第31話 住民ではないですが、ちょこちょこ増えてますね、ハイ。
前回のあらすじ:マンドレイクとトレントが新たに住民に加わった。
唐辛子を栽培できるようになってついにペペロンチーノが完成し、ニンニクソース版のペペロンチーノの虜になったマーブル達により大量生産も可能となったので、定番メニューに追加してみたところ、売り上げが倍増したのは驚いた。
ペペロンチーノの登場によって、3種類のミートパスタが出なくなったかといえばそうではなく、それを食べたお客さんがペペロンチーノとボロネーゼを両方頼むようになったのである。・・・両方頼まれるようになったけど、それぞれの量についてはそのままなんだよね。つまり、今までの倍を食べているということである。
基本、ここに来てくれるのは冒険者が多いというのもあるだろう。冒険者達はパスタを頼む場合は例外なく2つのパスタを注文していく。たまに冒険者に混じって商人やら冒険者の卵やら一般の住民やらが来たりするが、彼らはそこまでは大量には食べられないので、それぞれ別メニューを選んで、それを分け合って食べたりしていることが多い。
まぁ、何にせよ美味しく食べてくれている、その事実が一番嬉しい。今は種類や量の確保が難しいので、数種類しか出せていないし、定番メニューのみしか提供できていない状態なので、いずれは定番メニューを増やすこともそうだけど、限定メニューも恒常的に出せるようにしていきたいとは思っている。幸いにも時間停止の空間収納があるので、作りすぎても基本腐らない。そう考えると、以前いた世界で飲食を経営している人達凄ぇって思う。
ニンニクの在庫についてだけど、こちらは何とかなっている状況かな。ハンバークの村に持ち込んだ商人が、あれ以降は大量に卸してくれるようになったのが大きい。もちろん、定期的に私達が購入するようになったのもあるけど、何より実際にあの商人が村でニンニクの丸焼きを食べ、ニンニクの美味さを知ったようだ。
ニンニクの虜になってしまったその商人は、持ち込んだ大量のニンニクの一部を丸焼きのニンニクにしてもらい持ち帰るほどらしい。しかも、ニンニクの丸焼きを持ち帰るために、貴重なマジックバッグを新たに購入するほど熱を入れているようだ。しかも、そのバッグ、容量は馬車の半分程度くらいしかない程だけど、時間停止の付与がついている高価なものだそうだ。そのバッグを購入するために、財産の半分をつぎ込んでしまったと笑っていたそうだ。
・・・商人の財産の半分をそれだけのためにつぎ込むって、凄ぇな。まぁ、回収の目処もしっかりと立てているとは思うけどね、、、。いや、少し心配になってきたな。一応畑ではニンニクを1本育ててはいるけど、5本くらいに増やしておくとしますかね、、、。
そんなことを思いつつも定期的に仕入れることができそうでホッとしつつ、他の海の幸も一通り購入してモフプヨ亭へと戻った。・・・そういえば、ストレイトウルフ達の肉も少なくなってきているかな。後で狩っておかないとね。
仕入れも済んで、マーブル達やマンドラゴラ達とのんびり栽培やら狩りやら採集やらして過ごすこと数日後、畑には鳥達が顔を出すようになっていた。どうやら、この辺りが安全だということを感じ取ったらしい。
どの鳥達も争うことなく、テリトリー毎に棲み分けができているようで、それぞれの行動を見ては癒やされている。たまに鳥達が楽しそうに遊んでいるのを見て、マーブル達が一緒に遊ぼうと鳥達へと向かって行くのだが、不思議なことに、鳥達も逃げることなく一緒に遊んだりしている。ウサギであるジェミニや、スライムであるライムについてはそれほど驚くことではないけど、猫であるマーブルでさえも逃げることなく一緒に遊んでいるのは驚き以外の何者でもない。そのおかげで、一緒に遊んでいるマーブル達を見ていつも以上にホッコリと眺めていられるのは嬉しい誤算だ。
鳥達の方でも、普段はテリトリー内だけで戯れているのだけど、たまに一緒に遊んだりする光景が見られたりもする。・・・まぁ、争いを起こすのであれば問答無用で追い出すか始末するかはしますけどね、、、。鳥達もそれをわかっているのか争う様子はなさそうだけどね。
そんな中、テリトリー内で戯れているだけで、決して他の鳥達と交わろうとしないつがいの鳥がいる。見た感じ思いっきりスズメなんだけど、何か様子が違う感じがするんだけど。特に、このスズメ達、他の鳥達とは仲良くしようとはしていないのだけど、ちょくちょくドリアードやトレントの枝に留まったりしている。ドリアードやトレントも「おおー、トリさんデス!」とか言って嬉しそうにしてたりする。
逆に他の鳥達は、普通の木には留まったりするけど、ドリアードやトレントには決して留まろうとはしない。・・・これはひょっとして? と思い鑑定にかけてみる。
-------------------------
「エンジェルスパロウ」・・・ふーむ、こりゃぁ何とも珍しい魔物じゃな。というか、まさか存在しているとは思わなかったぞい。しかもつがいでじゃ。見た目の通りかなり弱い鳥の魔物なのじゃが、こやつらが持っておるといわれる貴重な宝石のせいで乱獲されてのう、絶滅してしまったと思われとるのじゃ。お主のことじゃから大丈夫だと思うが、くれぐれも大切に扱ってくれるとありがたい。
-------------------------
