第29話 時は来ました、それだけです、ハイ。

前回のあらすじ:唐辛子が手に入りましたので、ようやく作れる算段が立ちました。



 植物系の魔物さん達のおかげで、無事唐辛子も手に入りましたので、作成しますよ、アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノを。折角なので作りますよ、2種類ともにね。


 さて、肝心の唐辛子ですが、10本を輪切りにして、種と外側のやつを分ける。辛さの方はどうかな、と種を1粒口の中に入れる。んー、流石の辛さである、けど耐えられないほどではないかな。某半島の南側の国で作っているタイプのやつだね。香りに関してはこちらの方が数段上である。うん、これなら今まででも最高のやつが作れると確信した。


 以前いた世界でも、ペペロンチーノに関しては何度も自分で作ったから多分大丈夫だと思う。悲しいかな、誰かに食べさせたことはなかったけどね。中学を卒業した頃に両親が亡くなってからはずっと一人で生活していたからねぇ、、、。まぁ、寂しいとかそういったことは正直全くなかったけど、今はマーブル達が一緒にいない生活は考えられないし、考えたくもない。


 とりあえずは、ニンニクオイルパスタの方から作りますかね。とはいえ、輪切りにした方のニンニクを投入するときに、唐辛子を一緒に入れるだけの差なんだけどね。

お、マーブル達だけでなく、マンドラゴラ達も興味津々に見ているよ。期待に応えられるといいんだけどね。


 よし、まずはオイルベースのやつ完成。人数分しっかり分けて、テーブルに置いていく。全員釘付けになっている。


「よし、とりあえず完成かな。マーブル達は先日作ったやつとの違いを味わってみてね。マンドラゴラ、アルラウネ、ドリアード達は初めてだろうけど、正直な感想をよろしく。」


 頂きますの挨拶を済ませてから、食べ始める。うん、これだよ、これ。やはり唐辛子が入ると油のくどさが無くなって食べやすさが上がる。いや、あの時はくどく感じなかったけど、唐辛子が入った完成品と比べてしまうとどうしてもそう感じてしまうのである。


「!! ミャア!!」


「アイスさん!! この前食べたやつも美味しかったですが、こんなにも違うものなんですね!?」


「あるじー!! これ、まえのやつよりおいしー!!」


「ファッ!? な、なんデスか!? 美味しすぎるデス!!」


「ここに来て正解だったデスー!!」


「早く作った甲斐があったデス-!!」


 おお、大好評だね、よかったよかった。マーブル達は嬉しそうに食べてくれていたのでとりあえず安心した。そして、食べながらいろいろな意見も聞けた。マーブル達動物組からはお肉があった方がいいという意見が、マンドラゴラ達植物組からは、もう少し辛いともっと美味しいだろうという意見があった。もちろん参考にさせてもらうけど、正直言うと、私はこのシンプルなタイプのやつが一番好きだった。一人暮らしをしていたときは、この方がお金も手間もかからないから、というのもあったけど、純粋にこれが一番好きというのもあったんだよね。


 最初のペペロンチーノを食べ終えたが、マーブル達は期待を込めた目でこちらを見ていた。言われなくても「次、はよ!」という催促ということはわかっているので、準備に取りかかりますか。


 さてと、材料ですが、同じです。全く同じです。違いといえば、ニンニクは倍の量を使います。でも、匂いはこちらの方が少ないというある意味優れものですよ。


 では、調理に入りますか。まず最初はパスタを茹でるお湯を準備する必要があるので、それ用に鍋を用意して水を投入する。今回は鍋を2つ用意する、というのも、通常のパスタとペペロンチーノのパスタでは塩分濃度が異なるので、別々に用意する必要がある。とはいえ、ペペロンチーノにベーコンなどを入れたりする場合には、通常の濃度で構わないと思うけど、今回は最低限のものしか入れていないので2種類用意する。前回とは違い、今回は食堂用の準備も兼ねているのでどうしても2種類必要となってしまうのだ。


 2種類の鍋に水を投入してから点火、することはなく、水術でお湯にしていく。この工程を飛ばせるのは非常に大きい。しかも、沸騰状態ではなく、沸騰寸前の状態を維持し続けられるのも素晴らしい。水術万歳である。通常用のは1%程に、ペペロンチーノ用のは1.5%にそれぞれなるように岩塩を投入。以前いた世界で使用していた塩は精製塩だったので、1.5%だと塩気が強すぎたけど、今使っているのは岩塩なので、これくらいが丁度いいのである。


