第20話 粉物の定番の材料が手に入りそうです、ハイ。
前回のあらすじ:念願の海藻類が手に入ったぞ-!
私達がクラーケンを討伐するということを了承してくれた後、ゴンタさんに案内されたのは、一軒の建物であった。あ、この看板見覚えがあるな。確か冒険者ギルドのはず。クルンの街では登録すら拒否されたけど、ここでは大丈夫なのか?
「おう! タゴサク、入るぜ!」
「こりゃ珍しい、ゴンタがここに来るなんてな。」
「この人達が、クラーケンを倒したいそうだから連れてきたぜ。」
「おいおい、馬鹿言っちゃいけねぇよ。俺ら海の男達ですら手も足も出ねぇのに、こんなおっさんと弱っちそうなペットでどうにかできるもんじゃねぇんだ。」
やはり、断られそうか。まあ仕方ないかな。ある意味いつものことだしね。と思っていたら、ゴンタさんが話を続けた。
「まあ、気持ちはわからねぇでもねぇ。正直俺も同じだったからな。けどよ、こんなナリをしているが、強さは見かけによらねぇと思うぜ。アイスさんよ、タゴサクにアレを食わせてやってくれないか?」
「・・・アレ? ああ、なるほど。」
そう言って、空間収納から調理済みワイバーンの肉をタゴサクさんに渡す。少し余ったからしまっておいて正解だったかな。
「お? 肉か? しばらくぶりだな、、、。有り難く頂くとするか。」
「おう、まずは食ってみな、もの凄く美味ぇから!」
「・・・!! な、何だこれ!? こんな肉食ったことないぞ!?」
「驚いたろ? その肉はな、ワイバーンの肉だそうだ。」
「ワ、ワイバーンだと!? ワイバーンってあのワイバーンか!?」
「そうだ、あのワイバーンだ。信じられねぇかもしれねぇけど、本当だと思うぜ。」
「・・・ううむ。その話が本当だとすると、確かに倒してもらえるかもしれねぇな。ところで、アイスさんと言ったか? 冒険者ランクはどのくらいだ?」
「いえ、ギルドに登録してないので、そんなのはないですね。先日クルンの街で登録しようとしたら、受付の女の人に断られましたし。」
「なんだと!? ・・・まぁ、そんな格好をしていたら仕方ないな。俺も未だ半信半疑だしな。ところで、ワイバーンはお前さん達が倒したのか?」
「そういえば、証拠みたいなものは出してませんでしたよね? 折角ですからご覧になりますか?」
そう言って、空間収納からワイバーンを丸々一体取り出す。狭い建物がワイバーンを出したことにより更に狭くなった。
「!! 間違いない、ワイバーンだ。しかもこりゃ、強化種じゃねぇか、、、。とんでもねぇな。って、そういえば、お前さん空間収納持ちか!?」
「大容量ではないですが、確かに空間収納はありますよ。」
「・・・ワイバーンを丸々一体収納できるんだから、十分大容量だぞ、、、。その強化種ということは、さっきここを通ったワイバーンだな!?」
「そうですね。手応えなかったですが、本当に強化種でしたか?」
「ああ、間違いなく強化種だな。とりあえず、あんた達が強いのはわかった。ところで、ギルド登録していないんだったら、よかったらここで登録してはくれないか? 見ての通りの寒村だからな、登録者が少ないんだよ、、、。」
「メリットとかあります?」
「メリットかぁ、、、。正直言うと、身分証とか支払いの自動決済くらいなものかなぁ。しかも自動決済はここじゃぁ使えねぇ。」
「いや、それだけで十分ですよ。先程譲ってもらった海藻類も非常に上質なものでしたし、本当にこの村が気に入りましたので。」
「そうか! 本当に助かる!!」
「ただ、登録はしますけど、冒険者としては活動する気はないので、依頼も最低限しかこなす気はないので。」
「それでも構わんよ。ここの冒険者ギルドは、冒険者ギルドというよりも、漁師ギルドと言っても過言じゃない。依頼も漁に関することが主だからな。もし、クラーケンを倒してくれたら、あいつらも喜ぶだろうからな。今は出稼ぎに行っているからこの村にはおらんが。」
「漁関係がギルドの主な依頼ですか? 是非登録させてください!!」
ということで、ハンバーク所属の冒険者となった。ここも一応冒険者ギルドなのでギルドランクはFからのスタートだそうだ。ランクはFからSまである、とかその他諸々の説明を受けた。
「ほれ、こいつがギルドカードだ。お前さんはテイマーで登録させてもらった。このカードがあれば、他の都市でも身分証として扱われるから無くすなよ。再発行は手数料が取られるからな! って紹介が遅れたな。俺はタゴサク。ハンバークの冒険者ギルド長をしている。まあ、ギルド長ではあるが、ギルド職員は俺しかいねぇけどな、ハッハッハッ!!」
