第23話 たっぷり海の幸を堪能しました、ハイ。

前回のあらすじ:タコさんとイカさんを調理しました。



 タコさんのヌメリ取り、並びにイカさんの塩漬けもいい塩梅になってきたので、そろそろ最終仕上げ+食事の準備だ。


「では、皆さん、海の水でかき混ぜたタコさんがどのようになっているのか確認しましょうか。」


 タコさんをいれた鍋を見ると、白いアワアワがしっかりと上部に浮かび上がっていた。とりあえずは大丈夫だろう。


「この白いアワアワがヌメリやばっちい部分となります。これだけ取れれば大丈夫でしょう。」


「アイスさんや、このタコはもう食べられるのかぇ?」


「はい、食べられますよ。ただ、タコさんに限っては、生で食べるよりも軽く塩ゆでにしてから食べた方が美味いと個人的には思います。折角ですので、食べ比べてみましょうか。」


 白いアワアワを取りだして海に投棄する。この程度なら「環境が!」とか五月蠅い人達に対しても大丈夫だし、この世界でそこまで気にする人などいない。その前に別に化学薬品とか自然とは無関係なものを投棄しているわけじゃないから問題ない。


 ヌメリが取れた白い綺麗な状態のタコさんを取りだして、食べやすいサイズにカットしてもらい、半分は別の鍋に投入して火をかける。残りの半分を自分たち含めて村民達に配った。


「ほう、意外といけるのぅ。」


「まさか、あの魔物が食べられるものだったとは、、、。」


 なかなか良い感じの反応だ。私も食べてみるが、以前いた世界で食べたタコさんよりも甘みがあった。歯ごたえは同じくらいかな、いや、これ以上歯ごたえがあると厳しいか。マーブル達も味と食感を楽しんでいたようだ。・・・ライムについては触れないで上げて下さい。味は気に入ってくれていると思うけどね。


「生での味が今の感じになります。では、半分は茹でますので、こちらが気に入ったら茹でてしまいましょう。生の方が好む方もいるでしょうから、そこら辺はみなさんで決めて下さいね。では、茹でている間にイカさんの加工をしていきましょうか。」


 次は別の鍋にいれてある海水に漬けてあるイカさんを取り出す。


「このイカさんの調理は簡単です。ただ干せば良いのです。干すのはトメさんが得意ですよね?」


「そうじゃな。ということは、昆布やワカメと同じような感じで干せばいいのかぇ?」


「そうです。ただ、干す期間がどのくらいかは何ともいえませんけどね。」


「構わんよ。昆布やワカメにしても干す期間が違うんじゃからの。」


「なるほど、その辺りは私はわからないので、そこはお任せしますね。では、続けますと、このイカさんはこんな感じで並べて干すだけです。」


 そう言って水術を繰り出して、イカさんの水分を減らしていく。白くプリップリだったイカさんが、薄い茶色まで変色していった。


「とりあえずこんな感じですかね。さて、お味の方は、と。・・・うん、良い感じですね。」


 味見をしてみると、こちらも非常に美味かった。良い感じでできたので、他のみんなにも配る。


「これは、私の故郷ではスルメという名の食べ物だったのですが、こちらでは皆さんの気に入った名前を付けて構わないと思います。で、見た目の通り堅いので、しっかりと噛んでくださいね。噛めば噛むほど味が出るタイプなので。これは食事というよりも酒のお伴といった方が良い感じですがね。」


 スルメを受け取った村民は言われた通りにしっかりと噛んで味わっている。マーブル達には私がスルメを持ってそれを噛んでいる感じだ。・・・ライムには手渡ししてあるから大丈夫ですよ。何かスルメが中で溶けている感じなんですがね、、、。


