第32話 うちの住民達から依頼が来ました、ハイ。

前回のあらすじ:スズメさん達が住民に加わりました。



 テシテシ、ポンポン、ツンツン、、、。いつもの朝起こしです。貴族時代は10代の青年であったから、疲れもなくなるくらいスッキリしたものだけど、今回は再び30代のオッサンに戻ってしまったから、多少疲れは残ってしまっている状態だ。それでも、マーブル達にこうして起こしてもらっているおかげで心の疲れが無い状態で朝を迎えることができているんだけどね。


 水術で顔を洗って、マーブル達を一通りモフッ足りおにぎったりして感触を楽しんでから、朝食はどうしようかと考えながら外へと出る。


「今日も点呼開始デス!」


「イチ! ニ! ・・・・チュチュン! チュチュン!」


 ほう、スズメ達もマンドラゴラ達植物の住民達と一緒に点呼に参加しているね。これはこれでいいものだと思う。


「ご主人! 総勢7名以上なしデス!!」


「あれ? いつもは君達だけでやるものじゃないの?」


「どちらにしろ、ご主人が来たときにノリでやっていたものデスから、今日からはご主人達に報告をしようということになったデス!」


「そうでしたか、報告ご苦労様。」


 マンドラゴラ達が敬礼をする。スズメ達はどうしているのか見ると、右手側をサッと挙げていた。いや、これも非常に可愛らしくて結構!! マンドラゴラ達の後で、マーブル達も敬礼をしたので、最後に私が敬礼をして1、2秒固定した後下ろす。その後でマーブル達が下ろしてから、最後にマンドラゴラ達が下ろす。みんなキレイに揃っていてそういった所にも見所がある。ただ可愛いだけではないのだ!!


 ・・・それにしても、マーブル達は私が敬礼を下ろした後にしっかりと下ろしてくるんだけど、一度もこっちを見ないで下ろせているんだよね。しかもしっかりと3人きっちり揃ったタイミングで下ろしている。どうやって確認しているんだろう。


 まぁ、気にしてもしょうがないか。分からないものを理解しようとするのは時間の無駄である。どうせ聞いてみても、そのくらい楽勝! という返事しか返ってこないだろうしね。


 住民達による可愛らしい点呼を行った後、朝食となった。今日の和食はストレイトウルフの肉を使ったステーキ丼である。朝っぱらからステーキとは胃がもたれそうなメニューではあるけど、それらしかないのだから仕方が無い。一応ハンバークで購入した海の幸はあれども、流石に朝からカニとかタコとかは食べようという気が起きない。ワカメについては、私程度の料理知識では、スープやサラダで使うのが精一杯である。


 住民のみんなも交えての楽しい朝食も終えたところで、アルラウネが話してきた。


「ご主人、1つお願いがあるデスが、、、。」


「ん? お願い? 何か畑に不満な点が見つかった?」


「いえ、ここの畑はとても過ごしやすいデス。畑については不満は無いデスが。」


「畑ではない、と?」


「はいデス、実はデスね、ワタシ達はこう見えて牛乳が大好物なのデス!」


「ほう、牛乳が大好物? 確かにそうは見えないよね。正直、どうやって体に取り入れるか非常に気になるところだけど、そこは聞かないでおこうか。」


「・・・ご主人、何を想像しているかわからないデスが、普通に口から飲むデスよ。現に、さっきのご飯だって、口から食べてたじゃないデスか!!」


「確かにそうだった。ゴメンね。で、その牛乳だけど、森で手に入るの?」


「はいデス!! この森で、おいしい牛乳をたくさん出してくれるウシさんがいっぱい住んでいる場所があるデスが、最近はその場所に何かが現れてしまって、ワタシ達では近寄れなくなってしまったデス。そればかりか、ウシさん達自身もそいつにやられて数が少なくなってるデスので、牛さん達が心配デス、、、。」


「なるほど。それで、私達にその何かを追い払うか倒すかして欲しい、ということで間違いないかな?」


「はいデス、、、。」


 マーブル達を見ると、「ミャア!」「倒しに行くです!」「おにくー!」とみんなそれぞれ乗り気なのが見て取れた。・・・ちなみにライムさんや、倒しに行くのは牛さんでない方だからね、、、。まぁ、その辺については、行きながら説明してもらえばいいか。私? 説明しませんよ。だってね、一瞬だって勘違いとはいえライムのションボリした顔を見るのはつらいですからねぇ。


