第28話 どうにか必要なものは揃いました、ハイ。
前回のあらすじ:植物の魔物ってスゲーと感じた。
新たな住人が増えてからしばらくはやや慌ただしい毎日が続いていたけど、それも落ち着いて、ここ数日はまったりと過ごしていた。ここ最近は、雨の日以外は朝食を外で摂るようになっていた、というのも、あの時振る舞った昼食が非常に好評で、ほぼ毎日せがまれるようになったからだ。
では、毎回3人分追加かといえばそうではなかった。マンドラゴラ達は1日1食で満足してくれる上、あの時はともかくとして、基本1人前の量でも十分だということがわかったからである。あの時は初めての食事で我を忘れたかのように食べまくったけど、基本的にはあんなには食べられないらしい。
あの時は初めて食べた喜びとテンションでどうにかなっていた状態だと言っていたな、、、。というか、喜びとテンションだけであんなに馬鹿食いってできるものなのか? と少し不思議に思った。マーブル達も同じように思ったそうだ。
とある日の朝、いつものようにテシツンで起こしてもらい、水術で顔などを洗ってサッパリとしてから今日の朝食やら、食堂での今日の特別メニューをどうしようか考えながら外に出ると、マンドラゴラとドリアードはいつもの感じであったが、アルラウネだけは少し興奮気味でこっちに向かって来ていた。
「ご主人、ご主人、ついに、ついに、アレが完成したデス!!」
いきなりのテンションと言葉に少し固まる私達。
「とりあえず、落ち着け。」
一旦アルラウネを落ち着かせて、改めて話を聞く。
「おっと、失礼したデス。ご主人、辛い実がついに完成したデス!」
「辛い実? 唐辛子か!? おお、ついに出来上がったの? ってか、できるの、早くないかい?」
「我らを甘く見ないで欲しいデス! その気になればあんなもの1日で作れますよ!! ・・・かなり疲れますデスが、、、。」
「いや、こんな短期間でも十分だから。無理だけはしちゃだめだよ。」
「ありがとうデス。早速案内するデス。」
何故か案内するアルラウネの足取りは軽かった。マーブルは辛いものということでほぼ興味なしといった感じ。ジェミニとライムは私が何か美味しいものを作ってくれると少し期待している感じかな。私はというと、ついにアレによって例のメニューが完成すると内心では喜びまくりであった。
「おおー、、、。」
案内された先にあったのは、80センチ位まで伸びており、見事に赤々とした実をつけた1本の植物であった。
「ニャァ、、、。」
「これは、綺麗な赤です、、、。」
「きれいー。」
その見事なまでの赤色は、ジェミニやライムもそうだけど、全く興味を持ってなかったマーブルも驚き、感心していた。
唐辛子といっても、種類や育つ場所によってその辛さは異なるが、私は別に辛いものが好きというわけでもないので、その点は気にならなかった。気にする部分は1つ、香り付けに適しているかどうかである。とはいえ、流石に唐辛子を生で食べるほどチャレンジャーではない。
「どうです? ご主人の希望通りのものができたと思うデスが。」
「うん、恐らくこれで間違いないと思うよ。ただ、辛さとか風味とかがどんな感じかまだわからないから何とも言えないけど、それは作ってみればわかるか。」
「軽く説明しますと、そこまで驚くほど辛くは作っておりませんが、風味は満足のいくものに仕上がったと思います!」
「うんうん、ありがとう。じゃあ、早速これを使わせてもらいましょうかね。ところで、この唐辛子はどのくらい採れるのかな?」
「そうですね、、、。質を重要視して作りましたので、5日毎でしょうか。これ1本で100位は採れますよ。もっと必要なら質を落とせば3倍までは増やせます。」
「いや、質は落とさないで。これから作るものには必要だけど、それ以外ではしばらくは使わないから、多くてもあと2、3本あれば十分かな。今はこの1本だけでも問題ないし。」
「わかりましたデス。しばらく様子を見て増やすか決めるデス。収穫については私に任せてもらえますデスか?」
「もちろん任せるよ。とりあえず、試しに作りたいものがあるから、そうだね、10個くらい今すぐ選んでもらえるかな?」
「はい! 任せてくださいデス!!」
そう言うと、アルラウネは唐辛子の方を向くと、唐辛子の赤い実が10個ほど勝手に切り取られてアルラウネの手に移動した。
「ご主人、どうぞ!!」
そう言って手渡された見事なまでの赤い唐辛子を受け取った。とりあえず乾燥させる必要があるけど、こっちには水術があるから問題ない。
早速水術で唐辛子の水分を抜くと、プックリしていた唐辛子が見事なまでにシワシワに変わる。周りのみんなは「おおー」と言いながら驚いていた。よし、これで材料については準備完了である。後はアレが必要だな。
「これでニンニクオイルパスタに足りないものが揃ったので完成品として提供できるようになりました。それで、最後に道具を作ってもらいたいのですが、、、。」
マーブル達に道具についての説明をした。作りたい道具というのはズバリ、ハンドブレンダーである。構造やら何やらを地面に絵を描いて説明する。マンドラゴラ達も興味を持ったのか、一緒に集まってこっちの説明を聞いている。
正直絵を描いて説明したけど、通じるかは不安であった。というのも、私は別段絵が上手いというわけではなく、以前いた世界では美術教科の成績はお世辞にも良いとはいえなかったからである。そんな不安を取り除いてくれたのがドリアードだった。
ドリアードは「こんな感じデスか?」と実際にそれを作ってみせたのだ。その出来映えは素晴らしく、1回だけ使用するならむしろそっちの方がいい、という位の出来映えだったけど、一応これからも使う、いや、恐らく頻繁につかうだろうから、こちらで作る必要があるため、あくまで木のモデルとして活用させてもらおう。
そんな訳で、私が図にして説明、ドリアードが木でそれを作ってそれを確認してからマーブル達が土魔法などで作り上げる、という感じで作業が進んでいき、ついに完成してしまった。本来なら魔導具で作成したい代物であったが、生憎魔導具を作ることができる人物はこの世界では出会っていないのでそこは諦める。
ちなみに動力であるが、一応2種類用意してある。1つはマーブルの風魔法によるものだ。今回はマーブルの風魔法に頼ることにした。もう1つは、風魔法で回すのではなく、マーブル達がブレンダーの上にのって実際に走って回す方法である。ブレンダーが思いの外安定していたので、その方法もアリだと思った。何より、マーブル達自身がそちらを希望していたけど、ペペロンチーノの時には少し厳しいかな。というのも実際にブレンダーを動かすのは私であるため、マーブル達を乗っけたまま動かしたりするのは精神衛生上よろしくないのだ。
また、基礎関係は土魔法で形作ったものを私が水術で水分をある程度抜いてから、マーブルの火魔法で焼き固めたものであるため、見た目がキラキラしており、しかもかなり頑丈にできており、下手な金属製よりも硬く作られているため、壊れる心配もほとんどない。
最重要のブレンダーの部分は、以前狩ったアリの刃を利用している。このアリの刃は鋭利な上に結構耐久力があり、しかもアリだからかなりの数を狩ったため、在庫も大量にある。これだけあれば、日替わりで交換しても困らない。まあ、そんな勿体ないことはしたくないから、もちろんやらないけどね。
これで、本当に必要な材料は全て揃ったことになる。さあ、では作りましょうかね、アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノを!!
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