「・・・なるほど。最初に噛んだときは味がしねぇと思ったけど、噛んでいるうちに味が広がってくるな。こりゃ美味いな。」


「確かに美味い。アイスさんが言った、酒のお伴ってのもその通りだな。」


「アイスさん、本当にあれって、海の水にしばらくつけてから干すだけかい?」


「そうですよ。あんな感じの色になるまで干してくれれば完成ですから、漬け込む時間とかはいろいろ試してみるといいかもしれませんね。」


「そういえば、アイスさん、タコもそうだけど、特にイカについては他にも沢山あるって言ってたよな? 非常に気になるんだが。」


「先程言ったとおり、まだあるんですが、残念ながら材料が揃っておりませんので、後の楽しみということでそこは一つ。」


「そうだな。アイスさんはここの所属の冒険者だもんな。材料が揃えばいつでも食べられるモンが増えるってことだよな?」


「まあ、一部は食堂でも出したいので、全てお教えはできませんがね。その前に皆さんがいろいろ考えて出してみましょうか。漁が再会できれば、この村もすぐに発展すると思いますし、人が集まってくれば、知恵も多く沸いてくるでしょう。」


「確かにな。」


「では、一通り揃ったので、皆さん食べましょう!!」


「「「「おおー!!」」」」


 村民のみんなは、すぐさま食べ始めたけど、私達は頂きますの挨拶をしてから食べ始める。もちろんマーブル達も同じように頂きますの挨拶をしてからだ。


「では、食材達に感謝して、頂きます。」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」


「?? アイスさん? その言葉は一体?」


「ああ、これですか。魔物であれ、植物であれ、命を頂いていることに変わりはないので、感謝の意を捧げてから食べているんですよ。」


「・・・なるほど。感謝の気持ちは確かに大切だな。俺らも見習うとするか。」


 そう言うと、村民のみんなも改めて頂きますの声を出してから食事を再開した。


 ここにあるのは、ほとんどが刺身であるが、村民達はほとんど食べたことのない

その味に舌鼓をうった。もちろん私も久しぶりの海産物に大満足である。下手すると以前いた世界よりも美味いものを食べている気がする。特にイカの刺身は絶品だった。この舌に絡みつきながらも、甘い味わいが広がってくる感覚がたまらない。これからはこの海産物が定期的に手に入れられるのは非常に有り難い。


「アイスさん! カニさんはどうするですか!?」


 ジェミニがカニさんについて言ってきた。ゴメン、正直忘れてたよ、、、。イカさんとタコさんが美味しすぎるのがいけない。よし、では待望のカニさんを料理しますか。


「それでは、これから私はカニさんを調理しますので、皆さんはそのまま食べてて下さい。調理法は海の水で煮たり、焼いたりするだけなので、別に見なくても問題ないですからね。」


 そう言って、空いている鍋に水を投入。もちろん、村のみんなにはそのまま食べてもらっているから、準備するのは私の水術である。水術で海水を引き上げてそのまま鍋に移動させる。準備完了。火についてはマーブルにお願いした。ハサミは2つしかないから、これは塩ゆでと焼きでいこう。のこりの足は、2本ずつ、生、茹で、焼きとしましょうか。ということで、海水も沸騰してきたところで、鍋にハサミと足をそれぞれ投入。後は茹で上がるのを待つだけだね。


 次は、足を焼くにせよ、生で刺身で頂くにせよ、あの硬い足を割る必要があるけど、凍らせて物理でやりますかね。ということで、上半分をバッチリ凍らせて、凍ったら粉砕するだけの簡単なお仕事です。


 足2本は、これも用意してもらった鉄板の上に置いて焼き始める。火が通ってくると、真っ黒だった殻が赤くなってきた。やはりこの世界のカニさんも同じなんだなと思いつつ、いい焼きガニの匂いも漂ってきた。村のみんなも、その匂いに釣られてタコさんとイカさんを食べるのをやめてこっちを見ていた。


