第30話 また住人? が増えましたです、ハイ。

前回のあらすじ:満足のいくペペロンチーノが完成した。



 テシテシ、テシテシ、ツンツン。いつものように起こしてもらって今日という一日が始まる。朝食の準備をしてから外に出る。外にはいつものようにマンドラゴラ達が集まっている、、、。ん? 何かまた増えてるぞ、、、。


「全員整列デス!」


 マンドラゴラの号令の後、今までいた2体と新たに増えた2体がマンドラゴラに向かうようにして横一列に並んだ。


「点呼開始デス!」


「イチ!」「ニ!」「サン!」「シ! 総員4名以上なしデス!!」


 号令が終わった後、私達の姿を確認したマンドラゴラ達は、私達の正面へといそいそと移動してきた。・・・この子達、案外器用に移動するもんだね、、、。しかも移動している原理がさっぱりわからない、、、。


「ご主人、並びに、マーブル、ジェミニ、ライムのお三方、おはようございますデス!!」


「「「「おはようございますデス!!」」」」


「みんな、おはよう! ところで、新たに2人増えたみたいだけど、、、。」


「ハイデス! ご主人に紹介致しますデス! こちらはマンドレイクデス! 私に近い一族デスが、私達マンドラゴラは育成が得意であるのに対して、マンドレイク達は植物の種や苗などを調達するのが得意デス! もちろん育成もできるデス!」


「マンドレイクデス! ご主人、よろしくお願いしますデス!!」


「私はアイス。ここの食堂を経営しているんだよ。何か美味しそうな植物を見つけたら教えてね。とはいえ、無理をしてはダメだよ。ところで、マンドレイクもマンドラゴラ達と同じ理由で?」


「ハイデス。ここに来れば安全とマンドラゴラ達から聞いて来たデス。お仕事頑張るデス!!」


「ありがとう、期待しているよ。」


「ご主人! 次はこちらのトレントを紹介致しますデス! トレントは畑のお世話は苦手デスが、その分戦闘が得意デス! まだまだ成長途中なので、そこまで強くはないデスが、すぐに強くなるデスから、私達同様お世話して欲しいデス!!」


「私はトレントと申すデス。マンドラゴラ達から話を聞いて、こちらでお世話になろうと思って来たデス。今はお役に立てないかもデスが、すぐにお役に立てるよう頑張るデス!!」


「そうか。じゃあ、強くなるために、たくさん食べないとね。」


「ありがとうデス!!」


「ということで、マンドレイクにトレント。我が食堂へようこそ!! 改めて歓迎するよ。改めてみんなに言うけど、命を大事にしてね。私達が食堂にいるときは問題なく守れるけど、いないときは遠慮なく食堂の中に入って避難するようにね。」


「「「「「ハイデス!!」」」」」


 この後、マーブル達を紹介し、マーブル達にも自己紹介をしてもらった。うん、仲良くやっていけそうで何よりだね。


 それぞれ自己紹介が終わった後、マンドラゴラ達が私達に敬礼すると、マーブル達も私に敬礼をしてきたので、私がみんなに敬礼をして応える。ってか、これってここでの様式美になりそうだな、、、。しかも、私が下ろさないと、みんなも下ろしてくれそうもないし、、、。


 敬礼が済むと、マンドラゴラ達はテーブルを用意してきた。一応、外の場所でも食堂用のテーブルはあるんだけどね。流石にドリアードやトレントが用意したテーブルである。私達が食堂やここで食べるテーブルよりも出来が良い。それほど敷地には木が生えていないから、暇を見て食堂のテーブル等の改良をお願いしようかな。


 朝食だけど、急遽2人分増えたので、また追加で作る心の準備もしておいたのだけど、それは杞憂に終わった。というのも、マンドラゴラ達3人は明日をも知れぬ身の状態でこちらに避難してきたから、かなりの空腹状態だったけど、マンドレイクとトレントは余裕のあるうちにここに来たようで、それほど食事を必要としていなかったようだ、というより、マンドラゴラ達もそうだけど、一緒に食事を楽しみたいから参加しているようで、実際にはここでの魔素と土の栄養分だけで十分らしい。なるほど、納得。食事はみんなで食べた方が美味しいからね。マーブル達もそっちの方がいいみたいだから、今後も一緒に食べることで決定。


 それにしても、こんな短期間で5体か、、、。正直どれだけ増えてくるのか楽しみでもあり、不安でもある。まぁ、多くなりすぎるのは勘弁して欲しいという気持ちの方が圧倒的に強いのだけど、、、。