 お湯の準備ができたら、次はニンニクオイルの作成である。フライパンを用意して、ニンニクを潰して皮を剥いてからフライパンに投入。その後はオリーブオイルをこのニンニク達がヒタヒタになるまで入れる。この時はまだフライパンに火が入っていない状態にしておく。それから点火してもらう。マーブル出番ですよ。火は中火くらいかな。


 油から気泡が出始めたら、弱火にしてもらいニンニクにじっくりと火を通していく。火の担当であるマーブルもこの辺は慣れてきているので火加減は完璧である。こんなに可愛くて賢いうちの猫(こ)達と一緒に生活できるのは最高である。


 ある程度時間が経つと、オリーブオイルからニンニクの食欲をそそる香りが出てき始めた。ニンニクの香りと旨味がオリーブオイルに入ってきている状態である。そろそろ唐辛子を投入する頃かな、ということで、唐辛子を投入する。


 唐辛子を入れてから、フォークを使ってニンニクを潰していく。某動画でも説明があったけど、実際には潰すのではなく、ニンニクをほぐす工程である。とはいえガッツリほぐしていく必要はなく、ある程度で十分である。


 ある程度ニンニクをほぐしたら、ペペロンチーノ用のお湯をフライパンに入れたオリーブオイルと同じか、それよりほんの少し多いくらい入れる。先程作ってもらったハンドブレンダーの登場となる。ハンドブレンダーの上部にマーブルの風魔法を当ててもらいブレンダーの刃を回転させながらニンニクを潰していく。これでニンニクを潰しながらも、油とお湯を混ぜていく、いわゆる乳化の作業を同時にこなすのだ。ある意味ここが一番重要なので、この作業を妥協してはいけない。


 この作業がしっかりとできると、白濁したニンニクスープが出来上がる。ここまでしっかりと乳化できていれば、火を止めても水と油が分離することはない。仮に分離してしまったら、それは作業が足りないか、お湯とオリーブオイルの比率が同量になっていないかの2択である。そうなったら、もう少し作業を続けて蒸発させて水分を減らすか、逆であればオリーブオイルを追加する必要がある。


 以前いた世界では何度も行った作業であるため、この作業での失敗はなかったので、ここで一旦火を止めて、パスタを茹でる作業に入る。マーブル達は手伝ってくれながらも、まだかまだか、と待ちきれない様子でこちらを見ていた。ここでのパスタは基本生麺であるので、茹で時間はそれほどかからないのであともう少し待ってね。


 最後にしっかりと混ぜる作業があるので、完全に火が通るまで茹でるのではなく、火が通る直前で麺を上げるのがコツである。乾麺のタイプであれば、茹で時間の2分前くらいに再び点火して、1分前くらいに麺を上げてからフライパンに投入して麺と絡ませれるのだけど、ここでは生麺を使用しているので、茹で上がる1分前に麺を上げて混ぜる作業は同じだけど、フライパンに点火するのは麺を投入する直前で問題ない。


 ということで、麺が茹で上がる1分前になったので、フライパンに点火してもらって麺のお湯を切ってからフライパンに投入した。しっかりと麺とニンニクスープを絡ませてから、それぞれの皿に盛って完成!!


 マーブル達は張り切って完成したペペロンチーノの皿をテーブルに運んでくれたのだけど、その移動速度がヤバかった、、、。まあ、それだけ楽しみにしててくれたということなんだろう、、、。


 改めて頂きますの挨拶をしてから食べ始める。うん、やはり以前いた世界で作ったものよりも数段いい味だった。料理スキルの恩恵もかなり大きいのもあるけど、それ以上に使っている素材の質が比べものにならないからなぁ、、、。そんなことを思いつつもみんなの反応が気になって見ていたのだけど、、、。あれ? 反応が薄い? おかしいなぁ、かなり美味いと思うんだけど、、、。ってよく見てみると、反応が薄いのではなく食没していたのだった。みんなで蟹料理を食べているときの感じだと言うと通じるかな。


 何か食べ終わるまでみんな無言だったのだけど、食べ終わるとマーブル達だけではなく、マンドラゴラもアルラウネもドリアードもみんな幸せそうな顔をしていた。


 これって、大成功なんだよ、ね、、、?


 結局、この日、マーブル達は仕事に手が付かず、食堂を私ほぼ1人で回すハメになりてんてこ舞いだったことも付け加えておく、、、。ちなみに、マーブル達はというと、モフモフ人形と化していたので、来客者達もそれなりに大満足だったようだ。

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