「あの真っ黒なヘルクラブが赤くなってる!?」


「それよりも、あの匂いじゃ! 美味そうな匂いを出しておるわい。」


「ミャア!!」「良い匂いです!!」「はやくたべたいー!」


 マーブル達も匂いに惹かれてきている。ゴメンね、もう少し待ってね。


 焼いている間に、甲羅の部分を取りだして一気に解凍した。よし、冷凍締めは上手くいったな。重量軽減のスキルを使って、ふんどしを外して中身を確認。うん、良い感じだ。開いてから甲羅と中身を引きはがす。よし、上手くいった。剥がしたら甲羅に戻してエラを取り出す。あとは、ふんどしや他の部分にある蟹味噌を取りだして甲羅に入れる。海から海水をある程度汲んで、甲羅に投入。味噌と身を混ぜる。これを別の鉄板の上に置いて、火を着けたら準備完了だ。


「よし、これで全ての料理の準備が完了しました。完成したものから順次頂くとしましょう。まずは刺身ですね。これがカニさんの味です。もちろん、煮たのも焼いたのも絶品ですが、この生の状態でも絶品ですよ。醤油を付けて食べると尚美味いですよ。」


 生の状態の身を取りだして、切り分けてからみんなに配る。茹でたり焼いたりしたものだと、ほぐした方がいいけど、生の状態だと正直ほぐしづらいので切ることにしたのだ。


「うわ、なんだこりゃ!? こんなに美味いのか!?」


「ミャア!!」「アイスさん! これ、美味しいです!!」「おいしー!!」


 マーブル達も大喜びだ。だが、しかし、カニさんが本当に美味しくなるのはこれからなのだよ、フッフッフッ、、、。


 次に完成したのは茹でガニだ。道具で取りだしてから、手に水術を施してそのまま触れる状態になってから、関節をもいで、身を取り出す。もちろん、ハサミの部分と足の部分は別にしてある。身を取りだし終わったら、みんなに出した。


「「「!!!」」」


 どうだ、余りの美味さに声も出ないだろう、、、。しかし、まだだ、まだ終わらんよ!! そう、蟹味噌が残っているのだ! それを食べずして、カニさんを完全に制覇したとは言えないのだ。さて、これでトドメを刺しますか、ククッ、、、。っとその前に言っておかないとな。


「あ、言い忘れていましたけど、あのカニさんを茹でた汁は美味いので取っておいて下さいね。昆布だしとも非常に相性がいいので、さらに美味しくなること請け合いですよ。」


 私がそう言うと、「おおーー」という声が聞こえた。


 さて、そうこうしているうちに、ようやくほぼメインともいえる蟹の甲羅焼きの完成です。さあ、その味に酔いしれるがいい!! とか思いながら、もう一度かき混ぜて皿によそってみんなに出した。


 食べ始めたみんな。マーブル達はあまりの美味しさに跳びはねたりしていた。うんうん美味いだろう、美味いだろう。とか思いつつ、村のみんながどんなリアクションをするのか期待していたら、想像していたのとは全く違っていた。何故か泣き出してしまったのだ。流石にこの反応は想像できなかったので驚いた。


「あ、あれ? みなさん!? 大丈夫ですか!?」


「・・・アイスさん。あれだけの化け物を倒してもらった上に、こんなに美味いものを俺たちに作ってくれた、、、。この感謝にどう応えたらいいのか、俺には思い浮かばない、、、。」


「ああ、ワシも少しだけとはいえ、昆布やらワカメやらを渡したけど、あの程度では渡したうちに入らなくなっておる、、、。」


「いやいや、まさか、そんな反応だとは思いませんでしたよ、、、。みなさんの驚く顔が見たくて作ったのですが、まさか、ここまで喜んでいただけるとは、、、。正直こちらも作った甲斐がありましたよ。」


「いや、このままだと俺らの気が済まないんだよ。アイスさん、俺らでできることがあるのなら、何でも言ってくれ。もしなんだったら、アイスさん達専用の船も作るぞ。」


 困ったな、、、。ついでのお裾分けのつもりが、何やら面倒くさいことに、、、。ここまで面倒くさいと、この場から離れた方が良さそうだけど、そうなると折角の海産物が、、、。多分、この漁場ってクラーケンのせいで寂れてしまっているけど、もの凄いポテンシャルを秘めているんだよな。イカさんにしろタコさんにしろ、今までにないくらい美味かったし、どうしようかな、、、。

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