「うん、いいよ。マーブル達も乗り気だし。でも、どこかわからないし、その何かというのが皆目見当がつかないから案内はお願いしてもいいかな?」


「ご主人、ありがとうデス!! もちろんワタシ達で案内するデスよ!!」


「ということで、今日の予定が変更されましたので、マーブル。臨時休業だとわかるように、いつもの道を解除しておいて。」


「ミャア!!」


 マーブルは可愛く鳴き、右手(右前足?)を前に出すと、その右手から黒い魔力が出てきたかと思うと、すぐに消えた。で、何をしたかというと、普段はモフプヨ亭への道には、魔物避けの魔法を施してあり、道の上を歩いている限りは安全に辿り着けるようになっているが、今日は臨時休業なので、店やってないよ、ということを伝えるためにその魔法を解除したのだ。


 魔法を解除しておけば、道の上を歩いていても、魔物達に遭遇してしまうので、一見さんならともかく、常連さん達はそれで、今日は休みであることが伝わるのである。


「よし、これでお客さんには伝わるな。それで、みんなは出発する準備はできているかな?」


「問題無いデス、いつでも出発できるデス!!」


「ミャア!」


「アイスさん、ワタシ達も準備完了ですよ!」


「あるじー、いつでもいいよー!」


 みんなは準備完了しているみたい、ってか、準備が必要なのって私だけか!? 考えてみれば、マーブル達はいつもこんな感じだし、植物の住民達も特にこれが必要とかないようだし、スズメ達は、トレントに乗るだけだもんな、、、。


 かく言う私も、実はいつでも出られるように準備はしてある。何しろ武器防具なんて無いし、空間収納があるから、食料や水についてはタップリ用意できている。というか、必要、いや、現段階で用意できるのは、着替えと食料と水だけという状態であるので、正直準備も何もない状態というのが悲しいところ。一応念のため、モフプヨ亭に戻って、何か忘れていないかを確認したが、大丈夫そうだったので、モフプヨ亭を出ると、何故かみんな整列して待っていた。


 先頭の列は、左からジェミニ、マーブル、ライムという並びで、その後ろにマンドラゴラ達植物組が並び、一番左に並んでいるトレントの枝にスズメ達が留まっていた。何これ、もの凄く可愛いんですが、、、。


 私がマーブル達の前に立つと、マーブルが「ミャッ!!」と可愛らしくもキリッとした声で鳴くと、その可愛い声が号令だったようで、一斉に敬礼をした。何か最近こんなノリが多いよな、とか思いつつ、それに乗る私も私であるが、付き合わないというのは、それはそれでに失礼にあたるので、付き合うことにする。


 私がビシッと敬礼を返し、その体勢のままみんなを見渡した後にその右手を下ろすと、マーブル達がまずは下ろし、次にマンドラゴラ達が下ろした。あ、ここは順番変わらないのね。ちなみにスズメ達は植物組と同じタイミングで下ろしている。それぞれ下ろすタイミングもバッチリ揃っているのは日頃の行動の成果なのだろう。


「これより牛さん救出作戦を行うべく出発致します。先頭は案内役であるアルラウネ、並びにその護衛としてトレントにお願いします。その後ろは、マンドラゴラ、マンドレイク、ドリアードです。君達は食べられる植物などの探索です。今現在私達の畑にはないものを優先でお願いします。殿(しんがり)は私が務めます。マーブル、ジェミニ、ライムはみんなの護衛をお願いします。スズメ達には空から偵察をお願いします。」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」


「「「「了解デス!!」」」」


「「チュチュン!!」」


 とは言ったものの、くそ真面目に役目を果たす必要はない。こういうのはノリだ、ノリ。みんな、とにかく無茶はしないでね。


 アルラウネを先頭に道中を進んでいくが、流石は植物たちである。次々に食べられそうな植物を見つけてはガンガン袋に入れていた。ちなみに袋だけど、これは植物組が作ってくれたものだ。伸縮性には乏しいけど、手触りも心地よく、丁寧に作られているのがよくわかる。もちろん、これらの袋にはマーブルが空間魔法を付与してマジックバッグにしてあり容量はかなりあるので安心である。


 また、スズメ達はスズメ達なりに偵察などを頑張ってくれていた。魔物を発見したら、直ぐさまマーブル達に伝え、それをマーブル達がその魔物を倒してくるという感じで上手く連携が取れていた。まぁ、実際にはこちらでもその魔物の動きは把握しているが、基本はスズメ達の報告を優先に動いている。スズメ達も頑張って自分たちの任務を精一杯果たそうとしているのだ。それに水を差すわけにはいかない。


 言うまでもなく、スズメ達では荷が重い場合、例えば、ストレイトウルフの上位種なんかの場合は私の水術で足止めして、マーブルが密かに風魔法で仕留め、ライムやジェミニがこれまた密かにそれを回収する、ということもあったが、大抵はスズメ達だけでもどうにかなっていた。ってか、私の出番がほとんどないのですが、それは?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る