「ところで、ここでの依頼はどうなってますか?」
「依頼か、、、。ここは見ての通りの寒村だからな。ここで獲れた海の幸を納入してくれればいい。というか、今は残念ながらそれしかないんだ。しかも、今はほぼ海藻類に限定されているからな。基本卸してくれた分はある程度買い取るが、獲り過ぎには注意してくれ。」
「承知しました。でも、今はクラーケンの討伐ですよね?」
「おっと、そうだったな、、、。ただ、先に言っておくと、クラーケンに対しての討伐依頼は出せてないから、スマンがクラーケンを倒しても報酬は出せない。その代わりに倒したクラーケンの素材は買い取るぜ! 現金払いは無理だけどな!!」
「了解です。では早速倒しに行きますかね。ところで、どうすればクラーケンは現れます? 出てくれないと倒しようがないので、、、。」
「クラーケンは、少し沖に出ると出てくるんだが、船を出そうにも誰も出してはくれねぇんだ。」
「なるほど。少し沖に出ると現れてくれる、と。分かりました。それならどうにでもなるので、船は必要ないですよ。あ、もし良かったら見学します? 証拠にもなるでしょうし。もちろん、沖で戦いますので皆さんに迷惑はかけないので。」
「そうだな。強化種のワイバーンを倒すほどだ。お言葉に甘えるとするか。それに暇だしな。」
「タゴサクが見学か。俺も見学させてもらってもいいか?」
「ええ、どうぞ。何なら今手の空いている方達も呼んで観戦してくれて構いませんよ。是非マーブル達の可愛さと強さをその目に焼き付けてください!!」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
マーブル達が一斉に右手を挙げる。
「ほう、アイスさんの従魔は言葉がわかるんだな。見た目とは異なり、かなりのランクのようだ。ただのペットだと思っていたが。」
「私の大事な大事な癒やし要員です。戦闘はあくまでオマケでしかないですね。」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
はぁ、本当に可愛らしくて癒やされる。ってクラーケンを倒しに行かないとね。
「では、これから倒してきますので、皆さんは見学の準備をしておいてください。あ、聞き忘れましたが、クラーケンって何体いますかね?」
タゴサクさんの話によると、現在確認しているのは5体だそう。さて、ここでのクラーケンってイカなのかタコなのか、、、。どちらにしても食べられると嬉しいのだけど。
タゴサクさんに案内されて港に来た。うん、小さい。この大きさでは精々、金持ちが個人で所有しているボートがいいところかな。降り口はどこかな、と、あった。これなら倒して簡単に戻ってこれるかな。よし、では行くとしますかね。
「では、これより沖へと向かいますので、タゴサクさんは、みんなとマーブル達の強さと可愛さをしっかりと見ておいてくださいね。」
「お、おい、アイスさんよ、船とか無しで沖へ行けるのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
私が海に水術を施す。もちろん足場の確保だから凍らせるんだけどね。流石に生み全体は凍らせるのは厳しいけど、私達の足場+戦闘範囲くらいは問題ないかな。できる限り広めに取りたいから、厚さは最大2メートルくらいで十分かな。久しぶりだからどこまでできるか多少の不安があったので、少し気合を入れると、結構な勢いで凍り始め、最終的には長さ300メートル、幅20メートルの範囲が凍った。うん、この程度なら戦闘に支障はきたさないね。
「マーブル、ジェミニ、ライム。滑ったりしない? 大丈夫?」
「ミャア!」「問題なしです! いつも通り戦えるです!」「ピー!」
マーブル達が元気よく右手を挙げたので、とりあえずは安心だ。その光景を見ていたタゴサクさんは唖然とする。
「な、な、、、。」
「じゃあ、行ってきますね。お土産楽しみにしてくださいね。」
「あ、ああ、、、。」
タゴサクは驚きのあまり、微妙な返事しか返せなかった。そんなことを全く気にすることなくアイス達は沖へと進んでいく。
少し進んでハッとした。そういえば、気配探知かけてなかった、、、。軽く気配探知をかけたが、流石は水術、軽くかけただけで500メートル位の範囲を確認できている感じだ。こっちは気合を入れなくてよかった、、、。ん? デカブツの気配があるね、それも8体か。お、向こうも気付いたようだけど、何か慌ててるな。まあ、いいか。あ、何かまとめてこっちに来てるね、いいねぇ、早速始めるとしますか!