なるほど、スパロウ、ね。つまりはスズメ、と。以前いた世界でも数が少なくなってしまい、あまり見かけなくなったけど、こっちでもそうなのか、いや、それ以上の状態か。まぁ、ここが安全だと思ったのなら、ここにいればいいよ。
さらに数日が経過した。私達はいつも通り、テシツンで起こしてもらって、顔を洗ったりして支度をして、外へと出る。
外に出ると、マンドラゴラ達がいつも通りの点呼を行っているのだけど、トレントの枝に先日のスズメ達が留まっていたのだ。いつもの敬礼の遣り取りを終えて解散となる前にトレントに聞いてみた。
「トレント、随分可愛らしい鳥が一緒にいるねぇ。」
「ご主人、可愛いでしょう! このトリさん達は最近ここに来たのデスが、何故か木には留まろうとせずに私達の処に留まろうとするデスよ。」
「うんうん、大事にしてあげなよ。一緒にいた方が楽しいだろうからね。」
「はい、ありがとうデス!!」
そんなこんなで朝食です。みんなでワイワイと食べていたのだけど、2羽のスズメ達が欲しそうにこちらを見ていた。・・・別に無視した訳じゃないけど、君達食べられるの? あ、魔物だから食べられるのか。現にマーブルやジェミニも私と同じもの食べて過ごしているしね。ライムは、スライムだからねぇ。
ちなみに今食べているのは、マーブルミートパスタ、そう、合い挽き肉のボロネーゼである。そのまま渡すと食べづらいだろうから、一本一本取りだしては少し細かくして2羽にそれぞれ別の小さい皿を用意して出す。もちろんお肉もしっかりつけてね。
「食べてみるかい? 気に入ってくれるといいんだけど。」
2羽のスズメにそれぞれ差し出すと、トレントに留まっていたスズメ達はテーブルに降りてきてついばみ始めた。そのついばむ姿は非常に可愛らしかった。
「「チュチュン!!」」
気に入ってくれたようだ。何故かマーブル達も嬉しそうにしていた。何故だかわからなかったけど、可愛いからよし!
あっという間に食べてしまったので、追加を用意すると、追加も結構な勢いで食べてしまった。よほどお腹が空いていたのだろうか、、、。仕方ないか、弱いから他の魔物に狙われるわ、貴重なアイテムを落とすかもしれないから、それ目当てで狙われまくるわで満足に食事もできなかったんだろう。
そんなことを思っていると、2羽のスズメ達から涙がこぼれていた。ビックリしてしまい、思わず「大丈夫か!?」と声を上げてしまったが、スズメ達はそれに驚くことなく更に涙をポロポロこぼしていた。
「チュン、チュン、、、。」
1羽のスズメが何かを言っているようだったが、私にはわからなかったけど、マーブル達には通じていたらしく、ウンウン頷いていた。マンドラゴラ達植物組も理解できていたようだった。しばらく私を除いた全員で会話をしていたようだった。ホッコリする光景だったからいいけど、ホッコリしなかったらぶっちゃけ、私だけ無視された気分だからね、これ。
しばらく会話をしていたので、ホッコリ見守っていると、一通り終わったようで、ジェミニが代表で話してくれた。
スズメ達は予想通りいろいろな存在に狙われていたらしく、ここに来るまでは気の休まる場所がなかったらしい。力尽きそうになった時に運良くこの場所にたどり着いたようで、そのときに助けてくれたのがマンドラゴラ達だったようだ。マンドラゴラ達はスズメ達にうちの畑の野菜を少し分けて食べさせてくれたらしい。マンドラゴラ達は勝手に食べさせたことに対して謝っていたけど、そういうことであれば全く問題はない。
命を助けられた上に、食べ物までもらったことに感謝はしつつも、今までのこともあって警戒していたようだ。トレントやドリアードが人に仕えていることに驚いたけど、ここの主人達はやさしいから大丈夫と何度も言ってくれたらしい。
そして意を決して、今日トレント達と一緒に点呼に参加? してみると、その後で何やら美味しそうなものを食べているので食べたくなったようだ。警戒しつつも食べてみると今まで食べたことがない位美味しかったようだ。危害を加えられることがない上にこれほど美味いものを食べさせてもらえて感動のあまり泣いてしまった、ということのようだ。
ちなみに、狙われる原因となったのは、このスズメ達が泣いたときに出てくる涙らしい。これからもここにいさせてもらえるのなら、いつでも提供すると言ってきたようだ。・・・何かやばそうだけど、とりあえず鑑定してみますかね。
-------------------------
「スパロウズティアー」・・・ほう、これがスパロウズティアーか、綺麗なものじゃな。これは宝石としてかなりの貴重品じゃな。綺麗な上に、これを出すエンジェルスパロウ自体がおらんからな。どれだけ貴重かはこれ1粒をめぐって戦争が起きたこともあるほどじゃ。それがこれだけあるとなると、のう、、、。
-------------------------
・・・まじか、、、。とりあえず危険だからしまっておこう。
とりあえず、ここが安全だと思ったのなら、好きなだけいてくれて構わないけど、普段はマンドラゴラ達の仕事を手伝って欲しい、ということを伝えると、スズメ達は嬉しかったのだろうか、私の肩に留まって「チュンチュン!!」と鳴きながら、羽をバタバタさせていた。・・・何この可愛い生き物、、、。
それを見たマーブル達も負けじと私の所に飛びついて来た。なんというご褒美。
というわけで、新たに2羽のスズメがうちの畑の住人となった出来事でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます