第21話 海の幸さらに追加です、ハイ。

前回のあらすじ:タコが大量に手に入りました!



 さて、クラーケンという名のタコさんを4体手に入れることができたわけだけど、まだ探知には4体ほど残っている。恐らくクラーケンと一言に言っても、種類は数種類あり、泳ぐ速度や性格などで異なるため、先に4体、後に4体といった形で分かれていたのだろう。先に来た4体がタコさんだとすると、残りの4体は、、、。


 残りの4体が近づいてきたので、鑑定出来る距離まで近づいてきたら鑑定してみることにした。アマさん、頼むよ、、、。


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【クラーケン(いかくん)】

【クラーケン(するめくん)】

【クラーケン(するめちゃん)】

【クラーケン(するめさん)】

 いずれも食用可。ワシはまだ食べたことないからよくわからんのじゃが、トリトンが好んでいるようじゃから、恐らくかなり美味いのじゃろう。とはいえ、お主は調理前提じゃろ? 奴も非常に楽しみにしておるそうじゃぞい。無論、ワシもな。

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 ・・・取り敢えず食べられる、しかも美味い、ということはわかった。しかし、陛下、アンタの好物かよ、、、。---陛下というのは海神トリトンで、アイスのいる世界(詳しくは「アイスさんの転生記~貴族になってしまった」をご参照ください。宣伝乙と言われるかもしれないけど、これ以上の説明が面倒なので、そこは察してくれると助かります。)では、アイスのいるトリトン帝国の皇帝陛下をしており、アイスの作るメシをよくたかる困った皇帝のことである。あちらでは海のない場所での君臨状態なので、神としての力は皆無ではあるが、一応神だけに戦闘能力だけは一人で一国に相当するらしい。---


 しかし、「するめくん」とかが固有名というのは何というか、、、。恐らく種類を表しているのだろう。そう考えると、いかくんは真イカのことだろうか、で、するめくん達はスルメイカ、と。しかし、真イカとスルメイカって同じじゃないの? まあいい。要は美味しければ別に構わないのだ。タコさんも楽しみではあるが、イカさんはもっと楽しみである。タコさんは茹でたり、それを使って粉モノにするくらいしか思い浮かばないけど、イカさんは用途がかなり多いので、その分期待も大なのだ。まあ、現時点では使える材料が少ないので作れる種類は限られているが、、、。


「さて、みなさん、次に来る4体も食べられる種類です。しかも、あのトリトン陛下も好物だそうなので、味は期待できそうですよ。」


 それを聞いたマーブル達は非常に喜んでいた。その姿を見た私も非常に喜んでいた。マーブル達は落ち着くと早く作戦を寄越せとばかりにこちらを見ていた。


「では、作戦ですが、恐らくタコさんのときと同じように触手を使ってこちらを攻撃すると思われますので、凍らせて私がこちらに放り投げるのは同じですが、トドメの差し方が異なります、というか、イカさんは使いどころが多いので、現段階では切断しないようにしたいのです。」


 マーブル達は黙って頷く。


「ということで、こっちに投げたイカさんの両目の間に打撃系の一撃を与えてください。もちろん潰してはいけません。まずは私が手本を見せますので、それを参考にしてくださいね。」


「ミャア!!」「キュウ!!」「ピー!!」


 いつものビシッと決まりながらも可愛らしい敬礼で応えたので、準備完了である。


 こちらが待ち受けていると、先程タコさんたちがやられたことを理解していないのか、一斉に触手を振りかざしてきたので、順番に凍らせては掴んで上空に放り投げ、順番に落ちてくるようにした。最初の1体目が落ちてきたが、イカさんは自分がどうなったのか把握出来ておらず困惑していたので丁度よかった。とはいえ、こちらとしても加減がわからなかったので、水術で拳を水で纏ってある程度打撃力を緩和させた状態で目と目の間の部分に拳を打ち下ろすと、イカさんの動きが止まる。一丁上がりだ。早速空間収納にしまいこんだ。


「と、まあ、こんな感じです。正直加減がわからないので、潰さない程度に強めにお願いするくらいしかできないけど、大丈夫?」


 マーブル達は黙って敬礼を返した。マーブル達の目は、それぞれのイカさん達に向いていたからだ。


 次の1杯が落ちると、マーブルが向かって行った。マーブルは右前足に黒いものを纏って猫パンチを喰らわす。恐らく黒いものは重力魔法なんだろう。その次の1杯にはジェミニが後ろ足のキックを喰らわせ、最後の1杯はライムが体を硬質化させて一撃を喰らわせていた。いずれも見事に一撃で仕留めた。イカ締めの完了だ。


「みんな、お見事な一撃だったね。これで任務完了だよ。」


「ミャア!!」「キュウ!!」「ピー!!」


 マーブル達はそれぞれ仕留めたイカ達をこちらに運んできたので、それらを空間収納へとしまい、お礼にモフモフやおにぎりの刑で労った。


 ひとしきりモフプヨを堪能してから、港へと戻り、水術を解いて元の状態に戻してから、ギャラリーのいる所へと戻った。


「タゴサクさん、先程言ったとおり、クラーケン達は倒してきました。」


「あ、ああ、、、。」


 タゴサクさんを含め、ギャラリーの面々は言葉がでない状況だった。しばらくして我を取り戻したのか、しきりに感謝してくれた。こちらとしてはこんなに沢山の海の幸を無料で手に入れることができたことに感謝したい。


 これで漁へとでることができると喜びの声にあふれており、よかったよかったと思っていたときに、マーブルが「シャーッ!」と軽い威嚇の声を出した。これは敵襲の合図である。岸の方を見ると、1体の巨大な生物がそこにはいた。


