というのは、武器が無くなった瞬間にパニックに陥るが、そこは流石はボス、武器が使えなくなっても慌てずに肉弾戦を挑んできた。


 とはいえ、体格差が大きすぎるので、普通に戦っていては、上半身には届かない。ということで、私はまず足を潰すことにして、側面に回り込んでは膝への蹴り込みをし、正面では狙った箇所にローキックを当てていく。


 そうやって、しばらくボスの足を攻撃していると、ついに膝の部分を壊すことができたと同時くらいにマーブル達が戻ってきたので時間稼ぎは終了。そのまま膝を突いたボスに円氷を投げつけて首を刎ねて終了。


【本日の釣果】・・・ブラックミノス54体

内訳・・・ボス1体 討伐者 私1体

     隊長クラス5体 私1体、マーブル3体、ジェミニ1体

     兵隊クラス48体 私10体、マーブル13体、ジェミニ25体

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