 ちなみに、マンドレイクとマンドラゴラの違いだけど、分かりづらいのが正直な意見である。声に違いがあるので何とか区別はつけられるけど、話さずに見かけだけで判断しろ、と言われると正直自身がない。口調、みんな同じだしねぇ、、、。


 ドリアードとトレントはどうかというと、こちらは結構わかりやすい違いがある。というのも、ドリアードは肌質、というか木質? が柔らかい感じなんだけど、トレントの方は柔らかい感じはせずにゴツゴツとした感じだ。なるほど、戦闘が得意というだけのことはあるのだろうな。どちらにせよ、楽しくここで過ごしてくれれば別に良いかな、とも思っている。


 今日の朝食も大好評に終わり、植物族の5人は仕事をしに畑へと向かい、私達は片付けと食堂の準備をするべく食堂に戻り、のんびりと片付けをしているときに、ジェミニが私にお願いをしてきた。


「アイスさん、お願いしたいことがあるのですが、、、。」


「お願いしたいこと? 聞けるものであれば聞くけど、まずは聞いてみないことにはね。言ってごらん。」


「お願いというのはですね、あのニンニクソースを私達も作りたいです!」


「ニャア!!」


「ボクもくるくるまわしたいー!!」


 ああ、なるほど。ブレンダーを回してみたいのね。とはいえ、ハンドブレンダーでは小さすぎて厳しいんだよなぁ、、、。しかし、マーブルもジェミニもライムも上目遣いで目をウルウルさせながらこっちを見ている。くっ、あざとい、、、。でも、断れない、、、。さて、どうしようか、、、。


 あっ、そうか! 装置を大きくして大量に生産できるようにすればいいじゃん。そうすれば定番メニューにもできるし、麺を茹でるのと同時に、唐辛子を入れて温める

だけで済めば時短にもなるし、、、。よし、それでいこう!


「はい、3人の気持ちはわかりました。ということで、道具などを大きくして大量生産方式で作っていこうと思いますが、なにしろ道具がありませんので、これから作る必要がありますがよろしいかな?」


「ミャア!」「はいです!」「わーい!」


 可愛く元気のいい返事が聞けたので、早速作成開始といきますか、って、私は今回は作成には関わらないので、3人に頑張ってもらいましょうか。まぁ、実際あのハンドブレンダーを作ったのはジェミニだからなぁ、問題ないでしょ。


 必要なものということで、大きな鍋と巨大なブレンダーを作るように伝えると、3人はすぐに外に飛び出した。・・・許可する前提で話をしてきたのね、侮れねぇ。


 さて、私は3人がそっちの製作に勤しんでいる間に、今日の分の準備を済ませておくとしますかね。今回用意するのは定番メニューの3人の名前を冠したパスタに必要な肉の調理などこちらはこちらで非常に忙しい状態だったけど、食堂での仕事よりもマーブル達の笑顔の方が大切であるので致し方ない。


 久しぶりの単独作業で、日頃の準備がいかにマーブル達に助けられているかを改めて思い知りながら、仕込みを完了させていく。いや、基本マーブルの魔法やらジェミニの魔法やらライムのプレスやらあの猫(こ)達の手伝いありきで作っているから、何を今更感がハンパないけど、見た目の癒やしだけではないことは理解しているんだけどねぇ、、、。


 ということで、手伝いがないので、久しぶりに自分だけで準備をするやり方で進めているけど、ハイ、もの凄く面倒臭いです。いや、頑張りますけどね。


 そんなこんなで頑張ること2時間ちょい、何とか無事準備も完了して一息ついているところ。


「ミャア!」


「アイスさん、完成したです!」


「できたー!」


 3人が嬉しそうにそう言いながら厨房に来た。5体の植物組のメンバーも何かしら手伝ったようで、一緒に入ってきた。完成した道具はブレンダーはマーブルが重力魔法で浮かせるように、ニンニクソース用の鍋はジェミニが頭に置いてそれぞれ運んできた。というか、あれらって結構重量がありそうなんだけど、君達平気なのね。2人が持ってきてくれたので、それぞれ確認してみる。うん、いいできじゃないかな。


 マーブルもジェミニもこういったものはいくつも作っているので、耐久性に関しては全く心配していない。あとは使い勝手とかそういったものかな。植物組も手伝ったということで、恐らくテストみたいなことはしているだろうし。