「な、何でこいつが、、、。」


「ああ、折角漁に出られると思ったのに、こいつが現れてしまっては、、、。」


 その巨大な生物は、左右に4本ずつの足を持ち、一番前の足は大きなハサミを持つ生物であった。領民達は恐怖の表情を浮かべていた。色は全身真っ黒な姿をしていたが、私にはその姿には見覚えがあった。念のため鑑定をかけてみると、予想通りだった。


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【ヘルクラブ(かにさん)】・・・アイスよ、お主、ある意味で強運じゃのう。こやつが現れると、気が済むまで暴れ回らせて勝手に去って行くのを見守るしかない位凶暴な魔物じゃ。こやつの強みは何と言ってもその防御力じゃ。今までこれを倒した者は陸上ではおらんくらい強いので有名じゃぞ。申し訳ないが、ワシは食べたことがないのでよくわからん。もし食えるのであれば、わかっておるの? チラッ。

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 こいつも固有名持ちかよ、、、。しかも、何だよ、「チラッ」とか、いい加減にしろよ、ジジイ、、、。しかし、まさか、ここで出会えるとは思わなかったな、、、。


 鑑定した後の私の表情は震えていたが、村民達とは違う震え方であった。


「カ、カ、カニだぁーーーーーーーーーっ!!!」


「ミャッ!?」「ア、アイスさん?」「あるじー?」


 マーブル達が驚いたのも無理はない。私は転生して、今までここまで大声で叫んだことがなかったのだから。また、その私の叫びを聞いて、村民達も驚いてこちらを見ていた。マーブル達が話しかけてくれて私も我を取り戻して少し恥ずかしくなった。ヘルクラブというカニさんも、こちらの声に反応した。どうやら、こっちを敵と認定してくれたようだ。


「マーブル、ジェミニ、ライム、それに村民の皆さん。意外と思われるかもしれませんが、あれ、もの凄く美味いんですよ。私が倒しても大丈夫ですか?」


「え? アイスさん、あれ倒せるのか!?」


「あれは、海の悪魔、ヘルクラブだぞ!? クラーケンですら、あれには近づかない程なのだぞ!?」


「大丈夫ですよ。まあ、見ていてください。じゃあ、マーブル、ジェミニ、ライム。カニさんを倒しに行きましょうか。」


「ミャア!!」「キュウ!!」「ピー!!」


 美味しいと聞いて、マーブル達は俄然やる気を見せた。私はそのままカニさんの方へと歩いて向かう。それに追従するようにマーブル達も後ろを歩いた。


「ふむ、そうですね。あのカニさんがどれだけ硬いのか、マーブル、ジェミニ、軽く魔法を使ってあのカニさんにぶつけてみてください。」


 マーブルとジェミニは元気よく返事をして、それぞれ風魔法を土魔法を使ってカニさんにぶつける。カニさんは効かないとわかっているのか避けすらもしなかった。予想通り全く通じなかった。


「なるほど、本気でないとはいえ、マーブルとジェミニの魔法ですら全く効いてないみたいだね。」


「でもアイスさん、ワタシはともかく、マーブル殿であれば、あの程度なら倒せると思うですが。」


「うん、マーブルが本気でいけば、あの程度なら切り裂けそうだよね。でもね、切り裂くと勿体ないんだ。」


「なるほど、しっかりと美味しく頂くには、真っ二つにしてはいけない、とアイスさんは思うですね?」


「そういうこと。ということで、倒し方ですが、実は付け根の部分は他の部分ほど硬くはないので、そこを切断して足を切り裂いて無力化します。その後はこちらの好き勝手にできますので、本体というか、頭部は凍らせて終了です。ライムは万が一の為に村民を護る任務です。」


 マーブル達は元気よく敬礼で応えた。その間にもカニさんは迫ってきていたが、こちらはいつでも戦闘準備ができていたので問題なかった。私は水術で氷の輪っかを作り、いい距離になったので、カニめがけて放った。


 カニからすると、まさかこんな距離で飛び道具を放ってくるとは思っていなかったらしく、防御が遅れたため、こちらの放った輪っかは狙い通りにハサミのある部分の付け根に命中して、両側のハサミのある足は切り離された。


 そこに追い打ちをかけるかのように、マーブルの風魔法とジェミニの刃による攻撃がカニさんを襲った。先程の攻撃とは違い、自慢の甲羅を破壊されそうな威力の攻撃が魔法だけでなく直接攻撃でも来たので対応しきれず、残りの足の部分も切断されてしまい、そのまま頭部だけが残された状態となってしまった。


 頭部だけになったカニさんはもちろん美味しく頂くために水術で氷付けにして戦闘完了。切断した足の部分は空間収納へとしまったけど、頭部はしばらくしまわずにこちらに運ぶことにした。というのも、長時間凍らせるのはカニ締めのやり方の1つでもあるから。空間収納にしまうと時間が停止してしまうのでカニ締めができない。どうせ、あの部分は茹でないと私は食べられないので、しっかりと凍らせる。


「よし、これから海の幸を堪能するぞ-!!」


「ミャア!!」


「楽しみです!!」


「たべるぞー!!」


 どう調理しようか、ワクワクしながらこれからを考えている私、どんな料理が出てくるのか楽しみなマーブル達、とそれぞれ嬉しそうにしていたのとは逆に、見た目では普通のおっさんが、可愛いペットを引き連れているようにしか見えない者達であるにもかかわらず、町を壊滅してしまう程ヤバい魔物達をそこらの弱い魔物を倒すかのようにサクッと倒していることが信じられずに唖然としている村民達の姿があった。

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