「マーブル、ジェミニ、ライム。海の幸がこちらに近づいてきてます、各々戦闘準備を!」
3人は敬礼で応える。ひいき目に見なくても可愛い。
クラーケン達は数種類いるようで、それぞれ移動速度が異なる感じだ。最初に出てきたのはタコ? いやイカかな? こういうときは、鑑定するに限る。アマさん、よろ。
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【クラーケン(たこさん)】・・・ほう、こりゃ珍しい。名前持ちのクラーケンじゃな。これは足が8本あるタイプじゃな。その外見からは海の悪魔と呼ばれ、船乗り達に恐れられている存在じゃ。・・・そういえば、お前さんの以前いた国には、これを使った料理があったとか無かったとか。非常に気になるのう、、、。あ、言い忘れておったが、多分食用可じゃと思うぞい。というのも、この外見じゃ、誰も食べようとしておらんから、詳しいことはわからん。しかし、お前さんなら問題ないじゃろう。期待しておるぞい。
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・・・なるほど、定番のタイプね。って、固有名が「たこさん」って、そのまんまやん、、、。ってか、これ誰も食べてないのか!? たこ、非常に美味いのに。それは置いといて、こいつらはこの「たこさん」の他に3体か、、、。一応鑑定っと、ってちょっと待て!? 何だよこいつら!! どれも固有名持ちの癖に、名前が全部「たこさん」かよ!! しかもAとかBとかCになってるし!? 私が驚いていると、ジェミニが気になったのか話しかけてきた。
「・・・アイスさん?」
「おっと、ゴメンね。ちょっと驚いただけ。アマさんが言うには、一応食べられるけど、この世界では誰も食べたことがないから、味はわからないって。」
「ミャア!!」
「食べられるですか!?」
「たべるぞー!!」
マーブル達は食べられると聞いた瞬間に目の色が変わった。道の味に期待をしているんだろうけど、実は私も期待していた。希望としては、以前いた世界でも食べていたあのタコと同じ味であることを願うのみ。そんなことを考えていたら、たこさん軍団はこちらにかなり近づいており、ほぼ戦闘距離に入っている状態のようだった。
「では、今回の作戦を伝えます。恐らく得意の触手で仕掛けてくると思いますので、その触手を使って上に放り上げますので、マーブル隊員とジェミニ隊員はそれぞれ真っ二つにしてください。ライム隊員ですが、後で重要な任務がありますので、万が一に備えて私達の警護をお願いします。」
マーブル達がビシッと敬礼で応えた。結構な回数をこなしているため、敬礼もかなりサマになっているが、それでも可愛いことに変わりは無い。
様子見で1体が触手を4本振りかざしてきた。私達は難なく躱し、その4本を水術で凍らせる。
「丁度1体仕掛けてきたので、見本をお見せします。こうやって切断します。」
そう言って、たこさんAを持ち上げると、思ったより軽かったので、予想以上に高く上がってしまったけど問題ない。氷の輪っかを作り出して投げつけると、たこさんAは真っ二つになって終了。
「こんな感じですけどわかりました?」
「ミャア!」「わかったです!」「みんな、がんばれー!」
理解してくれたようだ。たこさん達は、1体では分が悪いと思ったのか、残り3体で一斉にこちらに襲いかかってきた。でも、相変わらず触手なんだよね、、、。こちらに出てきた触手を残さず凍らせて、それぞれマーブル、ジェミニの方へと投げ、最後の1体は真上に放り上げる。ポーターの重量軽減が思いっきり活きたやり方である。マーブルは風魔法で、ジェミニは自慢の刃で、私は氷の輪っかでそれぞれたこさん軍団を真っ二つにして終了。
その光景を見ていたのは、喜んで跳びはねていたライムと、クラーケンをあんなに簡単に真っ二つにしている、という信じられない光景に唖然としていたギャラリーという名の村民達であった。
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