 代表してジェミニが少し興奮気味に言ってきた。


「アイスさん! これは、混ぜるだけでなく、タマネギを細かくするのにも使えますよ!!」


 ブレンダーの刃の部分を確認すると、ヒュージレッドアントの刃が多数使われていたが、まだまだ在庫はあるんだよね。ちなみに説明によると、鋭い部分を回すようにすると、チョッパーになるようだ。で、鋭くない部分を回すとブレンダーになるらしい。まあ、これはハンドブレンダーでも同じ事が言えた。まぁ、ハンドブレンダーの方は、チョッパーとして使うことは考えてなかったけどね。とはいえ、あくまでニンニクソースを作るためのものであり、チョッパーはオマケらしい。そりゃ、そうだよね、みじん切りなどは、マーブルの風魔法でお釣りがくるから必要性は皆無だしね。


 そんな訳で、早速使用してみることに。ちなみに、鍋にしろブレンダーにしろ、熱による殺菌処理は完了しており、いつでも使用可能状態にしてあるとのこと。どれだけ楽しみにしていたんだろうか。まぁ、楽しそうに過ごしてくれるのは嬉しいし、それが一緒にいる目的だからね。


 最初にニンニクを用意する。残りのニンニクの3分の2を取り出す。残りの3分の1はニンニクオイルのペペロンチーノ用に取っておくやつである。水術で刃物を作ってニンニクを割る。割ったニンニクはそれぞれ潰す必要があるけど、潰すのはライムがやってくれた。ライムに任せればニンニク臭もついでに吸収してくれるので非常にありがたい。


 潰したニンニクを鍋に投入する。投入し終えたら、次はオリーブオイルを鍋に投入する。ニンニクをヒタヒタにする+@の量を入れる。もちろん、そのときに入れた量がどのくらいかを確認しながら入れることは忘れてはいけない。


 オリーブオイルを入れて、量も確認したら、鍋に点火する。ジェミニ作の鍋であるため、基本土鍋である。一部鉄鉱石も混ざっているみたいだけど。鉄鉱石だけを抽出できるみたいだけど、そうすると加工が出来ないらしい。加工するのは鍛冶の分野となり、土魔法では対処できないそうだ、残念。後日これと同じ大きさの鍋を作ってもらおうね。


 土鍋であるため、すぐには火が通らないので、最初は強めの火力である。鉄などの金属の鍋であれば、プツプツし出してから火を弱めればいいのだけど、土鍋でそれをしてしまうとニンニクが焦げるので、私は最初の泡が出始めてから火を弱めている。ずっと土鍋で調理しているようなものだからこその知識である。また、マーブルもその点はわかっているので、こちらが何も言わなくても勝手に火を弱めてくれる。


 また、それと同時に入れたオリーブオイルよりちょっとだけ多い水を用意して、鍋に入れて水術で加熱させる。沸騰する直前の温度というところがミソである。水なのでその辺は問題ない。水術は伊達じゃないのだよ。


 油がプツプツしてきたら、少しその状態にしておき、ニンニクが柔らかくなってきたら、ニンニクをほぐすようにして潰していく。流石にこの量だとフォークでは厳しいので、すりこぎのような棒で軽く潰していく感じでやっていく。このすりこぎのような棒はトレントが用意してくれたようだ。早速役に立っているではないか。もっと自信を持って欲しいね。


 良い感じに潰せたら、先程のお湯を投入する。お湯の投入が完了したら、お待ちかねブレンダーの出番である。マーブルが重力魔法で動かして鍋に設置する。凄ぇ、サイズぴったりじゃん!


 設置が完了したら、お待ちかね混ぜ混ぜタイムである。ブレンダーの最上部は平べったい蓋のようになっており、その上を走り回ることによってブレンダーが回る仕組みとなっている。単純ではあるけど、動力が動力だから、効率はハンパない。


 最初に乗ったのはジェミニだ。何でも一番活躍したから、という理由らしい。ジェミニが蓋の部分に乗ってから走り出すと、ブレンダーもグルグル回っている。ブレンダーの部分には刃が結構ギッシリ付いており、ハンドブレンダーとは異なり、本体を動かす必要がないみたいだ。


 ジェミニがある程度動かした後、ライムに交代し、ライムも嬉しそうにピョンピョン跳びはねながら動かしている。蓋は真っ平らではなく、小さく突起物があるらしく、それがあるため、ライムでも回すことができているようだ。


 ライムが終わると、次はマーブルだ。マーブルも嬉しそうに走っていた。3人がこんな感じで交代しつつブレンダーを回していると、しっかりとニンニクソースが出来上がっていた。


 折角出来上がったので、少し早い時間だけど、お昼にしましょうか。


 厳密にはハンドブレンダーで作った方がきめ細かい味に仕上がるのだけど、それほど差はなく仕上がっていた。マーブル達は言うまでもなく、植物組の5人も嬉しそうに食べていた光景を見て、提案を呑んで良かったとつくづく思った。

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